出版社

食の本を出している出版社は?

未公開のリストのリストによる分析
若い頃、学習研究社(現学研HDの元に分社化)という出版社にいたため、書評をみたり、本屋で本を手に取ったりする際、反射的に版元(業界の人は出版社のことをこう言います)はどこかを見てしまいます(笑)。食の本を出しているのはどんな出版社なのか。どこが多く出しているのか。こんな疑問がわき、手持ちの資料で調べてみました。
食の本を仕入れるため、リストをつくりました。リストの作成方法は秘密ですが(笑)、現状1700冊ほどのリストがあります。基本的には調べた時点で新刊として流通している本(絶版やバーゲンブックではない本)です。この中から実際店にあるのは1000冊弱です。リストにはレシピ本をはじめ、食のエッセイ、小説。そして食に関する蘊蓄など様々な内容の本があります。でも、その8割ほどはいわゆるレシピ本です。データ作成も個人的な好みが入り込んでいます。ちなみにうちの本屋スペースには料理の専門書は今のところ置かないようにしています(将来はわかりませんが)。なので、料理専門書の大手の柴田書店、旭屋出版は本はあまり多くはありません。
こんなことを踏まえ、以下のことをお読みください。

老舗出版社が存在感
冊数で出版社別にみると、こんなところが沢山だしています(まあ、ベスト10といったところ)。

・講談社
・世界文化社
・主婦と生活社
・文化出版局
・主婦の友社
・家の光協会
・河出書房新社
・誠文堂新光社
・KADOKAWA
・学研(学研プラス、学研パブリッシングなどを合算)

この顔ぶれをみると、納得する出版社と「意外」と思うところがあります。講談社、世界文化社、主婦と生活社、文化出版局、主婦の友といった出版社は、老舗であり、料理系の本は多いであろうと(漠然としてはいますが)思いがあります。家の光協会はご存じの通り、JAの出版・文化団体ですから食の本が多いのも納得できます。私として意外なのは、河出書房新社と誠文堂新光社です。河出書房新社は文芸系の出版社という(これも漠然としていますが)イメージがあり、生活感のある料理本を多くだしているとは、しっくりこないところがあります。誠文堂新光社もそうです。子供の頃(遙か昔)、「子供の科学」「天文ガイド」を買っていたせいか、科学系、自然系の本をだす出版社という感じでしたが、どうも違うようです。
KADOKAWAのことはよくわからないのですが、学研は昔からとあるマーケティングの事情で料理本をだしていました(このことはいずれ)。
出版業界的にみれば、大手出版社は講談社に加え、小学館、集英社があげられますが、料理本の数は多くはありません。これもちょっと意外なことでした。

個性的な出版社もある
料理本の出版数は多くはないけど、独自の本をだしている出版社もあります。例えば、アノニマ・スタジオ。高山なおみの「日々こはん」「帰ってきた日々ごはん」シリーズを出版しています。リトル・モアは高山なおみ、細川亜衣の本をだしている出版社(このふたつはテイストが似ている)。グラフィック社は土井善晴のロングセラー『一汁一菜でよいという提案』をだした出版社。坂田阿希子、ワタナベマキ、冷水希三子の本もだしています。
ビジネス本であれば、有名著者(有名人)の本はビジネス本をだしている大手出版社からでることが多いでしょう。しかし、食の本ではこのお作法はあてはまらないようです。個性的な料理の本が増えてくるといいな、と思います。

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