見出し画像

「光る君へ」メモ 第1回「約束の月」不正義や理不尽に怒れる女主人公

個人的にこのドラマへの最大の期待はまひろ(紫式部=吉高由里子)と三郎(藤原道長=柄本佑)の婚外関係(笑)なので、ふたりの出会いのエピソードが自分好みで満足しました。

まず、三郎に「女なのに何で漢詩がわかるんだ?」とたずねられ、「帝の血を引く姫だから」と息をするように嘘をつくまひろ。
「母上は帝のご寵愛を受けたけど身分が低いから宮中を追われて‥‥」って源氏物語の原型始まった(笑)

“バカ”という語も大衆化されていない時代。史記からの講釈、おもしろかったですね。父に読んでもらっていた話だよね?賢さと同時に、すぐに受け売りするあたり、子どもらしさというかお調子者というか、かわいさも感じました。

そんなふうに幼いのに、三郎をバカバカと罵倒しつつ、「私もバカだから」と自分を客観視する視点がある。
「姫というのは嘘」と、バレそうになったわけでもないのに自分から打ち明ける正直さも。そして、こう言うのです。

「何であんなこと(作り話)を言い出したのか、自分でもわからない」

これをどう捉えるかなんですけど、家の困窮や母親の不遇、そして、男は妻を複数もって家を空けられるという社会構造への理不尽を感じ取ってモヤモヤしている幼い心身から、“今・ここ・私とは違う世界へ” の想像の翼(花子とアンw)が広がっているということなんでしょうが、それを「自分でもわからない」と言わせたのがとてもしっくりきました。

わけもわからず物語が口をついてでる。
“書かずにいられない”そんな物語作家の資質が表現されているなあ、と。

対する三郎。
「だから、私をおまえと呼ぶことは無礼なのよ」と自分よりだいぶ小さな少女に居丈高に言われて、ちょっとびっくりはするものの何ひとつ反発せず「ははー、お許しを」(跪いて)
って最高か!!! 小さな騎士じゃん。

豊かな貴族の三男坊らしい鷹揚さでもあるけど、勉強が嫌いと言いつつ、まひろの気難しそうな話をおもしろがったり、機転の利いた対応ができる資質をもってるんだろうね。

どうしようもないならず者である豊かな貴族の次男坊の兄をいさめるまっとうさももっている。きっと殴られるだろうとわかっていながら、家来をかばったんだよね。

姉の詮子と仲が良い描写も短いながらちゃんと入ってて、詮子が「お顔立ちが好きになれなかったら御子を生むのは難しいんじゃないかと思うのよ」とあけすけに言うのもおもしろければ、「床入りしたらだんだん好きになるんじゃないの」と、のんびり三男坊のようで下世話なことを平気で言うのもすごくおもしろかったですね。

そして「怒るのはあんまり好きじゃない」という性格は、次兄道兼との対比かと思いきや、まひろとの対比なんだなと。

母親を殺した道兼と、それを隠そうとする父親に、まひろがむきだしの怒りを見せたのがすごく良かった。嘆き悲しむより、怒れる子。

不正義や理不尽に怒るのは大事なことだし、幼い少女をそういうふうに描くのはさらに大切。この怒れる子が源氏物語を書く説得力よ!

(あ、私はあさきゆめみしっ子であり、ちょっとした源氏オタクです)

「約束の月」というサブタイトル。約束したわけではない二人だけど(まひろは「行かない」という意思を示していた)、二人とも会いたくて、でも凶事で会えなくて、それぞれに月を見上げる。

当時は太陰暦、月の満ち欠けで日付を数えて、それをもとに生活も政治もすべてが執り行われ、電灯なんかない夜の明かりにもなるから、月はロマンチックでもあり、リアルでもあり、これから長い歳月が描かれる平安大河の初回にふさわしいタイトルだと思った。

国仲涼子のお母さん、よかったね。尽くす妻ではあるものの、悲愴感はなく、明るい感じだった。基本的に幸せそうだったというか、これだけ貧しいのに下男下女が去るのをまったく想像もできていないというのんびりさん。こののんびりは弟に遺伝子しているようだけど、予告を見るとまひろも明るい感じではあるのかな?

そうそう、下男下女にサンタクロースの袋みたいな重そうなのを渡すシーンとか細かくておもしろかった。お給“金”じゃなくて、物(米)なんだよね。「雀の子を犬君が逃がしつる」がベースになっていた三郎との出会い。源氏物語の援用も楽しみ。

ほかに、安倍晴明とか宣孝とか花山天皇とか、いろいろ書きたいことあるけど週を追っておいおいいきましょうー

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?