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「光る君へ」メモ 第2回「めぐりあい」 男のように笑う下積み時代の紫式部

なるほど、代筆屋ねー。ちょっとチープだけどおもしろい設定だな。
いくら文学好きといってもサブスクどころか印刷技術もない時代に読める物語の数はたかが知れているし、貧しいとはいえ曲がりなりにも貴族の娘、出会える人も限られる。

長大な源氏物語を読むと「多種多様な登場人物たちの行動や心理、そして和歌までを、(多分)たった一人で見事に描き分ける能力はどこから?」という疑問がわくんだよね。

その疑問に対して、今作では「紫式部は若いころ代筆稼業をやっていて、いろんな人の話を聞き、それぞれのシチュエーションに合った歌を考える経験を積んでいた」とする、と。

下級貴族で、母親がおらず、裳着を終えたばかりでまだ幼く(母の死から6年、と言ってたし14歳くらいだよね?)、父親への反発心をもっている。
ギリギリセーフで家を抜け出せる境遇だなと思えるし、定期的に町に出るだけでも人や世の中を見る目は養われるよね。
そして代筆屋で個人のプラべ情報をじっくり聞き、聞くだけじゃなく「和歌」という形でアウトプット。しかも、「突き返されました~」みたいなフィードバックまでもらえるというw

「2020年代の視聴者が納得する紫式部の下積み時代」って感じだ。

ポイント押さえてるなーと思ったのは、まひろに
「その人になりきって代筆をしているときだけ、生きていると感じる」
と言わせるところ。
初回、三郎相手に口から出まかせの氏素性をペラペラしゃべったのに続き、物語作家としての「業」だよね。

そして良いなと思ったのは、まひろが客の声に心から耳を傾けていたこと。6年前の夜を忘れたいという代償行為や、自分の能力を示したいというエゴだけじゃなく、そもそも人の話を聞くのが好きだし、相手の幸せを願える人間だと設定されているんだな、と。

紫式部って「根暗な性悪女」みたいなイメージあったじゃん、昭和には(←昭和を知っている人間のコメントw)

「賢い女にかわいげがあるはずない」っていうミソジニーそのものだよね。けっ。そこらへん、“楽しいおなご”という今作のまひろの造形はアップデートされてるなーとうれしくなった。

三郎がまひろに「何者なんだ」と直球で尋ねるのも「おい時代考証ー!」とは思うものの(それ言い出したら紫式部と藤原道長が並んで河原を散歩してる時点で…って話になるからねw)

以前は「帝の血を引く姫なのよ」と真っ赤な嘘をつき、6年ぶりに再会すると「男のように笑う」娘に成長しているまひろ。
そりゃ「おまえはいったい何者なんだ」となるよな、と妙な説得力があるし、「つかみどころがない女」というまひろの造形がおもしろいです。

あと、今回外せないのは東宮ですよね、
「よく似た親子で手応えも似ておる。どちらと寝ておるか分からなくなることもしばしばじゃ」

昔の大河ドラマや時代劇映画を思い出させるようなインモラルなセリフでしたが、童顔の本郷奏多が足の指で扇を挟んでニッコリしながら言うのが妙にユーモラスで、うまい塩梅だなぁと。

しかも後のシーンで、「みな逃げていくのに、おまえだけは側にいてくれた」「おまえのおかげでだいぶ賢くなったぞ」「俺だって見るところは見てるんだ」と、良いところも見せる。

花山天皇といえば、歴代の中でも10本の指に入るくらいアレな天皇だと思うけど、こちらもステレオタイプに押し込めない造形が意欲的でいいですね。って、ほとんどの視聴者は、そもそも花山天皇に対するステレオタイプを持っていないか‥‥次回、即位式のシーンは18禁かもしれないのでよろしく!

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