見出し画像

【コラム】アクセサリーには無数のストーリーがある

アクセサリーには無数のストーリーがある。

作り手は勿論、持ち手のストーリーや、その周囲の人、アクセサリーを贈る人、そして見ず知らずの人まで。

アクセサリーの魅力は、デザインや形、色は勿論、そのアクセサリーに託されたストーリーがあると、魅力は倍増する。(勿論アクセサリーに限ったことではないが)

そんな時私は、このアクセサリーを更に魅力的に見せてあげるにはどうしたらいいか、そのためのファッションを考える。まるで自分が1つのプレゼンテーションステージに見立てるかのように・・

2人の女性の尊い思いがつまったイヤリング

このイヤリングは、私がオーストラリア、メルボルンに訪れた際、アメリカ人の友人からいただいた物である。友人はご主人の国、オーストラリアに移住したのだが、外国人がオーストラリアで仕事を見つけるのは難儀。Ph.D(博士号)まで持っている友人も、例外なくそのうちの1人だった。

じっとしていられない彼女は、自宅から駅まで徒歩30分、そしてメルボルンの郊外の駅から電車(列車というべきか・・)で40分かけてダウンタウンまで出て自分の未来を毎日模索していた。そこで彼女が見つけたのは、あるボランティア団体のヘルプであった。

アメリカで、シンガポールで、輝かしいキャリアをおさめた彼女には、最初はかなり戸惑うものであったという。ボランティア活動はヘルプだけで、収入を得ることはできない(謝礼のみ)。しかし彼女は活動を続けていくうちに、”ゲット(獲得)”することばかり考えていた自分から、自分の持っているものを活用して誰かに”ギブ(与える)”する大切さに気が付いたという。

そんな彼女がいた組織は、Political Refugees (政治難民)などを保護する団体だった。私が彼女を訪れた時、彼女はその組織に入っている方々が作った物をバザーで販売する活動を行っていた。

画像1

このイヤリングは、彼女が「メルボルン旅行の記念に」と言って、私に買ってくれたものだった。その時に彼女はこんな思いを話してくれた。「このイヤリングはボリビアから来た女性が手作りで作ったの。この女性はね、本当に生活が大変なのよ。まぁ私も職がなくて、旦那も離婚して数年しかたってないので、ウチは毎日お金に苦しいけど、でも彼女に比べたら全然まし。住む家だってあるしね。」

画像2

「それよりもこのイヤリング、編み目、とってもきれいでしょう?しかもこの太陽のように明るいオレンジカラー!生活に苦しんでいるのに、こんな明るいイヤリングを作れるなんて感動するよね!」

まさに彼女の言葉通りだった。このイヤリングだけ見たら、作り手の環境など知り得ないし、ただ「可愛い手作りアクセサリー」で終わっていただろう。(まして、私はこういったデザインを購入することはないと思う。)

画像4

またこのイヤリング、簡単にできるものではない。かなり時間がかかったはずだ。丁寧な編み目を見れば、それは一目瞭然である。

15歳上のこの友人は、当時「ゲット」ばかり考えていた私に、何かを伝えたかったのだと思う。かつては自分も歩んだ思いを私の姿に投影し、そこに追って気が付く大切さを。彼女の思い、そしてこのイヤリングの作り手の思いがつまったこのイヤリング。メルボルン旅行の1つの大きな思い出になっている。

画像3





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?