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『なつぞら』考 「It's for us!これぞ朝ドラだ!」なプロポーズから結婚式まで ~8/12記ス

『なつぞら』。坂場のプロポーズから結婚式までの流れ、最高でした! 

「初監督映画が成功したら結婚してください」といった時点で「ああ、映画は失敗するんだな」と悟るくらいには、よく訓練された朝ドラクラスタの私ですが(笑)、実際に映画が失敗してすっかりショボくれた坂場(中川大志)に対して、喫茶店でヒロイン・なつがぶつける長ゼリフ。

戦災孤児という過去からくる「幸せになることへのおそれ」を告白しながらも、自分の尊厳を守る別れを選んだこと。本当に悲しくて、かっこよくて、すばらしくて、胸打たれた。

「あなたの言葉(=生き方)を好きになった。ありえないくらい好き。だけどあなたは違うのね。それなら一緒にはいたくない」

すごい。すごいセリフです。
ヒロインが大好きな相手に別れを告げるとき、安直なドラマならば
「あなたの幸せのために身を引きます」
な~んて自己犠牲に走ります。
視聴者は美談として消費します。

でも、なつは全然違って、坂場の逃げ口上にハッキリと怒りの表情をあらわしていたし、まっすぐに自分の愛情を伝えたうえで、
「私があなたを好きなのと同じくらい、あなたが私を好きじゃないなら、一緒にはなれない」
なのです。

次の回では落ち込むなつのもとに坂場がやってきて、なつの兄やおでん屋の女将の面前で熱烈な愛を告白するのですが、その告白を聞くなつの毅然とした表情が、またかっこいいのだ!
広瀬すずという女優の稀有さがわかる週だった。
 
奥原なつは特別な才能をもつわけではなく(まぁ顔は広瀬すずだが😅)、
ただただ努力して(もちろん多少は運が良くて)仕事をつかみ、キャリアアップしてきた女性で、
そういう普通の女性が、ありえないくらい大好きな相手によりかからない、自分を貶めない。
坂場という、理論家で、くそ面倒くさいほど弁舌巧みな男性に対して、まっすぐに自分の言葉で対峙する。

こういうときですよ、
「It's for us! これぞ、朝ドラだ!」
と思うのは。
 
その結果、
「男が会社を辞めたそばから結婚する2人をてらいなく祝福する会社の人々」
も良かったし、

「ええ~? それほとんどクビじゃんね?」
と口に出して驚きながらも「ま、それはそれ」と納得して祝福する十勝の人々も良かったし、

婚約者のことを

「この人は組合(労働組合)が大好きなんです」

と評するヒロインも良かったし(朝ドラ史に残る名ゼリフだと思うww)
夕見子が結婚することで、一世一代の「お嬢さんと結婚させてください!」がすっかり雪次郎の前座状態になっちゃう坂場も良かった。

地元の子と結婚し子をもうけ、着々と「十勝の気のいいおじさん」化してる天陽が、かつて、なつの姿を描きかけたキャンバスを塗りつぶしてその上から自画像を描き、後生大事にしてる「意外とじっとりしてる感」も良い。

なつを愛する十勝の人々に嫉妬せず、疎外感も感じず、むしろ、十勝の風に吹かれて映画の失敗の傷から立ち直っていく坂場もよい。

結婚式も楽しかった!!!
みんながそれぞれの思いをもって集まっていて、お互いにそれを察していたりいなかったり。
おめでたくて、ちょっと切なくて、それも含めて晴れやかだった。

そして今日。
結婚生活の初手から、慣れない手つきで家事にいそしむ坂場(かわいすぎる)、
旧姓のままで仕事を続けるなつ、
出産したら仕事は続けられないだろうという茜(←元AKBが演じてるのもツボ)、
「経済的に不安定な状態で子どもをもつのは贅沢」
「贅沢だなんておかしい、子どもを産んで育てるのは自然なことなのに」という会話…

家事分担・出産育児と仕事について
「さすが、朝ドラってもんをわかってるー!」な描写の数々の後、
「育ての母(山口智子)に頼ってもらうためにマダムと結婚する」
と宣言する岡田将生…という、全く先の見えない仕掛けを炸裂させる週明けの15分。
脚本家の凄腕に唸るww

とにもかくにも、私の「朝ドラ・脳内アーカイブ」の「ヒロインの結婚フォルダ」に、またひとつ、★3つのファイルが加わりました!

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