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保護者からスクールカウンセラー・教師に聞いてみたい10の質問! 〜子どもの悩みと親の悩み、ざっくばらんにお話しします〜

2023年3月30日にcotree主催で開催した「スクールカウンセラーから見た教師✕教師から見たスクールカウンセラー」初川久美子先生✕曽根朋之先生 講演会。スクールカウンセラーと教師の双方から同時にお話を聞く、とても貴重な機会となり、大きな反響をいただきました。

スクールカウンセラーが日本に導入されて、もうすぐ30年が経とうとしています。まだまだ保護者の世代では「私が子どもの頃にはいなかった」「子どもの頃にいたかもしれないけれど、話したことはないのでよく分からない」など、あまり身近に感じられない方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、「スクールカウンセラーから見た教師✕教師から見たスクールカウンセラー」セミナーの番外編として、スクールカウンセラーの初川さんと教師の曽根さんをお迎えして、保護者の視点から「子どもと親の悩みについて」「スクールカウンセラーと教師について」気になることをざっくばらんに質問にご回答いただきました。ぜひご覧ください。


登壇者プロフィール

初川久美子(はつかわ・くみこ)

早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医と「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員や保護者、専門家を対象に研修・講演を多数行っている。東洋館出版社 編『ポスト・コロナショックの学校で教師が考えておきたいこと』において「ポスト・コロナショックにおける『いじめ』について考える」を分担執筆。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

曽根朋之(そね・ともゆき)

神奈川県生まれ。横浜国立大学教育人間科学部を卒業後、川崎市の公立小学校に勤務。2018年より現職である東京学芸大学附属竹早小学校に着任。2022年度は内地研修という形で東京学芸大学教職大学院に通っている。国語教育を専門にし、電子書籍を扱うなどの多様な「読むこと」の実践や、物語の創作文など「書くこと」の確かさと豊かさについて考える研究をしている。『「まったく書けない」子の苦手を克服! 教室で使えるカクトレ』低・中・高学年(東洋館出版社)を監修・執筆。

子どもの悩み、親の悩み10の質問

1.スクールカウンセラーの方が、そもそも子どもの学校にいるのか、いついるのか、どこにいるのか分かりません。一般的にどのような形で広報されていることが多いものでしょうか?

曽根先生:
学校、自治体によって様々かと思いますが、私の学校では、養護教諭から出される「保健だより」や学校から出される「学校だより」で紹介されています。

初川先生:
また、学校によっては「学校だより」もしくは「相談室だより」、「スクールカウンセラーだより」が配布され、月予定の欄に来校日が印をつけられている場合もあります。まずはお子さんが配布されるお便りをご確認ください。担任にスクールカウンセラーに相談することが知られても構わない場合は、担任への電話・連絡帳などで問い合わせるのも良いかと思います。

2.スクールカウンセラーに相談するのにお金はかかりますか?

初川先生:
かかりません。相談するのは児童生徒・保護者の皆さんに与えられた権利なので、ぜひ気になることは相談してみてください。

3.親が子どものことで悩んだときに、いきなり学校や教育委員会に電話をしたり、教師と面談をしたりすることに少し抵抗があります。みなさん最初はどうやって相談される方が多いのでしょうか?

曽根先生: 
基本的には個人面談や家庭訪問が設定されている場で話ができるとよいですが、タイミングが合わずなかなか難しいですよね。まずは気になったお子さんの様子を日にちとともにメモしておいてみてください。その上で個人面談で「子育ての相談など心配なことがあるのでスクールカウンセラーの方とつながっておきたい」という旨を伝えておいてもいいかもしれません。

初川先生:
私はスクールカウンセラーとして働いていますが、保護者の方は「こんな大したことで相談していいかわからないのですが」と前置きされる方も多いです。
しかし保護者の方が「ちょっとしたこと」と思っていても、実際には「大切なお子さんの大切なお話」なので、事柄の大小は考えずに、気になったことを話してみていただければと思います。お子さんの育ちを見守るチームにぜひスクールカウンセラーも加えていただければと思います。

学校の中では話したくない、担任の先生には知られたくないという場合もあるでしょう。スクールカウンセラーに担任を通さずに予約が出来る場合はその方法を取ることもできます。
また、自治体には教育相談という機関を設けているところが多いです。通っている学校の公立私立問わず、その自治体に居住している人・在学している人を対象とした相談機関です。そちらにも心理職の相談員がいることがあります。
※自治体によっては教員によって運営されているところもあることや利用できる条件が異なる場合がありますので、気になる方は事前に自治体に問い合わせてご確認ください。

4.スクールカウンセラーは週2〜3日出勤と聞きました。学校に行けば好きなときに相談はできるのでしょうか?それとも予約が必要なのでしょうか?もし予約が必要な場合は、申し込んでからどれくらい待たされるものなのか不安です。どのような流れで対応されているのでしょうか?

曽根先生:
学校によってシステムが異なると思うので、こういった話も年度始めの個人面談で聞いてもいいかもしれません。可能であれば予約していただけると、事前にお子さんの様子を見ておいて話ができたり、担任と情報共有できたりするのでより良いカウンセリングに繋がるかもしれません。

初川先生:
スクールカウンセラーの出勤頻度は学校や地域によって異なるので、学校からのお知らせをご確認ください。担任の先生を通して予約される場合には、事前にスクールカウンセラーが担任の先生からお子さんの学校での様子や、担任から見たお子さんの頑張っているところ・課題としているところなどを聞くこともできます。担任の先生は教育のプロです。そして保護者の方はそのお子さんについてのプロ、スクールカウンセラーは心理のプロです。お子さんについての情報が多角的に集まることでお子さんへの理解が深まり、助言の精度が上がるだろうと思います。

5.子どもがいじめられているようです。今すぐどうにかしたいのですが、どのようなステップを踏んだら良いのでしょうか?

初川先生:
情報を得た学校は、まずは情報を集めたり、お子さんが安心して学校で過ごすにはどうしたらいいかを考えます。情報収集にしても、クラスメートや相手のお子さんらの指導・説明についても、お子さん自身の気持ちや意向も尊重しながら進めたいところです。保護者の方の心配な気持ちだけで進むと、当のお子さん本人の気持ちが置いてけぼりになってしまうこともあります。
対応の進め方について、もしかしたら想像よりも時間を要することもあるかと思いますが、大切なプロセスを進めているとご理解いただけるとありがたいです。ただ、あまりうまく取り合ってもらえないように感じる、いつまでも説明がないなど、学校に対して不信感を感じてしまう場合は、担任と二者で話すのではなく、学年主任や管理職の先生にも面談への同席を求めるなどして、学校としての対応の方針が確認できるようにするのも良いかもしれません。
また、お子さんの様子が心配である、お子さん自身が先生方には言えないけれど誰か相談したいと思っている場合には、お子さん本人をスクールカウンセラーにつなげるのもよいでしょう。お子さん本人が相談できる心持ちではないけれど、様子が心配な場合は、スクールカウンセラーに保護者の方がご相談され、心のケアについて聞いてみるとよいと思います。

曽根先生:
担任としては、まずは学校に気になることを連絡していただけると助かります。学校側は、基本的には状況を確認するところから始まります。いつ、誰と、具体的にどのようなことがあったのかが書き残されていると確認しやすく対応がしやすいです。
お子さんから「いじめ」と聞くとドキッとすると思います。一方的な明らかな「いじめ」ももちろんありますし、話を進めていくとお互いに言い分があるケンカのようなケースもあります。その線引きが非常に難しいものであるが故に事実確認も慎重に行うので時間がかかることもあります。保護者の方が不安な気持ちもわかるので、わかっているところまでの連絡をすることもあります。もし不安な場合には、どのようなステップで学校側が動いていくのかという見通しを確認してもいいかもしれません。

6.お子さん自身が悩みを相談したいとき、教師・スクールカウンセラー・校長先生・他のクラスの教師・保健室の先生など、たくさんの選択肢が教育現場にはあるかと思います。どのように相談相手を選べば良いのか、自分の子どもに対してアドバイスするとしたら、どのような声がけが望ましいのでしょうか?

曽根先生:
お子さんとの信頼関係や性別、話す内容によっても話したい相手は異なると思うので、選択肢を示した上で「誰に話しやすそう?」と聞いてみてもいいかもしれません。お子さんに、「〇〇が相談する前に先に話したいって思っていることを伝えることもできるよ」と言ってみると安心感があるかもしれません。
聞く側としては、受け止めたい気持ちは必ずあるので、お子さんが話を聞いてほしいだけなのか、何かアクションを起こしてほしいのか、ニーズがわかるとありがたいです。

初川先生:
大人でも悩んだときに即カウンセラーに相談するのではなく、まずは友だちに相談してみて、詳しそうな先輩に聞いてみて、美容院で施術されている間にぼやいてみて…などさまざまあると思います。どこかの段階で「うん、もう大丈夫」と思えればそれでよく、「うーんちょっとな」と思ったら別の相手に聞いてみると思います。大事なのは、「相談してみよう」と思う意欲と、その後いろいろと自分から働きかけてみて、「よかった、安心した」と思える着地なんだと思います。

7.担任教師に対して悩んでいる場合、スクールカウンセラーを頼ってみたいですが、相談したことが先生にばれてしまうのではないかと心配です。守秘義務などはどうなっているものでしょうか?

初川先生:
基本的にスクールカウンセラーには守秘義務があります。共有してもいいという許可をいただいた相手・内容でないとお話いただいたことを共有することはありません。
心配な場合は、「この話はスクールカウンセラーのみで留めてほしい」と念押ししていただき、スクールカウンセラーからも何らかの応答をもらうと安心いただけるかと思います。
相談の中で、例えば担任の先生への不信などがある場合に、実際にそうしたことが起きているのか、あるいはこれまで学校としてどのようにその事象に対応してきたかについてスクールカウンセラーが確認したくなる場合も出てくるとは思います。そうした場合には、スクールカウンセラーから、管理職にこの件を共有してもよいか、共有する場合にはどのような伝え方をしたら良いかなどについて確認が入るのではと思います。誰と・何の情報を共有するかも、相談の中で折々に確認しながら進めていただければと思います。

8.スクールカウンセラーや先生から心無いことを言われました。他のカウンセラーや先生に相談することは出来ますか?

初川先生:
そうなのですね。同じスクールカウンセラーの立場の者として心苦しく思います。その発言には納得できないということをスクールカウンセラー本人へお伝えいただければ、どういった意図でそれを発言し、また、保護者の方としてはどう受け取られたのか、関係を作り直すことも出来ると思います。
ただ、そうした局面を乗り越えて相談関係を続けることにはなかなかのエネルギーが要ることではあります。保護者の傷つきによっては、もう相談したいと思えないと感じる場合もあるでしょう。そのような場合には、学校にスクールカウンセラーが複数配置されている場合には別のカウンセラーに相談してみること。そうでない場合には、自治体の教育相談室を利用することをご検討ください。

曽根先生:
一つの学校で相談できるスクールカウンセラーの数はどうしても限られていますが、教員は複数いるので、担任以外にも学年主任や、養護教諭、管理職、旧担任など話しやすい教員に相談してもいいと思います。ですが、担任に比べて一緒に過ごしている時間がどうしても短いので、話を聞いてほしいのか、具体的に何か対応をしてほしいのか、要望を具体的に話しても良いかもしれません。

9.子どもから「学校に行きたくない」と言われたときに、「行きたくなければ行かなくてもいい」と言ったり、「何言ってるの、ちゃんと行きなさい」と言ったり、色んな親御さんがいらっしゃるかと思います。先生やスクールカウンセラーの方からすると、どう対応することがベターなのでしょうか?

曽根先生:
行かせるか、行かせないかを考えるよりも、まずは「どうして行きたくないのか」に寄り添いたいところです。友達関係なのか、先生との関係なのか、学習についていけないことなのか、行きたくない理由に共感した上で対応を考えるといいかもしれません。大人にとっては「そんなことか」と思うようなことでも子供にとってはとても深刻なこともあります。
一方で、例えば月曜日の朝が雨で「なんか行きたくないな。」と思うこともあるのが人間です。また、学年があがると人間関係や学習面など悩みの質も変わってくるので悩ましいところです。
そんな気持ちにも共感した上で、前向きになれる一言をたくさん伝えてほしいとも思います。自分が行きたくない理由を言語化できないお子さんも少なからずいるので、「学校に行きたくない」と言うことが続くようであれば担任に連絡していただけると何か別の角度から情報を得られるかもしれません。

初川先生:
何であれ、語ってくれた気持ちや事柄について、「話してくれてありがとう」と応じてほしいです。そこで否定してしまうと、きっと次から「もう親には話さない」となってしまうと思います。
お子さんが「行きたくない」と言うと、保護者からすると非常事態ですし、とても不安になるかと思います。保護者の不安をお子さんにぶつけてしまうことなく、大人の不安は大人の中で抱えながら対応できると良いと思います。夫婦で、親族で、担任と、スクールカウンセラーとなど、お子さんを取り巻く大人の方々と一緒に考えて対応できると良いと思います。

10.子どもが学校のことで悩んでいる時に、どのようなポイントを大切にしながら、話を聞いたら良いのか分かりません。ケースバイケースかもしれないですが、もし理想的な聞き方の方法があれば教えてください。

曽根先生:
私が子供達と接するときに気をつけているのは、「なるべく具体的に聞く」ということです。例えば友達関係だとしたら、「例えば、どういうことが嫌だった?」と具体的な出来事を出してもらうことで、ある誰かの言動が嫌だということがわかったり、授業でのある活動が嫌だということがわかったりします。誘導するわけではないですが、なかなか言葉にできない子は、「友達のこと?勉強のこと?」のように選択肢をいくつか出しながら聞くのも手かもしれません。最後には、「どうしてほしいか。」を聞くことで、本人が少しでも納得して話を終えたいと思って接しています。

初川先生:
私はできるだけ「話を最後まで聞き切る」「勝手にわかった気にならない」ようにしています。本人ならではの捉え方、それに伴う気持ちを丁寧に聞いてみたいと思いますし、聞いてみないと分からないと感じています。
また、「これは相談だな」と感じる話を聞いていると、良かれと思って助言したくなることがあります。「ただ話を聞いてほしい、知っておいてほしい」ことも多くあります。そのため私は「私は何か助言したらいいかな、話を聞くだけでいいかな」と確認することもあります。

さいごに

今回は、現役の学校の先生・スクールカウンセラーの先生からリアルなアドバイスをいただきました。
いままでスクールカウンセラーや先生に相談したことがなかった方も、今後お子さんのことで悩んだときに相談するイメージが湧いたでしょうか?
学校現場は都会や地方、公立や私立、それぞれルールや文化が異なることもあるかもしれません。さらにお子さんの性格や環境、学校の状況によっても相談する方法が変わるでしょう。
だからこそ誰にも相談できず、困ったときに思い出していただけたら幸いです。

オンラインカウンセリングのcotreeでは、「子育てに関する悩み」や「子どもの発達に関する悩み」などもご相談いただけます。
「学校では相談しづらい」という場合はぜひ選択肢の一つとして検討いただけますと幸いです。

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