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資金繰り表で最初につまずく3つのポイントを乗り越えて、お金と向き合う

皆様は子供の頃いわゆるおこづかい帳をつけられた事はあるでしょうか。

私は小学校4年生まで和歌山県に近い大阪の田舎の方に住んでいたのですが、最寄りの駅(といってもバスで20分ほどかかりましたが)に初めて銀行が出来た時、頒布品としておこづかい帳をもらい、つけ始めた記憶があります。

おこづかい帳は

・前月末の残高:A
・入金:B
・出金:C

があってA+B-Cを計算することで、今日の残高が分るようになっています。そして、月末の残高がまた翌月初めの残高となって次の月に続いていく訳です。

資金繰り表もいろいろな項目が書かれていますが、構造的にはおこづかい帳と大きく変りありません。

では、多くの人が資金繰り表を作ろうと思っていてもなかなか前に進んでいないのはなぜでしょうか?

資金繰り表を作ろうと思った時、最初につまずくポイントは3つあります。

①勘定科目の理解
②利益とキャッシュとの違い
③計上時期とのタイミングのずれ

勘定科目を理解するのが面倒くさい

まず、最初の勘定科目の理解の部分ですが、売上高、当期利益、預金、商品、借入金ぐらいは問題なくても、売掛金や買掛金、未払金や未収金ぐらいになると、少しずつ怪しくなってきます。ましてや、交際費と会議費の違いは何か、昨日の支出はどっちに計上すべきなのか、といった問題になってくると、正確に答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。

先の売掛金と買掛金、未払金や未収金というペアで考えると比較的理解しやすいかもしれませんが、「売掛金と未収金、買掛金と未払金の違いは?」となると答えに窮するかもしれませんね。

これら勘定科目の違いは経理担当者や税理士さんにとっては大きな違いとなり、厳密に区別すべきとなるかもしれませんが、経営者が資金繰りを見る上ではさほど神経質にならなくても良いというケースが多いのです。

交際費として20,000円使おうが、会議費として20,000円使おうが、会社から出ていくお金は同じ20,000円です。もちろん、決算で課税所得を計算する際には交際費と会議費の違いは考慮すべきですが、昨日使った20,000円はキャッシュフローとしては昨日時点において同じ、「▲20,000円」となります。

従来、資金繰り表を作る際にどうしても制度会計である決算や決算業務を行うための仕訳をベースにスタートするためにかえって複雑で分りにくくなっているところがあります。

先の交際費と会議費の違いや、売掛金と未収金との違いのように大きな資金繰りとして見た場合、あまり大差のないものを同じグループとして考えると、資金繰り表を作る際にもっと簡略化できるはずです。

利益とキャッシュとの違いがややこしい

従来の会計は利益およびそれに伴う税金を中心に考えてきたため、利益をいかに上げるか、(節税のために)利益をいかに抑えるかを重視してきました。

例えば、500万円の工作機械を購入した場合、資金繰りとしては「▲500万円」です。一方、会計としては年間の減価償却費を50万円とすると、

費用(減価償却費)=50万円
固定資産=450万円(=500万円-50万円)

となります。

したがって、決算上の数字だけ見ていると、実際には会社から500万円のお金が出ていっているのに、50万円だけの出費で済んだように錯覚しがちです。

また、300万円の原材料を使って商品を100個作ったとします。期初の在庫を0個、期中に70個売れて、期末に30個の在庫が残ったとすると、300万円は、

費用(売上原価)=210万円(=300万円×70/100)
資産(商品)=90万円(=300万円×30/100)

となります。

この場合、会社から原材料費として300万円支出されているにも関わらず、費用として計上されるのはその一部に留まっています。

このように会社の費用、およびそれに伴う結果としての利益とキャッシュとの間にはどうしてもギャップが生れます。

このあたり、経理や会計に詳しい人であれば、なんてことのないことなのかもしれませんが、経理はちょっと苦手という方にとっては、試算表や、損益計算書・貸借対照表をもとに資金繰り表を作れと言っても少し時間がかかるかもしれません。

しかし、いずれにしても、資金繰りを問題にする場合、あくまで大事なのはキャッシュです。

工作機械のケースで言えば、手元に450万円の現金があるのと、450万円で計上されている機械があるのでは大きな違いです。

現金や預金の場合、使おうと思えばすぐに使えますが、機械の場合、もちろん商品を製造するという大変重要な役目があるものの、それを換金して使うことはけっして簡単なことではありません。

したがって、その機械が生み出す商品が会社を利益に貢献できるかどうかがポイントになってきます。

商品(在庫)の場合も同じような問題があります。

在庫と費用との関係で言うと、同じ300万円を使って商品を作っても商品が売れずに在庫として売れ残れば残るほど、(費用が小さくなって、)表面的には利益が上がるという一種のゆがみが生じています。

したがって、商品を作って利益が出たと一安心して蓋を開けてみると、実は不良在庫が山のようにあり、その後の資金繰りは・・・という事態にならないよう注意が必要です。

計上時期と入金や支払とのタイミングのズレの問題

この問題は一般に市販されている会計ソフトではなかなか対応しきれない点であり、資金繰りを把握していく上でも外せないポイントです。

各会社ではそれぞれ売上や収益の目標があります。今月の目標に対して、売上で500万円が足りないとか、材料費があと100万円下がれば利益が出るということで、皆様も日々努力されていることと思います。

そして、月末ギリギリになって、600万円の受注が取れたため、今月はめでたく、売上の目標を達成したとしましょう。会社としては予算以上の数字をあげたため、◎です。

一方で、資金繰りの観点から見た場合はどうでしょうか。

仮に営業担当者が目標を達成するために、先方の条件を呑んで売上の支払は6ヵ月後で受注したとします。つまり、会社にお金が入ってくるのは半年後という訳です。

ここで話を簡単にするために、600万円は会社の期末に全額利益として計上できたものとし、この600万円の案件以外の収支はプラスマイナス0とします。すなわち、この会社の税引き前利益は600万円になるという訳です。

税率を40%とすると、この会社は期末から2ヵ月以内に税金240万円(=600万円×40%)を支払わなければなりません。

一方で、600万円が入ってくるのは6ヵ月後。したがって、資金繰り的に見た場合は支出が先行するため、会社としては何らかの形で資金手当てをする必要が出てくるのです。

もちろん、手元に240万円以上のお金があり、全く問題ないという会社も多いと思いますが、私が今まで1,000社以上の資金繰りを見てきた経験からすると、このあたりの資金繰りは結構盲点になっており、税理士から納税額を聞いて慌てて資金繰りに駆けずり回るというケースも少なくありません。

前述のケースは話を非常に単純化するため、税金問題を取り上げましたが、実際には600万円の売上を上げるために原材料を購入したり、製造費用がかかったりするため、いろいろと支払が発生します。

したがって、せっかく社員の人が頑張って売上を上げたのに、入金や支払のタイミングを把握していないと、結果的にお金が足りなくなって社員の給料が払えなくというように笑うに笑えない事態が起こってしまう恐れもあるのです。

会計上は同じ売掛金600万円であっても、その入金日が1ヵ月後なのか、6ヵ月後なのかでは資金繰りとしては天地ほどの開きがあります。

この部分は資金繰りを考える上で絶対に外せないポイントであり、社長だけでなく全社員が意識を持って取組むかどうかによって資金繰りは大きく変わってくるのです。

ごまかしの効かない資金繰り表と向き合う

さて、会計の場合、計上の仕方によっては数字を変えることができます。

粉飾決算は論外ですが、法律や規則で認められている範囲内で計上する利益をある程度変更することは可能です。例えば、減価償却の方法を定率法から定額法へ変更することで利益が出たという場合もあります。

一方で、資金繰りを見る際のお金は一切ごまかしが効きません。当たり前のことですが、100万円はあくまで100万円であり、それを50万円として過小申告することも、200万円として過大に見積もることもできないのです。

したがって、決算書を作成するにはある程度の知識や経験が必要ですが、経営者にとってより大切な資金繰り表は、一瞬複雑に思える経理や会計の仕組みを単純化したり、お金の動きを大まかにでも把握したりすることで必ず作成することができるものなのです。

1社に1枚資金繰り表

おこづかいをもらい始めた小学生がおこづかい帳をつけることができるように、ちょっとの工夫と努力があれば、資金繰り表に対する苦手意識は克服できるはずです。

なお、効果的な資金繰り表の作り方について、より具体的に知りたいという方は「こちら」からお問い合わせください

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