気が合いますね。
もう20年以上前のことだ。
私が地元を離れ千葉県の寮母さんがいる社宅に引っ越して間もない頃だった。
休みの日、ドンドンとドアがノックされる。
私は「またあいつマンガを借りに来たんだな」と職場の友人を想像しながらドアを開けた。
すると20代くらいの知らない男性が立っているではないか。
最初、要領を得なかったが男性はなんでも私の布団が見たいという。
「布団が痛んでいないかチェックさせてくれ」というではないか。
どうやら布団のリフォームをしている会社らしい。
「はあ、どうぞ」
といって部屋に入れる。
「寮長の許可は取っているのですよね?」と聞くと
「もちろんです」と答える。
もう一人、専門的な知識を持ったスタッフが来るので少し待ってくださいと言われ部屋で世間話をしていた。
さて、お気づきの方もいると思うが、この二人組は悪質な訪問販売業者だった。
寮長に許可を取っているというのもウソで新人の何人かはやられたらしい。
私は偶然にも助かった。
なぜか?
私は短い期間だが地元の空手道場に通っていたことがある。
その時、門下生に配られたオリジナルのカレンダーを部屋にかけていた。
最初に来た若い男性はこのカレンダーを指さし「これ、僕も持ってます!」と言うではないか。
「ほーん」という言葉を飲み込んだ私はえらいと思う。
「どこで買ったんですか?」と聞いてみた。
すると「近くの百貨店で買いました」と言う。
だから私はこう言ったんだ。
「気が合いますね」と。
しかし全国展開だと!
知らない間に有名になったものだ。
んなわけない。
10分ほど経つともう一人、年配の男性がやってきた。
その男性は案の定「買い替えた方がいいですよ」といい、その理由を熱心に語っていた。
私は話を聞くふりをしながらずっと断る事を考えていた。
結局、「いりません」と言ってお帰りいただく。
「無駄にした時間を悔やむがいい!」と思いつつ、
「訪問販売こわ!」というのが社会人1年目の感想だった。
こしあん
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