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【遊びの効能】カップスタック療育 積みあがる過程と心の調整

ハラハラドキドキすることは好きですか?

毎日の生活の中でハラハラドキドキの場面に出くわすと、「よっしゃ!やったるで!」と俄然張り切るチャレンジタイプの人と、「どうしよう…」とチャレンジに慎重なタイプの人といると思います。どちらが良い悪いではなく、それぞれの頑張り方があって、それぞれの人が手を取り合って生きていくために必要な要素って何だろう。この問いを、このカップスタックで学びましょう。

1.カップスタックどんな遊び?

カップスタック。均等な大きさのカップを積み上げて構成していく。単純明快な遊びです。幅広い年代の子供たちに受け入れられる柔軟性の高い遊び。大人から幼児まで楽しむことができます。

準備するものはこのカップブロック。こちらは教材として販売されているものですが、100円ショップの紙カップやプラカップなどでも代用できると思います。

私たちが療育で子どもたちと作る時には仕上がりを写真や見本を見てはじめにイメージします。ただ、見本を見てしまうと「その通りにしないといけない」と考えてしまう子もいます。だからその子の考え方をまず知っておくことが大切です。

/お手本があったほうがとっかかりやすい子/お手本なく組み立てる方がはかどる子/1回目は見ていたい子/自分の手は使わず大人を介して遊びたい子/大人に積んでもらうことで見て満足する子/  など様々です。遊びのとっかかりにも個性が出ますね。

2.各年代による遊び方の違い色々

年少さん位の発達段階の子のグループで作るときには上に上に、高ーく積むことを楽しむ子が多いです。空間の広がりを構成することよりも、いかに高く積み上げるかに興味がわきます。

年中さんくらいの発達年齢の子たちと作ると、高さのほかに横への広がりが出てきますが、それぞれ作りたいものが違う場合が多く、チームより単独での作業となることが多いです。その際には大人がそれぞれの子のイメージを理解して、サポートしながら作成していきます。

年長さんのグループで作る時にはそれぞれ独自のルールが出来上がります。例えば色で担当制を作るチーム。動きで担当制を作るチーム。おおよそ役割分担を決めることで子供たちは安心して取り組めるようです。対戦なども盛り上がります。

小学生以上になると大人は介さずとも自分たちでイメージを共有して作成していきますが、難解パターンに陥ることもあり、完成するまでに時間を要すことが多いです。

こうしてそれぞれの段階での個性を発揮しながらコツコツと積み上げるカップタワー。今はスポーツ競技としても楽しめるそうです。

3.カップスタッキングで育む「調整力」

調整力① 【体・特に手元】

まずは体の面から。この遊びは微細な力の調整が必要になってきます。手元を見てゆっくりゆっくり。力任せに乗せるとすぐに倒れますし、今まで積み上げてきたものに手がぶつかろうものならひとたまりもありません。ガラガラとナイヤガラの滝のように崩れます。「そっと置く」「ゆっくりのせる」などの力加減の調整が必要です。


調整力②【距離感】

自分とタワーの立ち位置。背中とタワーの距離感。人と人との距離感。カップとカップの距離感。これが図れないとすぐにぶつかってしまいます。子供たちは、はじめは手足がぶつかり倒しますが「今のは体が近すぎたね」と原因を言葉にして理解していきます。次からは倒したくない!とさらに集中力が増します。どうしてもぶつかってしまう子は立ち位置に印をつけるなどの工夫も必要です。

調整力③【ココロ】

誰かが壊してしまった時、その時が子供たちの成長のチャンスです。「あーあ!」と残念がります。その悲しい!悔しい!気持ちを抑えていては次には進めません。そしていったん「自分自身で」「大人と一緒に」「仲間と共に」今の気持ちを共有します。そこから次に向かうまで。ここがドラマなのです。

なかなか先に進めないA君。「もうやらない!」とすねて部屋を出て行こうとします。そしていったんクールダウン。刺激の少ない部屋に入って気持ちを吐き出し次に向かう準備をします。その場から離れないと自分を保てない。そんなこともあります。

倒してしまった人を責めてしまうB君。「お前のせいだ!!!」と強い口調になってしまいます。それだけB君には情熱があったのです。彼の熱い思いをいったん受け止めますがその言葉の矛先を「がんばるエネルギー」に変換していきます。ぶつけ合うエネルギーを「ことば」にして整理整頓してあげましょう。とげとげした言葉を使ってしまったら、振り返る時間を作り、前を向けそうな言葉の表現に変換してみましょう。そうすると言葉で思考が整理され、後押しとなり次に迎えます。

そして自分が倒してしまったc君。「僕のせいで」と活動が消極的になりがちです。でもその場から逃げていないのであれば近くにいる人がサポートしましょう。心が立ち直り次のカップがつめるまでは「大人の手が僕の手」でもいいでしょう。一緒に、ゆっくりと立ち直れるはずです。

ここで大切なことはA君B君c君ともに「時間はかかるが、かけすぎない」ことです。気持ちの切り替えに時間がかかる子たち。でもかけすぎると活動の存在意義すら忘却の彼方…という事もあります。メリハリが必要。

4.達成すること

どの子も往々にして頑張りたいものです。「もうやらへん!」と言っている子は「もう失敗して傷つきたくない」という気持ちが表現できないから「やりたくない」になっていることが多くあります。そう。こどもたちの心は失敗で傷つくのです。だからこそ、成功体験を積み上げたい。

大人の役割は彼らの気持ちが「失敗してもいい。次がんばればいい」に向かうようにサポートしていくことだと感じています。

あきらめずに達成して積み上げた時、こどもたちの「自信」も積みあがっていることに気が付きます。

こうして悲喜こもごもに調整力が試され、調整力を鍛えられるカップスタッキング、仕上がった時の喜びは計り知れません。

ジャンプしちゃうくらいうれしい!!!!

こうして乗り越えたこと、頑張れたポイントをそれぞれで伝えあいます。

「お友達も先生も僕の事見てくれていたんだ!」

ぼくたちのがんばりを振り返り分かち合います。結果ではなく過程を認め合います。少なくとも私たちの療育ではここを重要視しているのです。

この遊びはかなりの集中力を必要としますので、遊んだ後はゆっくりとお休みしてクールダウンしてくださいね。この時期はあまーいアイスクリームなんて、いいですね。








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