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生きがいのある人生の構図を整理しました。

私のコーチングの目的は、クライアントの生きがいのある人生の創出であり、生きがいのある人生とは主体的真理と社会実装の循環と捉えています。今回、その観点から「生きがいのある人生の構造」を整理しました。

説明動画もあります。

■生きがいのある人生の構造(全体像)

図2

生きがいのある人生の構造は、基本となる人生の構造、当該人生の構造における内面の構造(心理的な動き)、外面の構造(社会との関りのあり方)で構成されます。

■人生の構造(基本構造)

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人生の構造とは、自分にとっての理想、固有の生きる目的(主体的真理)を大事にし、それを社会及び他者に表明し、作用させながら、否定、矛盾と対峙し続けることを意味します。主体的真理はデンマークの哲学者であるセーレン・キェルケゴールの造語です。

我々には、スピノザやロジャーズが主張するように、生物として自らを高めようとする傾向が普遍的に備わっており、それをコナトゥスと呼びますが、そのコナトゥスが主体的真理を求める源として常に作用していると考えます。

社会及び他者側には、我々の主体的真理を抑圧し、社会化を図る引力が備わっています。それは我々の社会において道徳規範などの形で定着しています。道徳規範自体は社会を安定させるために不可欠なものではありますが、我々は往々にして道徳規範やあるべき論にがんじがらめになって、自分の主体的真理を抑圧して生きています。これをスピノザの用語で隷従と呼びます。隷従が常態化すると、生きがいが低減してしまうため、主体的真理を明確化し、社会に作用する動きを強めていく必要が生じます。

主体的真理と社会及び他者の間に挟まっている逆説弁証法とは、主体が自らの否定性に直面したときに、その否定性、矛盾と向き合い、それを自らの実存的生において真摯に受け止め、対峙するための論理です。簡単にいえば、自分の主体的真理を社会において具現化した時にいろんな反対意見や「そんなの無理だよ」というネガティブな言動にさらされるけど、それを受け止めるもあきらめず、具現化する方法を考え抜くあり方と言えます。なお、逆説弁証法はデンマークの哲学者であるセーレン・キェルケゴールの造語です。

図1

逆説弁証法は、絶妙なバランスを求めるあり方です。社会の都合や他者の声に耳を傾けず、自分のありたい姿ばかりをごり押ししていると、それは独善と呼ばれる事態に陥ります。独善に陥れば、あなたの元から仲間が去っていきますから、かえって生きがいのある人生から遠のいてしまいます。

かといって、社会の都合や道徳規範、他者のネガティブな声に振り回されて自分のありたい姿を見失い、社会適応にだけ専心する生き方も、生きがいのある人生からほど遠いものになってしまいます。これは、スピノザの言う隷従の状態です。

そのため、主体的真理を社会に実装するためには、矛盾を包摂し、止揚(統合)に向けた実践が不可欠になるわけです。それができれば、人の人生は生きがいのあるものに次第に近づいていきます。

なお、主体的真理の現れ方は、逆説弁証法を繰り返すうちにだんだんと変容していきます。それは、人が逆説弁証法を繰り返すうちに視座を高め、成人発達理論でいう発達段階を高めていくことが影響しているためです。

図1

上述した内容から明らかなように、生きがいのある人生の構造を構築するためには、何よりもまず主体的真理の明確化が必要となります。特にこれがコーチングの初期の狭義の目的となります。主体的真理の明確化の手順については以下の記事をご参考ください。

■内面の構造(人間の意思決定の構図)

図1

内面の構造とは、ひとりの人間において逆説弁証法が進行する時に生じる意思決定メカニズムのことを指します。この意思決定メカニズムが、主体的真理の社会実装を円滑に進めることができるよう、機能を高めておく必要が生じます。主にコーチングやカウンセリングが支援対象としているのはこの内面の構造になります。神経学者のアントニオ・R・ダマシオのモデルを参考に作成しています。

社会及び他者からの反作用によってなんらかの反応が求められる状況と相対すると、経路Aが、行動の選択肢、予想される将来の結末と関連するイメージを誘発します。その認識の上で、推論戦略が展開され、決定が生み出されます。これが一つ目のルート。

経路BはAと並行的に作用します。まず、類似の状況における以前の情動経験(これは自伝的記憶と呼ばれる脳内のメモリーに保存されています)の活性化を誘発します。ついで、その情動と関係する素材の想起が(明白な想起であれ、ひそかな想起であれ)、注意を「将来の結果の表象」に仕向けることで、あるいは「推論戦略」に干渉することで「決定」に影響を及ぼします。

ときおり、経路Bがじかに決定をもたらすこともあります。本能的感情が即刻の反応を駆り立てるときが該当します。各径路が単純に、あるいは組みになって使われる程度は、個人の成長の程度、状況の性質、環境などに依存することになります。

エゴグラムとの関連で言いますと、A(論理力)は経路Aにおける分析の厳密さに、その他因子は経路Bの傾向に影響を与えると整理できそうです。適切な決定には、経路Aの精度(現実分析能力)と経路Bの精度(決定に資する情動経験と心的傾向の蓄積)が必要になります。

経路Bにおいて建設的な決定に寄与しない情動経験と心的傾向(例:過度な恐れ)の蓄積がみられる場合、当該情動経験と心的傾向を意識化し、管理下に置いた上で経路A優位の決定を重ね、情動経験と心的傾向の修正を図る必要があると考えられます。

情動経験と心的傾向の修正とは、社会や他者との関りの中で蓄積してきたネガティブな自伝的記憶(これは無意識下にあるものですが)を書き換えていくことを指します。ネガティブな自伝的記憶は、シャドウだとかトラウマだとか呼ばれているものです。

これらは、認知の歪みを補正するということだけではなく、この先で展開される逆説弁証法を通じて新たな自伝的記憶を蓄積することによって修正していく必要もあります。なので、全体図の中で左側の社会実装の構図と自伝的記憶がつながっているということなのです。

■外面の構造(社会実装の構図)

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主体的真理と社会実装は、内面の捉え方の変革だけで完結するものではありません。内面の構造(人間の意思決定の構図)をより良いものにしていくことと並行して、実際に社会及び他者に自らの主体的真理を表明し、評価を得ていく必要があります。主体的真理と社会実装は自分単体では成立しませんから、主体的真理を実装する自らの自律性の構築と、実装する対象となる他者との関係性構築が相互作用する形で行われていく必要があるのです。

社会実装の構図の始点は当然ながら主体的真理の発信になります。それが他者に認知されることで、実装に向けたパートナーやクライアント候補との接続・接触を図る基盤が構築されることになります。ここでは、自らの主体的真理の特性に鑑み、その内容を必要とする人にどう認知してもらうのかの戦略が必要となります。とはいえ、主体的真理の発信は「数やらなければどうしようもない」という次元の話だったりします。

他者が自らの主体的真理を認知した後に、鋭意接続・接触を図るという工程に移行します。ここでは、主体的真理に対する他者の興味喚起をどのように進めていくかという考察と手直しが必要となります。この工程ではとにかく「多様かつ多くの人と交わり、自らの主体的真理を必要に応じて変容させながら最適化していく」という工程が必要になります。

興味が喚起された他者との交流を深める中で、次にそれら他者が持っているニーズと、それが自らの主体的真理、及び、スキルを通じてどう充足されうるかを考える工程に移ります。この工程では「様々なトライ&エラーを重ね、共感を得られるような社会実装のプロトタイプを作成する」ということがなされます。

そのようにして固まってきたプロトタイプを元に、他者の共感を呼びこみ、パートナーシップを形成し、あるいは顧客化していくフェーズに入ります。ここが社会実装の具体的な営みと言えます。

■まとめとして、私のコーチングのアプローチとは?

図1

最後にまとめとして、この構造が私のコーチングアプローチとどう関連するかを述べておきます。私のコーチングアプローチは上記図になぞらえますと、①主体的真理の明確化、②実践と主体的真理の接続維持、③内面世界における経路A・Bの補正、④自伝的記憶の効果的な書き換え、⑤社会実装のタクティクス構築、の5点となります。このように、クライアントの生きがいのある人生構築に向けて、包括的に支援するのが私のユニークネスになります。

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