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顧客起点での製品開発のファーストステップ『ユーザー調査』

日々生活をする上で、皆さんもたくさんの商品を目にすると思います。これら商品がどのようにして生み出されていると思いますか?圧倒的なアイデアマンの直感によって生み出されている?
もちろんそんなケースもまれにあるとは思います。ですが、おそらく大半の商品が膨大な調査と試行錯誤の末に生み出されています。
かくいう私も駆け出しのブランドオーナーとして、約1年間メンズコスメ開発のために、調査や検討を繰り返してきました。そんな私の経験を生かし、本記事では、顧客起点での製品開発のファーストステップとして非常に重要な『ユーザー調査』についてまとめます。ブランドオーナーだけでなく、企業の商品開発や営業担当の方も必見の内容です!


1.商品開発のプロセス



■コンセプトの決定


皆さん、もし今ご自身で何か商品を開発するとなった場合、どんな商品を作りますか??とにかく自分が作りたいモノを作る!!もちろんそれも大事です。モノづくりは作っている本人が一番ワクワクしていないと継続できないし、絶対に成功しないので。ですが仮にそのように商品を作ったとしても、使ってもらう人に良いと思ってもらえないと意味がありません。
とても当たり前のことを言っていますが、実はこれが意外と難しい、、、
私自身も約1年間、0から商品開発を行ってきましたが、つい自分の感覚で検討を進めてしまっていたことが多々ありました。
このような事態を防ぐために、一番最初に注意しなければいけない事はとにかく顧客視点に立った、商品コンセプトを設計するということにあります。
とことん顧客に寄り添い、そして自分自身を顧客に憑依させ、奥深くに潜む欲求を洞察する。このようなプロセスを経て商品コンセプトを設計していきます。では、具体的に「顧客視点に立った商品コンセプト」というのはどのようにして決めていけばよいのでしょうか?その具体的な方法が、本記事のテーマでもある「ユーザー調査」です。以降でご説明してきます。


■ユーザー調査


顧客視点に立った商品コンセプトの設計についてご説明する前に、ユーザー調査の手法について、簡単にご説明いたします。ユーザー調査には大きく分けて「定量調査」、「定性調査」二つの方法がございます。定量調査とは、その字からも分かるように、数量を把握するための調査になります。例えば自社商品に満足している人は全体の〇%など。この定量調査はある仮説を検証するときにアンケート調査などでよく使われる手法になります。次に定性調査とは、個人の感情や行動など、数値化することが難しいものを把握するための調査手法となります。本日ご説明する顧客視点に立った商品コンセプトの設計については、特にこの定性調査が重要となります。顧客から発信される言葉や文章にアンテナを張ることで、顧客ニーズを適切に捉え、商品コンセプトを決定していきます。




2.ユーザー調査の進め方



では、具体的どのようにユーザニーズを調査していけば良いのか、そのファーストステップとして、実際に私がBBクリームを開発する上で行った調査について、デスクリサーチデプスインタビュー、大きく二つの方法をご紹介します。


■デスクリサーチ


まず一つ目がデスクリサーチです。いわゆるインターネット調査のことです。デスクリサーチは無料もしくは低コストで手軽に調査を行うことができるので、調査ハードルが低いという特徴があります。そのため、ユーザーニーズの仮説を立てる上では、まずデスクリサーチにて、網羅的に情報を集めることがオススメです。網羅的に集めると言っても、ただ闇雲に調べているだけでは、膨大な時間を消費してしまうだけであり、とても効率的とは言えません。ですので、まずはご自身が開発をされる商品カテゴリに絞った上で、次の二つの方法で調査してみてください。尚、ここではフワッと「この商品を使ってる人は、こんな不満や課題を持ってるのか」とイメージする程度で構いません。


🔹口コミをチェック
まず一つ目は自身が開発するプロダクトカテゴリーの口コミをチェックするという方法です。皆さんもご自身で商品を買われるときに口コミはチェックされると思いますが、ユーザーニーズを把握する上でもこの口コミはネタの宝庫です。例えば、以下はとあるBBクリームに対するユーザーの口コミですが、ここから次のようなニーズの仮説が立てられます。

・保湿機能のあるBBクリーム?
・敏感肌の方でも使えるBBクリーム?


🔹商品の関連キーワードをチェック
次に検索キーワードをチェックするという方法です。私の場合はラッコキーワードというサービスを利用しました。このサービスを用いて自身が開発する商品がどういったキーワードと一緒に検索されているのかを確認してみましょう。例えば「メンズBBクリーム」というワードが、どんなキーワードと一緒に検索されているかを調べた結果が以下となります。ここから次のようなニーズの仮説が立てられます。

・素肌のような自然な仕上がりのBBクリーム?
・マスクに付かないBBクリーム?
・汗で落ちないBBクリーム?

少し課金をすれば、以下のように関連キーワードの月間検索ボリュームまで調べることができるので、ユーザーが特にどのようなニーズや課題を抱えているのかを濃淡をつけながら調べていくことができます。


冒頭お伝えしたように、これらの調査を踏まえて、まずはユーザニーズについてざっくりで構わないので、仮説を立てていきます。この仮説を持った状態で次のデプスインタビューに移っていきましょう。



■デプスインタビュー


いわゆる1対1で行うユーザーヒアリングです。デスクリサーチを通じてある程度ユーザニーズを想定することができましたが、デプスインタビューでは、その背景にあるユーザーの心情・欲求に、より深くアプローチしていくことになります。正直に申し上げると商品開発を行う上では、先ほどのデスクリサーチより、このデプスインタビューが圧倒的に重要です。ユーザーの生の声を聴くことは商品開発を行う上ではもちろん、開発後においても商品の改良や新たなラインナップを追加する上で非常に大切です。また、販売をしていくにあたっての、PRやキャッチコピーなどを考えていく上でも重要な示唆を与えてくれるものとなります。ですので、本日はファーストステップとしてのユーザー調査という観点でまとめつつも、開発後や販売においても活用できるインプットとなるように意識してまとめました。では、デプスインタビューの具体的な進め方について、見ていきましょう。


🔹目的を設定
目的なきヒアリングは、ただやった感を出すだけの自己満足に過ぎません。当然ですが、ヒアリングによって大きな効果を得るためには、まずこの目的を設定することが非常に大切です。本日のテーマにおいては、「ユーザーニーズを把握する」ということが目的になりますが、その他にも「自社商材に対する評価を把握する」、「競合分析」などが目的となる可能性もあるかと思います。まずは、ご自身がヒアリングを通して、次のアクションに向けた何を明らかにしたいのか、その目的を明確にしてください。


🔹ターゲットを想定する
次にターゲットを想定します。ここで、ターゲットを想定する上で必要となる予備知識として、セグメンテーションについて少しだけご説明させてください。(すでにご存知の方は読み飛ばしください。)セグメンテーションとは、ユーザーをなんらかの切り口で分類し、特定の属性ごとに分類することを言います。これによって「〇〇な属性の方は〇〇なニーズがある」といったことを分析・把握していくことができます。よく一般的に使われる代表的な切り口としては、以下のようなものがあります。

・ジオグラフィック変数(地理的変数)
 ➡世界や日本の地域・地方、気候、人口密度、文化など
・デモグラフィック変数(人口動態変数)
 ➡年齢、性別、職業、所得、家族構成など
・サイコグラフィック変数(心理的変数)
 ➡消費者の性格、価値観、ライフスタイル、趣味など

以上、簡単にセグメンテーションについて、ご説明しましたが、ジオグラフィックとデモグラフィックは何となくイメージできるけど、サイコグラフィックってイメージしづらくないですか?具体的にどうやって分類したらいいのか分からないという方も多いのではないかと思います。なので今回は実際に私がメンズコスメを開発する上で行った方法について、具体例を交えながらご説明します。まず、どのようにセグメントを切るかという点については、その切り方によって、ニーズが変わるような切り方を意識してみてください。例えばメンズコスメの場合は以下のようにセグメントを切って、ユーザー層を分けました。なぜこのように分けたのか?それは、日々のスキンケアや、メイクのレベルの違いによって、ユーザーの抱えているニーズが異なるということが、ヒアリングを通して少しずつ明らかになってきたらからです。

これだけだとイメージがしづらいかと思いますので、具体的にどのようなニーズの違いがあったのか、レベルの異なる2人のユーザーを例にご説明します。

〇 ユーザーA
・デイリーケアレベル:③
・平日メイクレベル:⑤
・土日メイクレベル:⑨

ユーザーAはスキンケアレベルが比較的高いが、メイクはしたことがないという方です。この方は、普段から丁寧にスキンケアをしているため、肌をより綺麗に見せたいという思いがあり、BBクリームに興味を持っているものの、男性がメイクすることに少し抵抗感があり、メイクしていることがバレたくない。また、朝そんなに時間も取れないので塗るなら、サッと済ませたいというニーズがありました。
〇 ユーザーB
・デイリーケアレベル:④
・平日メイクレベル:⑧
・土日メイクレベル:⑫

ユーザーBは、スキンケアも毎日非常に丁寧に行っており、平日、土日問わず、フルメイクをしているという方です。この方は、パーツによってメイクを使いわけ、その工程自体を楽しんでおり、時間はかかっても良いから、とにかく綺麗に仕上げたいというニーズがありました。

このように、異なるニーズを持っていると想定される属性でセグメントを切ることによって、どういったターゲットがどんなニーズを抱えているのかということを解像度高く、明らかにしていくことができます。

ただ、一点ご注意いただきたいのは、初めから非常に細かいメッシュでターゲットを想定する必要はありません。と言うより、おそらくできません。ヒアリングをしていく中で、少しずつターゲットの解像度を高めていくというイメージで大丈夫です。


🔹ヒアリング事項を設計
ターゲットを想定することができたら、次は実際にヒアリングする項目を考えます。ユーザーにヒアリングできる時間も限られているので、時間内でしっかりと聞きたいことが聞けるよう、あらかじめヒアリング事項は精査した上で決めておくことが大切です。その上で注意すべき点は次の3つです。

□ 仮説を立てる
目的なきヒアリングは意味がないと言いましたが、仮説なきヒアリングも同じように意味がありません。まぐれ当たりで、思わぬニーズを発見することが百に一つぐらいあるかもしれませんが、再現性高くヒアリングによってニーズを明確にするためには、仮説を立てることは必須です。例えばデスクリサーチにて、「自分の肌の色に合わない」という不満があることが分かっていたら、「自分の肌と色が違うことで、バレてしまうのが嫌なのではないか?」というように。

□ ライフスタイルについてもヒアリングする
ヒアリングでは、ニーズを把握するための質問だけではなく、ライフスタイルなどについても、可能な範囲で質問するようにしましょう。これは、先ほどご説明したターゲット像を明確にするために必要な質問です。

□ 定期的にヒアリング項目を見直す
ユーザーニーズやターゲット属性の解像度が上がるにつれて、ヒアリングする内容ももちろん変わってきます。なので、ヒアリングによって一定の効果が得られたタイミングなど、定期的にヒアリング項目は見直すようにしましょう。


🔹対象者を募集
ユーザー調査の準備をここまですることができれば、実際にヒアリングを行う方を募集します。対象者を募集する方法としては、大きく3つあります。

□ 友人や家族、同僚など身近な人に相談
まずは気軽に相談することができる友人や家族、同僚にヒアリングしていきましょう。ただ一点、身内のバイアスがかかってしまうということは注意が必要です。

□ TwitterやInstagramなどSNSを活用
SNSで交流のある方にヒアリングをお願いするのも一つの方法です。SNSでは、善意でヒアリングを引き受けてくださる方も多くいらっしゃいますが、その場合でも、相手の方に対してgiveの精神を持つ事を忘れないようにしましょう。私の場合、商品の無料お試しなどを提供することで直接お話を聞かせてもらえるようお願いしました。

□ インタビューのプラットフォームを活用
こういったサービスは有償となってしまいますが、一方でヒアリングをする前に対象者をスクリーニングするための事前質問ができるので、ある程度ターゲット像が明確になってきたタイミングで活用することをオススメします。実際に私が使ったサービスが「ユニリサーチ」です。以下がその応募画面になりますが、事前質問としては、スキンケア・メイクレベルを問う質問をしました。この質問によって、先ほどのセグメントでどこの属性に分類されるかを、あらかじめ把握することができるので、ヒアリングする内容も明確になります。


🔹ヒアリングの実施
ヒアリング対象者を集めることができたら、いよいよ実際にヒアリングを行います。実際にヒアリングをする上で注意すべき点は、次の3点です。

□ アイスブレイクは必須
特に身内以外の方にヒアリングをする場合は、ヒアリングに入る前のアイスブレイクは必須です。お互い初対面であれば、対象者の方は多少なりとも気構えてしまいます。そうなると本音を聞き出すことができないという恐れもあるので、アイスブレイクはするようにしましょう。このあたりは慣れになってくるので、やっていきながら自分なりのアイスブレイク方法を見つけていきましょう。

□ 回答を誘導するような質問はしない
間違っても回答を誘導するような質問をしてはいけません。ニーズを調査する上では、ユーザー自身から発信される言葉にこそ強いインサイトが含まれています。なので、もし回答を誘導してしまうと、そこまでユーザーが気にしていない事なのに、それを真のユーザーニーズだと勘違いしてしまう可能性があります。例えば、ユーザーが「今使っているBBクリームが肌の色に合わなくて」と言ったことに対して、「それはつまり色が浮いてバレてしまうのが嫌ということですか?」といった質問をしてしまうイメージです。そう聞かれると、バレるかバレないかであれば、バレない方が良いという程度であっても、「はい」と答えて、それをニーズだと勘違いしてしまうリスクがあります。

□ 行動にフォーカスする
ユーザーの行動にフォーカスすることがニーズ発見の一番の近道になります。私たち人間はいくら自分の事であっても、どんなニーズや不満を持っているかということをうまく言語化することができません。一方で実際に取った行動というのは、その人自身が潜在的に持っている欲求に基づいて生じた事実であることに間違いないので、行動にフォーカスすることが重要です。例えばBBクリームを塗った後に必ずパウダーをつけているという方は、テカるのが嫌だという不満を持っているのではないかという仮説を立てることができるイメージです。


以上がデプスインタビューの具体的な進め方です。



まとめ

以上、今回は顧客起点に立った製品開発のファーストステップ『ユーザー調査』の方法について、まとめさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?この記事が少しでも皆さんのお役に立っていれば、幸いです。
最後に一つだけお伝えしておきたいことは、あくまでもこれはファーストステップということです。一通りのユーザー調査を終え、一度商品コンセプトが決定すれば、それで完了ということではありません。もちろん販売開始後も、自社商品に対する顧客理解は必須なので、ブランドオーナーや商品開発、営業担当の方にとって、ユーザー調査はいつまでも付きまとってきます。ですが、本日お伝えした内容を意識することで効果的にユーザー調査を行うことができると思いますので、ご自身で実際にされるタイミングには、ぜひ見直していただけると嬉しいです。
また、本日の記事ではユーザー調査ということに主眼を置いて、まとめさせていただきましたが、お伝えした調査方法はユーザーニーズを把握するためにしか使えないというわけではありません。ブランドを立ち上げる上で必須の市場調査や競合調査においても活用することができます。そのあたりの内容についても、私の経験を踏まえて、今後触れていきます。また、👇Twitterでは、メンズコスメブランドの開発状況や、この記事のような、ブランドを立ち上げる上で学んだ内容を発信しているので、ぜひそちらもフォローして、チェックしてみてください!


では、また!!


WOLG エヌ






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