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怒涛の1ヶ月間となったスペインでの留学生活

スペインに滞在中、新型コロナウイルスの影響で帰国したTさんとRさんの体験をインタビュー形式でまとめました。スキ、シェアをどうぞよろしくお願いします。

–まず、おかえりなさい。最近はどう過ごしていますか?

Tさん(以下T):少し前に大学のオンライン授業が始まったので、課題をやりつつ、家でDVDを観たりして過ごしています。妹も学校が休みなので、ずっと家族と家の中で過ごしています。

Rさん(以下R):私もオンライン授業の課題をこなしつつ、アルバイトをしています。私の住んでいる地域はまだ新型コロナウイルスの感染者がいないので、留学に行く前働いていたアルバイト先に復帰して、土日は働いています。あとは気分転換に運動したりしています。

– アルバイト先は忙しいですか?

R:すごく忙しくて…皆遠くに行けないので近いところで買い物をしていて、忙しいです。

–帰国してからどんな心境の変化がありましたか?

T:最初は帰国したくなくて…帰国する時も友達と離れるのが嫌だったし、1ヶ月ちょっとしか現地に居られなかったので、何しに行ったんだろうみたいな気持ちもありました。帰国してからも、ぼーっとしていると「今頃スペインに居たのにな…でも日本にいるし、何だこれ」みたいな気持ちになっていました。でも今は、世界が思っていたよりもひどいパンデミック状態になっていて、家族と一緒にいられることを良かったなとも思っています。戻ってきたからこそ、一緒に居られるので。

R:すごくわかります。帰ってきたときは本当に信じられなくて…もしできることなら、スペインに居たいなっていう気持ちの方が強かったんです。でもやっぱり、帰ってきて安心できたので、今は良かったのかなって思っています。

– 滞在していた場所について教えてください。

Tさん(以下T):スペインの南西部の小さい町でした。

Rさん(以下R):海岸沿いの町で、ポルトガルに車で1時間で行ける距離です。

– 小さい町とおっしゃっていましたが、どのくらいの規模の町ですか?

T:町の端から端まで歩けれるくらいの町です。

R:基本的に移動は歩きでした。

–滞在の目的について教えてください。

T:1年間の学部留学です。

R:半年の学部留学です。

滞在の予定期間について教えてください。

T:私は2020年の2月5日に日本を出て、2021年の2月15日に帰国する予定でした。

R:私も2020年の2月5日に出発して、7月の初めくらいに戻ってくる予定でした。

–実際の滞在期間について教えてください。

T:出発日は同じで、2020年3月17日にスペインを出国して、3月18日に日本に着きました。Rさんと一緒に帰ってきました。

– 丁度1ヶ月半くらい、ということになるんですね。最初に新型コロナウイルスの影響を感じ始めたのはいつですか?

T:日本を出る前かな…確かマスクを持っていった気がします。出発日の時点で新型コロナウイルスの話は出ていたのと、経由地が香港だからという理由だったと思います。

R:すごく怖かったのを覚えてます。

T:親からも消毒剤とマスクをとりあえず持っていくように言われた記憶があります。もしかしたらヨーロッパも流行るかもしれないし、きっと現地ではマスクが買えないだろうからって。持っていった方がいいって大量に渡された記憶があります。

R:私も100枚くらいスーツケースに入れていきました。

T:荷物を空港で整理するときも、親にスーツケースの中のものを直接置かないでって言われた記憶があります。そこまでひどくはなかったんですが、空港が少し危ないみたいな雰囲気があった気がします。新型コロナウイルスの存在は行く前からあったのかなと。

T:ただ、飛行機に乗ってる時にRさんと話したんですが、「逃げたよね」みたいな感じがあって。

R:そうなんです。アジアで新型コロナウイルスが流行っているというイメージだったので、ヨーロッパに逃げられたなっていう。

T:そう。逆に安全な時期に留学に行けて良かった、みたいなことを言ってましたね。ただ、経由地の香港では結構警戒してました。香港で水のペットボトル買ったの覚えてる?買ったあと、アルコールのウェットティッシュで拭いたよね、私たち。

R:拭いたね。こまめに手を拭いたり。

T:結構怖がってたんだね。空港が危ないっていう認識でした。行きの道中は警戒してましたね。

R:香港の空港で食事をしようってなった時も、結局食べなかったよね。

T:そうそう!横で美味しそうなものを食べてる人がいて、食べようかって話してたんですけど、どこに新型コロナウイルスがあるかわからないということで食べませんでした。

R:結局Tさんが持ってたお菓子を食べました。

T: そうなんです。友人が見送りの時に渡してくれたお菓子の詰め合わせを早速開けて食べてました。機内食出るし、ここでわざわざ買わなくてもいいかって。

– 機内の様子はどうでしたか?

T:機内食も普通に出ていたし、CAさんもマスクをしていませんでした。

R:でも、香港からマドリードまでの飛行機は中国系の方が多かったので、私は怖かったのを覚えています。

T:確かに、怖かったよね。

– マドリッドに着いてからの様子はどうでしたか?

T:マドリッドの空港で次の飛行機まで時間があって、椅子に座ろうとした時にみんなから離れて座ろうとしたのを覚えてます。周りの人は結構ぎゅうぎゅうに座っていたので。

R:私たちは距離を取りたかったんだよね。

T:結構大声で喋っている人もいたよね。

R:マスクをしていない人ばっかりで…私たちもマスクを取ったよね?

T:そうだ!マスクをしている人が居なさすぎて、していると逆に感染しているって思われるかもしれないって思って。マドリッドに着いた時に取ったんだよね。

R:親にはスペインに居てもしてって言われてたのですが…

T:してられなかったよね。

– 最寄りの空港の様子はどうでしたか?

T:マスクもせず国内線でマドリッドから移動して…でも普通だったよね。記憶にないくらい。

R:そのあとが大変だったくらい(笑)

– 何があったんですか?

T:今回の新型コロナウイルスとは全く関係ないんですが…留学先に既に留学していた先輩に色々行く前から教えてもらっていて、最寄りの空港から留学先の大学への行き方を、自分たちで調べずその先輩のアドバイスだけを頼りに向かってしまって…つたないスペイン語で先輩が教えてくれた行き先を伝えたら、「このバスで行けるよ」って教えてもらえて。で、それに乗っていったら全然違う場所に着いてしまって(笑)逆方向の町に着いてしまって…降りてから気づいたんだよね、「全然違うじゃん!」って。でも名前は一緒だったんですよ。仕方がないので同じ名前の違う場所に戻ろうとしたら、「今日のバスは出てません」って言われてしまって…すごく田舎だったので一日二本ぐらいしかバスが出ていなくって。たまたまバス停にいたタクシーの運転手さんが安いホテルを紹介してくれて、しかもそこまで乗せてくれて、一泊しました。

R:次の日にやっと、ね。(笑)

T:そこでも新型コロナウイルスの話は全く出なかったよね。多分私たちが居た町より田舎だっただったから。スペインに着いてからは新型コロナウイルスの気配はなかったです。

R:スペインに着いてからは新型コロナウイルスについて全く考えなくなりましたね。

– スペインで感じた最初の兆候はいつ頃ですか?

R:3月に入る少し前ですかね…2月24日から25日にかけて、今大変な状況になっているマドリッドに旅行に行っていたので。その時はまだそんなに問題になっていなくて、普通にマスクをせずにマドリッドで観光とかをしていて。その1週間後にマドリッドの状況が危なくなりました。感染が拡大していて、感染者数が増えていて。

スペイン組 池田さん マドリード

マドリッド旅行時の写真。

T:それで帰ってきて1週間くらい経った頃にRさんが風邪気味になったんだよね。だから潜伏期間が2週間とか色々な情報が溢れていて、マドリードいった時にかかったのかな、その時に拾っていて今かかってないかなって心配をしてたよね。

R:そう、怖かった。咳とかも出ていたし、喉も痛くて…新型コロナウイルスじゃないのかなって不安になったときがありました。

T:私もスペインに着いて1週間くらい経った頃に風邪気味になって。鼻声になったりしていて。行きの飛行機で感染したのかなとか心配していて。でも症状は咳ではなくて鼻水だったので、色々調べて、大丈夫だよねって。病院もまだスペイン語に不安があったし、人脈もないしっていうことで寝るしか出来なくて。本当に新型コロナウイルスに感染していなかったのか、感染していたのかも今となってはわからないですし。

R:Tさんその時にマスクをつけはじめてなかった?自分がもし感染していたらどうしよう、一応つけておこうかなって。

T:そうそう。学校に何回か行かなきゃ行けなかったのと、新しく出来た友達に会ったりしていて。先に現地にいた先輩に紹介してもらって友達がもう出来ていて、授業が本格的に始まる前に遊んでおこうって話していたので。そんな時期に風邪を引いていたので、もしかしてってこともあるからマスクをしておこうって。

– 少し話が戻りますが、マドリードに旅行に行った際、様子はどうでしたか?

R:マスクをしている人で見掛けたのは1人2人くらいで、皆あまり新型コロナウイルスのことは気にしていない様子でした。観光地にも人はたくさんいましたし、密集してました。普通な感じでしたね。

– きっと今では見られない光景ですね。

T:2月29日にご飯に行ってるみたい。そのときはどんな様子だったっけ…普通に人いたっけ。そんなに気にしてなかったのかな。

– 外食先での様子に変化はなかったですか?

T:普通だったよね。

R:私たちがいたところでは、って感じだったんじゃないかな。

– 地域差が結構あったんですかね。

T:結構地域差ありましたね。

R:マドリードがスペインの大体中心にあって、私たちがいたところからは電車で5〜6時間くらいかかるので…

– 2月29日から1ヶ月もしないうちに帰国することになるという。

T:帰るときはあっという間でしたね。日々状況が変わって、1日ごとに色んなことが決まっていって。

R:早かったよね、もう帰国?みたいな。

T:買いだめをしたのはいつだっけ…学校が休みになってから?あっ、でも3月10日に買いだめをしたみたい。3月1日に私は今まで住んでいたホテルから、シェアハウスに移ったんです。色んな国の人と4人で部屋を借りて。それでそのルームメイトと食べ物を買いだめしたのが、3月10日です。同じ日に、イタリアに留学していた友人から連絡があって、「イタリアから帰ってくるように指示が出た」って。その子と4月に一緒にヨーロッパを旅行する予定でいたので、行けなくなってしまったって連絡が来ました。その時には既にイタリアは大変な状況になっていて、イタリアに留学している人は全員帰国するように大学から指示があったみたいです。あと、この日にスペインでこの日感染者が1000人を超えたって日記に書き記してありますね。怖いって書いてあります。

– 3月10日に買いだめをする前はまだ普通の日常でしたか?

T:外にあまり出ない方がいいという話を周りから聞くようになって買いだめをしておこうという流れになっていたと思います。

R:ちょっとパニック状態だったと思いますね。買いだめしておかなきゃ、みたいな。

T:日記によると3月12日にスペイン全土の新型コロナウイルスの感染者がついに3000人くらいになった、って書いてありますね。その日の夜9時頃に、3月15日から3月30日の間全ての学校が休みになるとアンダルシア州からニュースが出たとも書いてある。

R:ということは、私が買いだめに行ったのは3月13日かも。学校を休んで行った。

T:そうだそうだ。書いてある。「パニックを起こした人たちがスーパーで急いで買い物をしたため品薄のものがたくさん出てきた。だから明日は授業を休んでスーパーに買いだめ用の買い物をしに行く」って書いてある。

– その日記が12日?

T:はい。

R:それからもう5日も経たないうちに…

T:え、本当にそう!早くない?12日以降日記を書いてなくて、帰ることに忙しくなってたみたい。無いんですよそこから日記が。途切れているから…多分次の日は買いだめに忙しくて。そのあとはもうずっと家にいたから…

– 学校に通えた期間もすごく短かったということですよね。

T:そうですね。

R:2月17日から授業が始まって、3月12日までということになる。

T:3月13日までだったけど、私たちは学校を休んで買い物に行ったから、12日まで。学校へ行って買いたいものを買えなくなるのが怖くて。これから家に居なきゃいけないのに、物が足りなくなっていくのが嫌で…休んで買いだめをしようということになりました。13日の授業は友人に録音を頼んで休みました。15日か16日から学校が完全に休みになりました。

–2月29日から3月15、16日までの間に新型コロナウイルスの影響で変化したことはありましたか?

R:実際に周りで変化を感じることは少なかったですが、メールで感染者数の情報が届くようになっていて、それをすごく確認するようになっていましたね。どんどん増えているねって話をしていました。

T:13日に友人と買いだめをしに行った時、マスクをしようと思って持って行ったんですが、道行く人もスーパーの買い物客も誰もしていなくて、行きの空港と同じでマスクをしていると逆に危ないかもしれないと思って、持って行ったんですが、取ってかばんにしまっていましたね。

R:しなきゃいけないのに出来ない、みたいな複雑な心境でした。

T:でも、手袋をして買い物している人はいました。

– 手袋はするんですね。マスクは手に入らないけど、手袋は手に入るという…

T:スペインのスーパーでは野菜売り場にビニール手袋が置いてあるんです。ビニール手袋をして、野菜を触って袋に入れる習慣があったので、手袋は日常的に使うものなので多分量的にも、家庭にストックがある場合があったのではないかなと思います。

–ビニール手袋をして野菜を触るというのは新型コロナウイルスの影響ということではなく?

T:ではなくて、元からですね。

– 手袋をすることには抵抗がない、という感じでしょうか。

R:はい。あと変化の一つとして、手を清潔に保つことを意識していた印象を受けます。ハンドソープが売り切れたりしていました。ニュースでも手を洗いましょうという内容が流れていました。

T:3月13日に買いだめに行った時、手の消毒液があるといいよねと話していて、買いに行ったんですがそれも売り切れていましたね。

–お店が休業になったのはいつ頃ですか?

T:学校が休みになった時か少し前には、外に出てはいけないという指示が国から出ていました。

R:私はホストファミリーと住んでいたのですが、ホストファミリーも会社にいけない状況になっていましたね。

–学校やお店が休みになったから外に出ないようにしよう、という流れではなく、先に外出をしないように国からの指示があった、ということなんですね。街中でマスクをしている人をみる、ということはないまま、先に家から出れない状況に入ったということなんですね。

T・R:はい

– その期間、何か印象に残っている出来事はありますか?

T:外出禁止が始まってすぐ、SNSで毎晩20時に窓から顔を出して、一斉に手を叩こうという呼びかけを知りました。私と友人はそれを医療従事者への感謝と、みんなでこの状況を乗り越えようという意味だと思ったので、やることにしました。最初は近所で誰もやっていなかったのですが、わたしとルームメイト達は毎晩20時に窓から顔を出して叩く事を続けていました。そうすると日を重ねるごとに手を叩く音が増えていきました。どんどん人が増えていって、たくさんの拍手の音が聞こえることに感動して涙が出た事を覚えています。これで何が変わるのかなと思った時期もありましたが、実際に叩いているとこんな深刻な状況でも、みんなで一つになっていると実感できて、あともう少し頑張ろうと思えました。外出できない苦しさも少し軽くなりました。すごくいい体験だったと思っています。

–日本の大学からはどんな指示が出ていたのですか?

T:もしかしたらもうすぐ帰らなきゃいけないかもしれないという指示が最初に来ていました。その後、帰国の具体的な基準が送られてきました。外務省から出ている危険度レベルが2以上になったらまたメールを送りますという内容で。次に来たのが、レベル2になったので帰国してくださいというメールでした。それで、こちらから一番早い帰国日を選んで、連絡するという形になっていました。

R:一番早くて16日に帰国できますと伝えたところ、17日が帰国日に決まりました。

T:私たちの中では飛行機に乗って帰る方が危ないのでは、という思いがありました。私たちが滞在していた町には感染者があまりいなかったので。だからここに居た方が、会うのは一緒に暮らしている友人くらいで、外にも出れない状況だったので、残った方がリスクが低いと考えていました。飛行機に乗って、人が多い場所に行く方が危ないんじゃないかって。なのでこのまま帰らないという選択ができないのか、ずっと話していました。そっちの方が安全じゃないかって。

R:友達にも帰らない方がいいよって言われたよね。

–帰路はすべて飛行機でしたか?

R:最寄りの空港まで電車とタクシーで行って、空港からはドイツ経由で日本へ向かいました。

T:タクシーを最初は使う予定ではなかったんです。行きで通ったルートは全てバスで行けたので。帰りもバスを探そうと思っていたんですが、その時にはバスが減便になっていて、タクシーの方が確実だったので利用しました。本当はもしかしたら電車も本数がなくなるかもしれないと思って使う予定ではなかったんですが、電車を使わないと結構遠かったので朝早くの電車に乗りました。その後タクシーで空港まで行きました。

R:電車のチケットを買いに行くにも、家からもう出てはいけない時期だったので、ホストファミリーが車を出してくれて何とか買えました。最初はバスのチケットを買いに行ったんですが、私たちの出発日の時刻表がまだ確定していないからわからないと言われて…当日にならないと時間がはっきりしないって。それだと間に合わないなと思っていたら、電車の方が確実だと言われました。で、電車にしました。

– チケットを買いに行ったのはいつですか?

R:出発の前日だったと思います。

T:そのチケットを買いに行った時、チケット窓口の前に線が引かれてて、スペイン語の会話がまず難しいのに声が遠くて余計にわからないってことがあったよね。

R:チケット窓口の前に2メートルくらいの所に線が引かれていて、それより前に近づけないようになっていました。距離を保ちつつチケットを買うという感じでした。窓口の人もマスクはしていませんでしたが、手袋はしていましたね。

– 2月にマドリードに旅行へ行く前はどうでしたか?

R:対面でチケットを買えましたし、距離は取っていませんでした。窓口の人も私のスマートフォンを触っていました。

– 帰国時はまだお二人がいた町では感染者は出ていなかったんですか?

T:いえ、帰る時には出ていました。

R:10人くらいは出ていたと思います。

T:ニュースを見てもスペイン語なのでわからないことも多くて、インターネットで調べたりもしていたんですが、結構書いてあることがそれぞれ違うことがあって…本当は何人いるのか正確な数は掴めなかったんですが、いるにはいました。

R:そんなに多くはなかったよね。

T:でも小さい町なので一人出たらすぐ広まっちゃうよね、とも話していました。

– 帰国日の流れや状況について教えてください。

T:最寄りの空港を13時に出発する便を予定していたんですが、空港にたどり着くための交通機関がどうなっているかわからなかったし、何があるかもわからなかったので、Rさんが取ってくれた朝6時くらいの電車に乗りました。

R:で、タクシーに乗って最寄りの空港に9時くらいに着きました。

T:早く着きすぎて暇だったよね。最寄りの空港でお土産を買おうと思っていたんですよ。スペインに居られるのはその空港が最後だったので。でも、もうお店が全部閉まっていて。ご飯もそこで食べようと思っていたんですが、コンビニも含めてやはり全部しまっていました。お土産も食べ物も買えなくて、朝早くに空港に着いてお昼まで待たなくてはならなくなったので、持って帰ろうとしていたお菓子を開けて食べました。スペインのお土産を買う時間もなかった…。ロックダウンになった時、まさか帰国になると思っていなかったのでお土産という概念が無くて。なので何も買わなかったんですが、急に帰ることになってしまったので…帰国が決まってからも色々なことが急に起こりすぎて、空港に着いてからやっとお土産のことが頭に浮かびました。でもその時にはお店がもう閉まっていたという感じでした。

伊藤さん スペイン写真

3月17日のスペインの空港内のバーガーキングの様子。入れないように封鎖されている。

– 最寄りの空港の様子はどうでしたか?

R:結構人はいましたね。ただ、結構キャンセルになった便が多かったので私たちの便がどうなるか不安に感じていました。

T:マドリード行きが全滅だったよね。

– 行きと同じルートだったら危なかったですね。

T:その空港から乗る飛行機がルフトハンザ航空だったんですが、どこでチェックインをすればいいかがわからなくて道で職員の方に声をかけたら、ハッて離れられたんです。そうしたら「このまま離れたまま喋ってほしい」って言われました。あまり近寄って喋らないでって。空港の中でも2m距離を保ってくださいというアナウンスがずっと流れていました。で、教えてもらったチェックインカウンターに向かったらそこでも一定の距離にポールが置かれていて、そこから前に出て喋らないように、距離を離してチェックインするようになっていました。

– 行きでは見かけなかった光景ですよね。

R:そうですね。なかったですね。

T:あと、ほぼみんなマスクをしていました。逆にしていない人の方が少ない感じでした。

R:スカーフで口を覆ったりする人もいました。

T:色々工夫していたね。しかもそのマスクをしていたのがほぼ欧米系の外見の方で、みんなしていたので「すごいね」って話していました。

– ドイツへ向かう便の機内の様子はどうでしたか?

T:乗客はみんなマスクをしていましたね。私たちも外さないようにしたんじゃなかった?

R:そうだね。周りの様子は…

T:行ってから帰るまでの期間が短すぎて、記憶がごちゃごちゃになる(笑)

R:なるね(笑)これは行きだったのかな?帰りかな?って。でも帰りはマスクをしていた人はいましたね。

–ドイツへ着いてからの様子はどうでしたか?

T:ドイツに着いたら、お店は普通に開いてました。人は少なかったですが。

R:マスクをしている人もあまりいなかったよね。

T:お店がほぼ開いていたので、そこでお土産を買いました。次の便まで結構時間が空いていたので。

R:ご飯もサンドイッチみたいなものを食べました。

T:あとプレッツェルも!もうその時は最後の楽しい時間を過ごそうと必死でした。お土産屋さんを色々巡ったりして、欲しいものを買ったり…

R:必死だったよね。

T:必死だった!最後の楽しい時間を過ごそうと思って。

– ドイツから日本へ向かう機内で何か印象に残っていることはありますか?

T:日本へ向かう便なので当たり前かもしれませんが、結構日本人が周りにいました。空港にも。Rさん以外の日本語を聞くのが結構久しぶりだったので、印象に残っています。

R:機内で空気は一定の時間が経つと入れ替わるようになっているので安心してくださいというアナウンスが流れていたのを覚えています。

– 日本に着いてからの様子はどうでしたか?

R:日本に着いてからスペインに滞在をしていたことを理由に止められたりするかもしれないと考えていたんですが、意外とそういうことはなくて、まだスペインの状況がひどいと日本ではあまり認識されていなかったのか…イタリアや韓国・中国からの乗客は検査の為に別の所に呼ばれていました。特にそういうことはなく、国内線の乗り換えもスムーズにできました。

– 2週間の自宅隔離は?

T:私たちはやらなくてはいけないわけではなかったのかもしれませんが、実家に帰って親からも「2週間は家に居てね」と言われたのでやりました。それが義務だったのかはよくわからずに、帰りの道中でもしかしたらということがあるかもしれないからということで、2週間家に居ました。帰国する前から既に、帰国して友達と会う予定があってもキャンセルするように言われていたので…半ば強制的にですね。

R:私も強制ではないですが、親から「感染しているかもしれないから」と言われて自分の部屋で過ごすように言われました。1週間くらい…ご飯も部屋に運ばれてくるという生活が続いてましたね。

T:なんで自主的に自宅隔離をやってるの、と言う日本の友人もいたのですが、それはやっぱりスペインでどうなっていたかを知っているからという理由に尽きると思います。スペインでも家にずっといたので慣れているというのもあるとは思いますが、やはり他の国でどんな状況になっているか知っているから、自分が家に居た方がいいことを、日本にいた人よりもう少し重く受け止めている気がします。

R:逆に日本はこれで大丈夫なのと思ってしまいました。ゆるすぎない?と思った時期があります。もっとみんな自宅で待機した方がいいのにって。

– 滞在中、または帰国してからスペインと日本の状況の間でギャップを感じたことはありますか?

T:何の為に帰国したんだろうという感じでしたね。日本では結構人が出歩いていて、スペインの方が外に誰も出ていないしって…こんなみんなが活動している日本に、何の為に帰ってきたのかという気持ちになりました。しかも私は自宅隔離でずっと家に居て。「え?」って。親はイタリアやスペインの医療が限界を迎えているというニュースを日本で観ていたみたいで、もし新型コロナウイルスに感染した時、現地の病院に行かれるのが嫌だと言っていました。なので確かに、日本の方が感染したときには安全かもしれませんが…「新型コロナウイルスって存在するの?」という状況に見えました。みんなの行動も。

R:あまり重く受け止めていないように見えましたね。

T:スペインでは学校は休みになっていたし、国から家にいるよう指示があったので外に出る理由もない、という状況だったんだと思いますが…全然違う、という感じでしたね。出されている指示も国からだったり州からだったりするので…州ごとに一律で店をしめる指示があったり、国単位で動いている様子だったので余計に違うと感じるのかもしれません。

– 滞在先で出来たお友達とはお別れはできましたか?

R:全く出来なかったですね。したかったんですけど、ホストファミリーから家から出てはいけないと言われてしまって…

T:実は、警察が街を巡回しているという噂が出回っていたんです。歩いている人を捕まえたりするという話があって。本当だったのかはわからないんですが…なのでむやみに外へ出たらダメだよね、ということになって。しかもその友達にも外に出てもらうことになる訳じゃないですか。学校もお休みなので、会う為にわざわざ外に出てきてもらわなきゃいけなくなるからって…会えなかったよね。

R:うん、会えなかったね。それがちょっと辛かったよね。

T:私のルームメイトのうちの一人も、家族に連れられて帰国しました。帰国する前はオランダ人、ナミビア人、メキシコ人の子が私の他に居たんですが、オランダ人の子の家族が一度3月に遊びに来たんです。わたしとしては、その子の家族が飛行機に乗ってきて、私たちの部屋に泊まりにくるっていうのがちょっと嫌だったんですが、その子から「家族とずっと約束していたことだったので連れてきたい」と言われて承諾したら、そのまま親御さんが「このままここに居させられない」と言ってその子を連れて帰ってしまいました。なので途中からは3人で暮らしていました。それが3月14日のことですね。いきなりの別れでした。

– 許可証などがあれば外に出られるというシステムではなかったんですか?

T:私たちがいた時はまだ許可証がいらない時期だったんです。結局何をしたらいいのか、してはいけないのかが定まっていなくて、はっきりしていなかったんです。なのでスーパーと薬局は空いているし、外に買い物の為に出られるけど、それ以外のお店は閉まっているみたいな。

R:散歩は良かったよね?散歩とスーパーは良かったはず。

T:良かったのかな?散歩が良かったのか私にはわからなくて。

R:良かったと思う、散歩と、スーパーへ行くのととスポーツをするくらいは良かったはず。

– あまり定まっていなくてふわっとした感じだったんですね…

T:ただ、わざわざ外に出ようとも思わなかったんです。こんなに長引くと思っていなかったから。わざわざ今外に出なくても、食料の買い出しくらいしか外に出る理由はなかったので。散歩は今しなくても、収まったらできるよねとか、これがおさまったら海行けるよねと思っていたので、そこまできつくはなかったですね。

– 長引くと思っていなかった…なるほど。

T:大学も再開すると思ってたよね。このまま休みだったらイースターまで休みになるね、だからイースターの休みが終わったら大学また始まるのかな〜なんて思って生活していました。

R:そう。だから再開すること前提で生きてたよね。

– 「帰国」はまだ頭になかったってことですよね。

T:無かったんですが、それは感染者の数が本当に少なかったからなんです。そこから数日の間に一気に増えたので。少なかった状態だからそう思っていたけど、そんな急に増えるとも思っていなかったです。びっくりって感じです。

R:もう早すぎてついていけないよね。

T:シェアハウスを一緒にしていた残りの二人は今もスペインに残っているんですが、楽しそうに暮らしています。新型コロナウイルスにも罹らず、元気です。もう一人、仲が良かった子でフランスの大学に通っているニューカレドニア人の子がいたんですが、この子も交換留学でスペインに来ていて、私たちと同じように大学から帰国指示が出ていたんですが、強制ではなかったのとフランスの方が危ないということで帰国を2週間見送る形で大学に待ってもらうという選択をしていました。2週間で状況が良くならなかったら帰国するという話で。その子もまだスペインにいます。

– そういう話を聞くと、より滞在していたかったという思いが募りますね。何か心残りはありますか?

R:私はスペイン語しか話せないホストファミリーと生活をしていて、最初はスペイン語が聞き取れなくて、コミュニケーションを取るのにストレスがかかっていた時期があったのですが、1ヶ月経つと慣れてきて、これからもっとスペイン語を頑張ってコミュニケーションを取れるようになるぞと思っていた矢先に帰国となってしまったので、何もできずに、頑張りきれずに帰ってきてしまったことが心残りです。授業も途中で終わってしまったし、友達ともどこへも行けなかったので…

T:もっと旅行へ行きたかったです。せっかくヨーロッパに居たので、日本から行くより金銭的にも時間的にも気軽だったはず…もっと旅行がしたかったですね。あとはルームメイトとももっと仲良くなりたかったです。みんなで家に居て、結構密になったので(笑)。過ごした時間は短かったですが、半年間はみんなと一緒に暮らせる予定だったので…。現地のスペイン人の学生とも、これから一年あるしと思いながら過ごしてしまったのが心残りですね。全部を一年あるという計画で見ていたから、後回しにしていたこともあったので、そんなことを思わなければ良かったな…と思ったり。

– ありがとうございました。質問は以上です。

以下、Tさんからのコメントです。

「最後まで読んでいただいてありがとうございます。この世界的パンデミックの影響の一部を少しでも多くの人とシェア出来たら嬉しいです。これによって、私達留学生は、普段ならできない貴重な経験をすることになりましたが、これからも何事にも前向きに進んでいきたいと思います。まだまだ大変な日々が続きますが、皆さん一緒に頑張りましょう。」

以下、Rさんからのコメントです。

今回コロナウイルスの影響で留学が一旦取りやめとなってしまい、帰国当初は正直現実を受け入れられない自分がいました。これからどうすればいいのか、先が見えず苦しい思いも味わいました。しかし、日本で生活をしていく中で気持ちも徐々に変化していき、この状況を受け入れて今回の留学を前向きにとらえていきたいという思いが強くなりました。短い期間ではあったけれど人との出会いや、得られたかけがえのない経験、学びがあります。
これらを終わった事として無駄にしないよう、日本の生活で是非活かして今後の生活をより充実させていきたい。そしてまた状況が良くなった時には、再びスペインに遊びに行けたらいいなと思っています。
note内マガジン「わたしたちの留学と新型コロナウイルス」では新型コロナウイルスの影響により、留学やワーキングホリデーを切り上げて帰国せざるを得なかった方や現在も滞在先で奮闘されている方の体験談を募集しております。募集用のフォームをご用意しておりますので、ぜひご活用ください。

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