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Liam Gallagher / MTV Unplugged (2020) 感想

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言わずもがな

今作は私ごときが何を言うこともない元Oasis、元Beady Eye のリード・シンガー、現在はかつて自らクソと言い放ったソロ活動に邁進する男、Liam Gallagherの企画盤で、Nirvanaでお馴染みの名曲と新曲をアコースティックアレンジで聴かせるMTV Unpluggedシリーズの最新作です。とにかく最高です。ベースはエレキでプラグインじゃんとかいうのは大野暮です。私はLiamが歌っていればオールOK、世間的には評判の悪い3rd以降のOasisもBeady Eyeも愛する盲目的ファンなので、今作もただただ最高だと思いながら聴きました。

音源としては元々MTV放送時の映像がyoutubeにあがったりしてましたので特に目新しいものはありませんが、今作のエモい点と不満点をただアウトプットしたくなったので書きます。

エモい点

①Oasisの曲が収録されている!

今作の一番のトピックはここです。10曲中半分の5曲がソロ名義のアルバムからの曲、もう半分がOasisの曲です。しかもその選曲も渋ければゲストも渋い。これについてはもう、Oasis曲だけ抜粋して感想を書かせてください。

■Some Might Say

かつてLiamが原キーで歌えなくなった為にセットリストから消滅し、兄でありリーダーのNoel Gallagherに「リアム があの曲を原キーで歌えなくなった時に解散しとくべきだった」とボロカスに言われたこの曲がソロになってからのツアーで登場し、おまけに原キーで歌われた時にファンの度肝を抜いたものです。時折辛そうですがここでもサビのキーを下げずに歌い切っています。Beady Eyeの失敗、隠し子発覚からの離婚など色々あったLiamがこの曲を、かつて失われていた本来の力強さとともに「他人の言うことなんか気にするな」と歌う事実だけで泣けます。

■Stand By Me

ソロ曲を挟んで5曲目に登場するのはNoel公認の失敗作としてOasis時代には歴史から抹消されていた3rd「Be Here Now」収録の名バラード。なんとライブで歌われるのは18年振りだそうです。生まれっ子が高校を卒業するまでと考えるともの凄い時間です。この曲のキモはなんと言っても、「この先どうなるか誰にも分からない」という歌詞を受けたようなサビの転調。かなり唐突な展開なのに切なさを増幅させる、当時のOasisの魔法を20年経った今でも感じます。今作の女声コーラスもまた切なくていいです。ほんといい曲。

■Sad Song

続いて登場するSad Song"は今作一のサプライズであり、間違いなくハイライトです。オリジナルはNoelが歌っており、1stアルバム日本盤のボーナストラックに入っていた地味な曲ですが、2016年に公開されたOasisのドキュメンタリー映画"Supersonic"でLiamがボーカルを取った未発表バージョンが使用されて物議を醸した曲です。以前リリースされたアコースティックセッション集に続き今作にも晴れて収録されたことになります。そしてまたそんな曲なのに観客の盛り上がり、合唱っぷりが物凄いのなんの。本国でのOasisの愛されっぷりを痛感して胸が熱くなる瞬間でもあります。

この曲を聴いていると、タイトル通り悲しげなこの曲でも、"Wonderwall"など他の代表的なバラードでもただがなっているだけな気もするのに、あり得ないくらいエモいLiamのボーカルの天才を改めて感じます。

■Cast No Shadow


The VerveのRichard Ashcroftに捧げた曲として有名な曲です。今でもLiamはRichardを大規模なライブのフロントアクトに呼んだりフラッとライブに現れたりと仲良しのようです。そしてライブでこの曲が歌われると合唱がLiamのパートを歌う人とNoelのコーラスのパートを歌う人で自然に分かれるのも素敵です。私はコーラスの方を歌いたいです。今作で歌い終わった後に呟かれる「みんなの方がよく知ってるね」というMCもまたエモい。

■Champange Supernova

そして最後が今作の最終曲でもある"Champange Supernova"。完璧でしょう。この曲はそもそもがSpiritualizedの"So Long You Pretty Things"、Super Furry Animals"For Now And Ever"等と並ぶ最強のクロージングトラックですが、今作でも最高です。唯一難があるとすれば最近のピアノアレンジは結構省略されているので6分超のオリジナルからするとあっさりしている点でしょうか。バッサリカットされている、おのユニゾンのギターだけでも後者だけでも聴きたいです。

②ゲストがエモい

今作のOasis曲の大部分ではギターにゲストとしてオリジナルメンバーのBonehead、ドキュメンタリー映画で「Oasisの精神は彼だった」とまで語られる伝説のバレーコード専従ギタリストが参加しています。初期Oasisのライブ映像を観たことがある人ならば誰でも、再び彼がLiamの隣でギターを弾いている事実に感動を覚える筈です。

最近はUKツアーにも帯同したりやたらと仲良しな様子です。彼が久しぶりにLiamとステージに立ったのはBeady Eye時代に出演した、同郷の大先輩The Charlatansのドラマー追悼ライブだったように記憶しています。地元のダチを大切にする感じもヤンキーらしくて素敵ですね。まぁ音源で聴いてもリズム弾いてるだけで全く存在感はないのですが。

③ボーカルの力強さ

Liamは長年「頑張れリアム !」、「ゲロ声」、「ニャンちゅう」などとても伝説的なバンドのフロントマンとは思えない評価を浴びてきました。それ程に近年のライブではとにかく声が伸びない、潰れる、時に音程まで危うい。それがソロになってからは好不調はあるもののバンド時代に歌えなかった曲を歌えるまでに回復している。それが公式のライブ音源として残されたことは大きな意味があると思います。

勿論公式ではありませんがOasis全盛期〜ニャンちゅう〜現在の変遷をまとめた動画も存在します。人生どん底に思えてもエブリシング・ゴナ・ビー・オールライトいう希望を抱けるような、大好きな動画です。

不満点

①選曲

今作、当日のライブのフル収録ではありません。それが一番の不満です。しかも当日演奏したのはソロ10曲、Oasis5曲の計15曲だったものをソロでリリースするにも関わらずあえてソロの曲をカットしています。Noelが最近Oasisの未発表曲をリリースした際に「おい豆腐ボーイ、Oasisを名乗るなら俺が歌っててBoneheadがギター弾いてなきゃダメじゃねえか!」とか言ってたLiamですがこの辺はどうなんでしょう。Noelにきちんと許可を取っているのでしょうか。だとすればNoelは流石の大人の対応ですね。しかし豆腐ボーイって何。

上記のとおりまんまと興奮してますのでOasisの曲を入れること自体は何ら不満はありませんが、ソロ名義でのリリースでソロ曲をカットしてまで入れなくても良かったかなという気もします。"For What It's Worth"とか聴きたかったですし。ロッキングオン的に言うとソロでの成功を機に漸くOasisもソロも同列に語る自信を手にした…ということになりますが、実際にはフィジカルの都合でカットする曲を選んだ際の商業的妥協だと思います。せっかく評判いいんだからソロの曲だけで勝負しても良かった気がしますがそこまでの自信はなかったのかな、と余計な邪推をしてしまいます。

②曲順

フル収録でないだけならまだいいのですが今作、収録順もかなり当日のセットリストからいじられています。このせいで、上手く編集されてはいますが曲間にところどころぶつ切り感があります。どうせ曲をカットするなら全体の流れから見直して、ということなのかもしれませんが…。一部だけ例に挙げると、Setlist.fmによると当日は"Stand By Me"から"Champagne Supernova"というながれで終わったそうで、エモサという点では絶対にその流れの方が良かったと思います。

アルバムの曲順で行くと6曲目の"Sad Song"で初めてBoneheadが登場したように聞こえますが実際は"Sad Song"〜"Some Might Say"〜"Cast No Shadow"という順番で演奏しているため、今作のイメージで"Some Might Say"演奏時の動画を観ると混乱します。まあ要するに、ケチケチしないで完全版で出してほいかった、ということです。ひと昔前なら絶対に9月に来日記念と称した完全版が出ています。

③臨場感

Oasis、Liamのライブでアガる大きな要素の一つが観客の大合唱です。言語の違いもあり合唱についてはとかく控えめな言われがちな外タレの来日公演において合唱の大きさが議論されるのはOasisくらいのものです。動画で観ると上述のように"Sad Song"のような比較的地味な曲でもオーディエンスは大興奮、大合唱だったようですが、合唱抑えめにLiamのボーカルをメインにミックスされています。

これは好みになるでしょうが、もう少しその合唱を大きめにミックスしてくれた方が臨場感を感じられて良かったかなーと思います。

点数

8.2

エモい点、不満点いろいろ書きましたが総合するとLiamファン、そしてリアム のソロはなんか曲地味だし、と思っていたOasisファン必聴の作品です。今年のsupersonicでLiamの"Sad Song"を聴けることをただ祈っています。



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