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人に教えたくない店

席数25ほどの店内には、2つのテレビが備え付けられている。

店の壁にある黒板に書かれたメニューの中から、イワシと梅の煮付けを注文した。

ビールはもうすでに目の前のテーブルの上に置かれている。一口含むと、からんと音がして新しい客が店に入ってきた。

隣の椅子に座る女性に、今日あった面白いことを話すと、負けじと自分が遭遇した面白かったことを話してくる。

カウンターの奥にいる店主は、一見して無口そうに見える。店員が取った注文の紙を時折、鋭い眼光で睨んでは、時に体を揺らしながら鍋やフライパンを振っている。
テレビのある店は、もしかしたら店主が客と喋りたくないのかもしれない。

頼んだイワシと梅の煮付けがやって来た。

ありそうで食べたことのなかった付け合わせだが、箸で口に入れると、味のあるイワシに梅の香りがふんわり重なって、ここは間違いない店だと確信した。

その後も、チキンのきのこソース、春菜の天ぷらなどを注文したが、どれも絶品だった。

まったく素晴らしい店だ。

感慨に耽っていると、店はすでに満席だ。

混雑して入れないと嫌なので、店名は伏せておく。

池上線沿線の、五反田と蒲田から離れた場所で。


会計:二人で一人3〜4杯と料理3〜4品で8000円ほど。


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