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古き街並みのChristcharch

世界にはものすごく平らな世界があったりします。
Christcharchはものすごく平らでした。街なのに平らなんです。どこまでもどこまでも、平らに街が広がっているのです。目に見える建物や公衆電話も、遠くに小さくあるのが見えるのですが、歩いても 歩いても近づけないんです。狐に化かされているのかと思うくらいでした。


がっしりした体格のくせに、女の子みたいに長いクリンとした睫毛のモルガン。私がChristchurchに出発する朝、彼は残念そうに「もう行ってしまうの?」と言った。そして、その後、大きく手を広げて

「友よ。最後にもう一度抱きしめさせて」

と言って、サヨナラのハグをした。さよなら、モルガン。私、また戻ってくるよ。また、たくさんお話しようね。

ベランダからいつまでも手を振るモルガンをバックミラーに、私は一路Christchurchへ出発した。KaikouraからChristchurchまでは車で、2時間ほど。そんなに遠くはない。今夜からしばらくは、私のホストマザーのお姉さんのお家にやっかいになることになっていた。Christchurchは平らでだだっぴろい。街の地図を持たずに、果たして目的の家まで辿り着くことが出来るだろうか。

Christchurchに近づくにつれて、景色が英国調に変わっていく。Christchurchに入ると、辺りの雰囲気はすっかりどっぷり英国になってしまった。しかし、広い。そして平らだ。どこからが街なのか、さっぱりわからない。視界に入る公衆電話だって、遠いったらありゃしない。見えているのにとても小さい。

Christchurchには至るところに教会がある。ひじょうに美しい建物で、これが厳かに神の声に耳を傾けるところであることを忘れてしまう。美しいので、神様とは関係なく眺めていたくなってしまうのだ。今までの旅に、このように古いヨーロッパ調の建物にはお目にかかれなかった。Christchurchの人々は、こういった古い建物に対して敬意を抱いているというのがそこはかとなく感じられる。

しばらく街をうろうろしたが、夕方ついにリンダのお姉さんとの対面の時がやってきた。リンダのお姉さんの名前はプリシラ。スラリとした赤毛の美人だ。

私達は、会ってすぐに一緒に夕食を取ることになった。

実は、ホストマザーのリンダは料理がうまい。リンダの作った料理はいつも美味しい。でも、プリシラは別だった。プリシラには、先天的にグルタミン酸を破壊する能力があるのだ。いや、単に味覚が狂っているだけか。その日の夕飯は、得体の知れないパスタだった。いや、パスタ自体は美味しそうに見えた。付け合せの野菜は、白いにんじんみたいな野菜が丸ゆでされているものが添えられている。それと、マッシュポテト。私はマッシュポテトが好きだ。だから一番最初に食べる。いっただっきまーす!ぱくっ!あれ?

皿が空になるまで、私の中で、この問いかけは終わらなかった。ぱくっ。あれ?ぱくっ。…あれー?(おいしくない…)

でも、出されたものはすべて食べるのが私の信念だ。すっかり平らげた後、プリシラが聞いた。

「おかわりする?」

私は、こう聞かれたとき、断わるのは好きじゃない。お腹がいっぱいだったら別だが、お腹がいっぱいでもないのに、お断りするのは忍びない。私は「はい」と答えた。

後は、満腹中枢が刺激される前に平らげるのがコツだ。女とは思えない勢いでバクバクバクッと食べてしまう。ふぅ、よかった。満腹を感じる前に食べることが出来たぞ。

「のりこがそんなに食べるなんて知らなかったわ」

プリシラは嬉しそうだ。私は徐々に満腹中枢が刺激されてきて、動けなくなりつつあった。

翌日、私はChristchurchの図書館へ出かけた。街がでかいだけあって、図書館もでかい!すごいなー。都会だなー。としばし田舎者の気分を楽しむ。ここは便利で人もそんなにいなくて、きれいな街だけれど、やっぱり私のスタイルじゃないな。野菜は畑から取ってくるんじゃなくて、買わなくちゃいけないし、誰も長靴で歩いている人なんていないもの。

図書館でしばらく過ごした後、なんとなく昨日気になった教会に入ってみた。観光スポットとしてにぎやかなこの教会には、各国からの観光客が出入りしているのが見える。コマーシャルな場所はキライだけれど、中がどんなふうになっているのか見てみたい。正面玄関から教会に入る。

突然、正面から清らかな歌声が流れたきた。

ちょうど礼拝の時間だったのだ。小学生くらいの少年達が、神父さまの指揮に合わせて歌を歌っている。なんと、清々しい声なんだろう。なんて美しいメロディなんだろう。私はクリスチャンじゃないが、教壇の前の椅子に腰を下ろした。少年達は、白い衣を身に纏い、一生懸命歌っている。ウィーン少年合唱団のように端正な合唱である。少年の頃の声は、本当にきれいな澄んだ声なんだなぁ。それがどうして大人になると、あんな声に変わっちゃうんだろう。

神父さまのお説教を聞いて、結局礼拝が終わるまでいてしまった。礼拝が終わると、小さな男の子が袋を持って、出口に立っている。素通りする人もいるし、幾らかのコインを落とす人もいる。私がたった2ドルをあの袋に入れるだけで、彼らが居心地よく教会での生活が出来るのであれば、安いものである。私はたくさん過ぎて失礼にならないくらいのコインを袋に落とした。少年が、ありがとう、と小さな声で言った。

私は帰路についた。
もちろん、道に迷ってかなり先の反対方面へ行ってしまったことは、言うまでもない。

(つづく)


この日の日記はとりとめもない印象ですね。街が平らで広くて脳内も散漫になったと思われます。ドライビングセンスとか言ってて最後は超迷ってますからね。

広くて平らなところは苦手です。
東京ビッグサイトとか、まじで何もかもが遠い。かつて、ビッグサイトでお仕事をしたことがあるのですが、ビッグサイト広域での複数箇所開催だったので何もかもが遠くたどり着くのにも時間がかかり、打ち合わせもビッグサイト内だったりして、心から「セグエイくれ」と願いました。

そのセグエイももはや販売中止。
未来だと思っていた道具が、いつの間にか過去の遺物になっているとは、時代が私を通り過ぎたかのような気持ちになります。

次の日記はガレージセールとハイキングのお話です。

#お風呂のアヒルが苦手な人がいるように #巨大なものが苦手な人がいるように #広くて平らが苦手 #これでも前世は毛むくじゃらのバイキング 


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