見出し画像

大規模な自然災害が起きた場合に、被災した地域でコワーキングスペースを始めたいという方に向けてのHowToをまとめた

 東日本大震災から10年経ちました。出身が岩手県山田町と津波が直撃した町ですので、この震災で祖母や親戚、同級生が犠牲になりました。1週間後に見た山田町の風景というのは、津波に全てを流されたというよりもその後に起きた大規模な火事で焼き尽くされたという印象の方が強かったものがありました(そこをまだ報道で伝えているイメージがしないのが気にかかるのですが)。
 そこから「震災復興」を合言葉に、意識を持って動く人は動き、動いて挫折した人もいましたが、これを通じて成金になった人はなった一方で、被災した地域に住んできた人は単純に動いた人のお客さんになってしまったように感じました。動いてきた人とそのお客さんで別々のコミュニティができてしまって、それぞれのコミュニティが相入れずに距離を作り保ったままで、この10年が経ったような印象です。
 こうした中で、震災が起きた半年後に知った言葉が「コワーキングスペース」でした。知って程なくして東京のコワーキングスペースを訪ねた時に、そこに居たスタッフさんと利用者さんと話しながらコワーキングを体験して、その場にいた人全てがとても楽しく生き生きと仕事をしていた事が印象深く、またその場にいた方から被災地域にもコワーキングスペースを作ってほしいとお願いされたこともあったので、自分の人生にもかなり犠牲を強いる覚悟で岩手の地にコワーキングスペースを作ろうと決意して、現在コワーキングスペースもりおかをやっている、そんな経緯で今の自分になっております。とはいえ、震災当時はほぼ無名の人間が一から社会に影響を持つ人になれる訳ではなく、面白そう!と言ってくれる人はいても賛同した方に継続して納得できる売上になる自信が持てなかったのもあったので、結果的に個人で細く長くやりながら、地方でもどういうスタイルでやれば地域貢献になりながらしっかり売上に繋げられるコワーキングスペースになるかを模索していました。

 そういった10年を通じて体感してきたことや見聞してきたことを元に、これから起きる大震災クラスの自然災害が発生した時に、被災した地域で知り合いもいない状態から1からコワーキングスペースをやりたいとした場合に、どういう風に始め、運営や業務をしていき、終了していくかについて、ここにまとめてみようと思います。虎の巻のように考えていることを全部書きますが、1から全部従ってやるのではなくて、参考でいいです。ここに書いてあることをベースに、地域事情や被災地の状況に応じてやっていただければそれで十分です。


1.始める時の備品と生活について

 まずは下に列挙します。太字は、特に必須と考えている備品です。

  • キャンプ・アウトドア用品1式
    椅子テーブルバーベキュー用品1式、テント、寝袋、タープ
    ランプ、ポータブルラジオ、救急箱)

  • 太陽光発電が可能なポータブル電源(複数)

  • アウトドア用Wi-fi受信機

  • 自動車(できればキャンピングカー)

  • 服、靴、マスク、メガネ(スーツでなく動きやすい衣類・靴で)

  • 2〜3週間分の食料+水(2ℓ×5本)+大五郎(4ℓ×5本)

 大規模な災害が起きた場合には、被災地域に到着しても一般的なライフライン(水道・電気など)が復旧していない可能性があります。このような地域に長期滞在をする可能性もあるので、長期間キャンプ場でキャンプを張って生活しながらコワーキングスペースを運営することを想定して、備品を準備した方がいいです。なので、コワーキングスペースの最低限な備品は、できれば手持ちのキャンプ用のグッズで充分です。15席程度あればいい感じで盛り上がることができます。新規購入は、おすすめしにくいです。
 利用者さんが増えるに従って、椅子やテーブルを増やしていく必要が出てきます。その場合には新規に買うことにこだわらず、ジモティーだったりその地で知り合った方から譲ってもらったり一時的に貸してもらったりするのがずっといいと思います。一人で全部揃えるというよりも、行き交う利用者と共同で作っていくという基本的な考え方が、コワーキングとして大きなポイントです。
 それに、寝るためのスペースの確保や備品等の購入や役場などへの移動用として、自動車が欠かせません。もちろんガソリン代もかかります。できれば、大型のキャンピングカーであれば重宝します。寝袋と毛布があれば、冬場でも十分だと思います。
 衣服はおしゃれにこだわらず、これを着れば動きやすいものでいいです。ジャージとスニーカー、下着を複数準備、または被災者分も含めて多めに持っていくといいと思います。洗濯は近くにコインランドリーがあれば、そこで充分です。また、大規模災害が起きた被災地域では、結構粉塵が舞ってたりします。これらを防ぐために、人数分より多めのマスクやメガネ(もしくはサングラス)があった方がいいです。コワーキングスペース内にも粉塵が入ってくるため、タープと横に覆うためのシートは必要だと思います。そして、衛生状態が悪くて胃腸炎を起こした人も多くいましたので、万が一のために救急箱があるといいかもしれません。
 プラスアルファで、想定する利用者の中にはネット回線を通じたミーティング等をされる可能性もありますし、被災された地域住民には携帯電話の充電でかなり困っている人も多かったので、太陽光発電が可能なポータブル電源はwi-fi用・テーブル用・充電用に1:1:3の割合で準備できると良いと思います。
 最後に食事ですが、ここでキャンプグッズをおすすめしたことが真価を発揮します。地域住民と火を囲んでバーベキューや宴会をして、親睦を深めると自分達だけでなく利用する団体さんに対しても地域住民との信頼が上がります。これは鋸南でやっているPAX Coworkingさんでよくやっているそうで、地域住民と溶け込んでいく方法として結構効果的な方法のようです。

また、宴会の時にビールがあればよいのですが、節水対策や二日酔い防止のために大五郎(焼酎)を使って水割りでいくとよい気がします。津波の被害を受けた漁師町だと、大五郎の水割りで本当に宴会が盛り上がります。消毒に活用するのも効果的です。空になったら水を入れて当面の水として利用するといいでしょう。

2.立地について

 津波や洪水、土砂崩れなどの2次災害に巻き込まれる可能性が低い所というのがまず大前提にありますが、それがクリアになりそうで、かつ地権者の許可が取れそうなら市町村役場や公民館、社会福祉協議会、ボランティアセンターの事務所の近くの空き地か月極駐車場、旅館などの宿泊施設でできるとよいと思います。地域住民と外部との接点やコーディネーター役になるのは、その地域に携わる公務員や地区会の会長さん、社会福祉協議会のスタッフになってくるので、その過程や様子を地域の住民や役場の職員、金融機関の職員に見てもらわないと、コワーキングスペースというスペースが復興支援にどう役立つのか理解できないからです(ただ、バーベキューパーティーしている所とか復興支援の団体さんがよく行き交う仕事場で地域の人は利用する所ではないと思ってしまう地域住民が出てくる可能性もなきにしもあらずですが)。見てもらっていくことを通じて、その方と仲良くなっていけると、この後のコワーキングスペースの運営にも力強いサポートをしてくれます。
 その上で、地域住民からビル内の空きスペースや空き家、公民館、廃校になった建物、仮設住宅の集会所を活用してもいいよという話があれば、積極的に入居していくべきです。事前に理解のある方がいて、すんなりとスペースを提供してくれる人がいたら、そこで大丈夫です。5台程度駐車スペースが確保できたり、他団体でも住所登録や登記をしても大丈夫というスペースであれば、なおいいと思います。
 とはいえ、室内でも被災の規模や地域によっては水道や電気などのライフラインが回復していない可能性がありますし、快適な椅子やテーブル、内装にこだわる余りに、移転や終了する時に現状復帰と高い修繕費を求められる可能性があるので、備品については当面は上記にある持参したキャンピンググッズなどをそのまま使うことをおすすめします。で、徐々にライフラインが回復した時にはそちらに移行しつつ、再び大規模災害が発生する場合に備えて備品として置いておきましょう。

3.運営資金について

 個人的な意見としては、心意気が伝えていきたいのであれば運営資金は0円でもいいとは思うのですが、生活も含めてそうはいかないので、初期・中期・後期に分けて説明します。

<初期(災害発生時〜空きスペース移転前 or 3ヶ月程度)>

 我慢ですが、ここは手弁当でやらざるを得ません。その中で1ヶ月にかかる収支を観察しましょう。

<中期(空きスペース移転後 or 3ヶ月程度〜3年程度)>

観察した収支を元に、1年継続することを考慮してクラウドファンディングの金額を計算し、思いやお礼の内容を考えて、クラウドファンディングのサイトに申請しましょう。丁寧に協議をすれば、支援も兼ねて協力をすると思います。大体40〜50日程度クラウドファンディングの期間を設けて、目標額の達成に向けてページの更新やSNSでの発信をするのがポイントです。
 達成して資金が調達できたら(セカンドゴールとかの制度もありますがここは省略)、それを元手にここから1年やってみましょう。
 このあたりまでは、誰でも無償で利用できるようにするといいです。

<後期(開始1年半〜2年程度)>

 引き続きクラウドファンディングで運営費を調達するという手段もありますが、復興支援だからと言っていつまでも無償という訳にもいかない地域事情や法人化すれば事業に対しての信頼の向上にもつながってくると思うので、運営体制を変え、利用料金を取る方向に切り替えて「固定費分を維持しながらやっていく」という運営方針に切り替える必要があると思います。
 まずは月の固定費を計算して、それをベースに常連的に利用する個人や団体さんとでシェアオフィスと併設するような感じで割り勘して支払いつつ、ドロップインを粗利と捉えながら、やっていくことを目指したいです。そのため、席数は常時20席、多くて50席準備するのが目安かなと思います。利用する個人や団体、コミュニティの盛り上がり具合にも適正規模や継続期間というのがあること、それに毎日利用するというよりも週1〜2日程度に利用する方が効果として上がりやすいし、相互に快適に利用できるという観点から、目安の席数より増やすことはきついと考えています。
 価格設定の目安としては、ドロップインが1人あたり1日1000円が目安だと思います。常連的に利用したい個人や団体は、月の固定費を個人や団体の数で割った金額が当初の月額になってくると思います。個人団体問わず会員数が増えれば、割り勘の額が減ってくると考えるという感じですが、減ると増えるというリスクもありますので、できる限り月額10000円程度に固定ができればいいと思います。
 また、復興支援や創業支援に関する助成金・補助金の情報も入ってきます。運営している中で公務員さんや各種士業さん、支援団体さんなどから話を聞くこともありますし、説明会とかネットとかでも情報は入ってくるので、情報提供者さんと一緒に申請用の資料を作成して、積極的に申請していければいいと思います。ですが、補助金については、対象となる支払を終えて支給者側で確認が取れてから(大体が次年度になってから)、補助金が入金する仕組になっているので、この点は注意してください。

4.利用対象と集客について

 主だっては、スペースのある地域の住民と復興支援に携わりたい団体、個人に利用対象として考えます。
 地域の住民に対しては、電気が復旧するまでの携帯電話の充電スポットや、ネット回線を活用しないと難しいサービスの作業サポート、復興支援団体のイベント会場という認識を持ってもらうように、チラシやクチコミを通じて働きかけていくだけでいいです。特に先述しましたが、イベントだったり会議だったりを通じて、積極的にその地域の役場の職員さんや復興支援団体の職員さんと知り合って交流を深くしていくことが、とても大事です。
 復興支援に携わりたい会社・団体・エリア外の方に対しては、主にネットサイトを通じて宣伝していきます。Wordpressなど1から初期設定な面倒なものではなく、JimdoWixペライチなどネットがつながっていれば登録するだけで簡単に作成することができます。SEO対策として、ヘッダーの編集に以下のコードを加えるといいかもしれません。

<meta name="keywords" content="〇〇(コワーキングスペースのある地域、都道府県や市町村),コワーキングスペース,コワーキング,充電,coworking,basecamp,シェアオフィス,イベントスペース,ヒアリング,復興支援,災害支援">

 復興支援に携わりたい会社・団体・エリア外の方には、まだコワーキングスペースというスペースがどういう場所なのかのイメージが理解しきれている訳ではないので、その皆様のやりたい活動を展開していくためのベースキャンプとなるオフィスや地域住民の意見を聞くことができるイベント会場という風に、ひとまずは利用イメージのしやすいキーワードを通しての活用を想定して働きかけていければ、それで十分だと思います(まあ厳密には違うよって本音として言いたいのですが、これは後で)。そのため、SEO用のキーワードに「シェアオフィス」と「イベントスペース」と入れております。keywordの内容は、適宜追加・変更していって大丈夫です。

5.コワーキングスペースの業務について

 先述しているのと重複しますが、復興支援という目的で考えた時に、コワーキングスペースの業務はこの5つができれば十分だと思います。

  • 電気が通るまでの携帯電話などの充電スポット

  • 復興支援者のための音出しOKフリーアドレスのシェアオフィス

  • 復興支援者と地域住民との意見交換を目的としたイベントの会場

  • 復興支援者に対する支援事業のマッチング

  • 復興支援者と地域住民との交流を目的としたバーベキューパーティー

 大きな前提として、コワーキングスペースは単純に働くスペースなどのサービスを提供するだけの場所ではなく、<利用者同士の交流を通じて>それぞれのビジネスの成長を手助けしあう場所であること、その考えがベースとなって、その延長線上に、Wi-fiなどの設備やパーティーやイベントの開催、レンタルスペースやバーチャルオフィスなどのサービスドオフィスの提供のようなサービスを利用者に提供している商売であることを、利用者・スタッフ共にしっかり理解する必要があると考えております。最近は特に、コワーキングスペースを貸し切って会議用だけのスペースとして利用したいという方の問い合わせも結構ありますが、本来は様々な利用者さんとの交流を通じたビジネスの成長を図るためのワークスペースなので、この目的での利用であれば適した利用ではないと考えています。

 そのために、この業務を具体的にやるに当たって最も大切なのは「利用者さんに対して、どういう活動をしたいのかをヒアリングしていく」ことです。ヒアリングを通じてどういうことをしたいのかを理解したら、支援内容をマッチングしたり、活動を通じて知り合った人とつなぎ合わせたり、同じか近い目的、近い内容のイベントをしたいという団体があったら共催を持ちかけていったり、臨時の事務所スペースとして長期的に利用したいのであれば住所・ワークスペースの共有や業務面でのサポートをしたりと、利用のサポート・コーディネートプランを考えてどんどん実践していってもらうのが、コワーキングスペースの主だった業務となります。

 ヒアリングにあたっては「傾聴」を意識してやってくれれば良いです。傾聴についてのポイントはnoteにもありますので、ご参照して実践してもらうとありがたいです。単純にコワーキングスペースの業務だけでなく、地域住民の不安や喪失感の解消にも、いい効果を発揮します。

 聞いて覚える力がなかったり、ヒアリングが面倒だという場合には、利用イメージシートを作成して利用者さんに記載させたりすると、手短に済むことができて重宝します。いつ、誰が、何人程度の利用者、何人程度の参加者、概要(主催者とイベント)、協力してほしいことが整理して理解できるように作成すれば大丈夫です。内容の記載については、紙でもいいですしGoogleフォームでもいいです。うちのスペースでも利用イメージシートを作成しているので、お問い合わせをいただければお送りします。

 イベント(セミナーやミニフォーラム、パーティーなどコワーキングスペースを利用して開催する催し物)に関しては、被災地域が移住者や無名の新参者に抵抗のある地域である可能性も高いので、極力コワーキングスペース内で開催させるようにしたりした方がいいです。開催を通じて、コワーキングスペースや主催者に対する、参加者の地域における信頼と実績を重ねていけるようにするためです。
 またイベントには、コワーキングスペースの代表者さんだったりボランティアスタッフが必ず居合わせるようにしてください。ヒアリングに基づいて開催を許したとしても、復興支援を謳いながら実は宗教の勧誘だったりあやしい健康食品の販売だったりとあやしい内容のイベントである可能性もあります。それをしっかり見極めて、今後被災地域の住民に有益にならないと判断したら、次回からは利用を断ることも大事です。当然、事前のヒアリングの段階で怪しい感じがすると判断したら、その時点でうちではできませんと伝えていってほしいです。そして、周辺の地域や皆様に注意喚起を呼びかけるとよいと考えております。これによって、第2第3の大雪りばぁねっとの台頭を防ぐことができれば、残した価値はあります。

 それと、ある程度復興がすすめば、コワーキングスペースの運営者を相手にして商品やサービスを販売したいという業者さんも出てきます。例えば、ネット回線のプロバイダとかコワーキングスペース用の顧客管理システムとかがそうです。よく電話勧誘だったりメールでいきなりきたりとかで問い合わせをしてきます。個人的にはどんどん受け入れていくべきだとは思うのですが、これでは資金的な余裕が持てないと思います。
 そこで、継続的な支払いが必須となってくるサービスや特に必要はないのにガンガン電話勧誘をしてくるサービスに関しては、サードプレイスプランということで、特に毎日利用しなくてもその事業者さんでコワーキングスペースへの出入が自由になり、スペース内でのビジネスや事務仕事ができるようになるプランを設定して、業者さんにおけるワーケーションや復興支援の取組ということでそれに登録してもらうことを条件に購入するという交換条件を持ちかけてみるというのも一つの手です。サードプレイスプランに毎月月額を設定して、問い合わせをしてきた事業者さんに月額を支払わせながら、そのサービスに対して月にかかる経費をその月額から支払っていくというという考え方です。場合によっては、効果的なビジネスマッチングにもなりますし、電話勧誘対策にも有効になると思います。 

6.スタッフ(コミュニティマネージャー)が気をつける点として

 前項の繰り返しになってしまうのですが、コワーキングスペースは単純に働くスペースなどのサービスを提供するだけの場所ではなく、利用者同士の交流を通じてそれぞれのビジネスの成長を手助けしあうという場所であること、その考えがベースとなって様々なサービスをしているということをまずは共有してほしいです。そのサービスを手がけるに当たって、利用者さんに対してどういう活動をしたいのかをヒアリングしていくことが、心得としての基本になっていきます。この基本をベースに、前項に挙げた5つの業務内容を通じて、利用者さんにいい成果を出せるようにサポートすることを意識して行動するというのが、代表者をはじめとしてスタッフ・コミュニティマネージャーなどコワーキングスペースに携わる全ての人の仕事だと考えています。作業する環境としては不便をかけるところもあるので、利用者さんや利用したい団体さんに100%満足できる利用は無理ですが、そこのハンデを越えてよい成果が出せるようにサポートを取り組んでもらえればと思います。
これに基づいて、スタッフとして上記の他に気をつけてほしいと考えている点を少しまとめたいと思います。やるとなると難しいのもままありますが、少しでも意識してやってもらいたいです。

  • 個人利用にしても団体の複数利用にしても、コワーキングスペースを通じてコミュニティを作っていくというよりも、コミュニティを混ぜ込ませていくという意識を持って接してほしい。また、個人もコミュニティも生き物だと捉えて、それぞれに取り組みたい活動に対して、薬のように組んでやっていけばより効果的になるようなプロジェクトとを組み合わせて、活動をより成功できるような方向を追求してほしい。

  • ドロップインのような感じで団体グループで利用しにきた場合には、そのグループだけでまとまって利用させないように気をつけてほしい

  • 一つのグループだけで情報を秘密にしてやっていくくらいなら、スタッフも含めて情報を共有し、他者の力も借りてより満足度の高い成果を出していくことを意識して考えてほしい(情報管理については後述)

  • 全てを受け入れていくのではなく、復興支援として被災地域の住民のお役に立てる内容とは考えにくいプロジェクトや、他の利用者を追い出すような利用に関しては、利用を断ってよい

  • 時にワークスペース、時にパーティースペース、時にサービスオフィスと多岐な利用用途ではあるが、そうであるが故に、利用者様(特に大都市にある復興支援団体)が求めているオフィスサービスに完全に応えることはできないことを念頭に入れて、2週間程度のような一定期間の利用は認めつつも、新規のワークスペース探しや協力者探しを考え提案をしていく

  • バーベキューパーティーやイベントを通じて、被災地域の人や公務員、ボランティア団体の方と知り合いになっていく

  • 利用しながら何か困った事が起きた場合には、遠慮なく「助けて!」と言える環境を常に維持する。そのために「静かに利用しましょう」と利用者に強制してはいけないし、利用者側も他の利用者に強制してはいけない(強制した場合には追い出しても構わない)。

  • 代表でもスタッフでも一時的な利用者でも他のコワーキングスペースでも、コワーキングスペースでは対等の立場であることを意識しあっていく

  • スタッフやコミュニティマネージャーが中心となってコワーキングスペース会員のための1つのコミュニティを作って運営・管理していく事は、手法の一つではあってもコワーキングコミュニティ形成のあり方としては実は間違っています。スタッフを無視して利用者間でコミュニティや業務提携、取引を作る場合が出てきますが、この方がコワーキングのあり方としては正常なので、何故俺らを入れてくれないんだ!と嫉妬してしまう気持ちは理解できるものの、コワーキングならではの成果が出たとして、自信を持って今後も取り組んでいく認識を持たせていく。

 それと経験者・未経験者問わず、ボランティアでコワーキングスペースのスタッフやコミュニティマネージャーとして携わりたいという方も出てくると思います。その場合には、しばらくの間は人件費が出ないことを相互に理解し納得した上であれば、スタッフとして受け入れてもよいと思います。ある程度運営費として、人件費を求めてくる助成金・補助金に応募する場合であれば、ボーナスまでは無理にせよ必ず給与を出してください。

 また、可能であればの話になりますが、他地域にも活動支援や業務上で困っていること、リモートでのイベントに対応していくために、自分達のいる地域かどうかは関係なく、Zoomなどを活用して、他のコワーキングスペースのスタッフやコミュニティマネージャーさんと知り合いになっていって、どんどん意見交換や他のスペースのイベントにリモート参加していってほしいです。特に代表者さんやスタッフさんで可能であれば、全国各地のコワーキングスペースを利用したり、イベントに参加したりして、被災地域やスペースの状況を話してくれると、さらにそこの利用者さんやスタッフさんから協力が得られる可能性がありますので、どんどん交流していただけるとありがたいです。みんなのバーチャルコワーキングスペース(PC推奨)やClubhouseを活用したコワーキングスペースという、オンラインで誰でも参加できるコワーキングスペースがありますので、そこに定期的に参加するのも充分効果はあります。OviceRemoを活用して、自分達でバーチャルコワーキングスペースを作成するというやり方もできるでしょう。

7.スペース内の情報管理について

 コワーキングスペースを運営や経営している人でもスタッフでも利用しようとしたい人でも、本来のコワーキングという働き方だったりそれに基づいたコワーキングスペースの特徴について、しっかりと理解できていない印象をよく感じることがあります。さらに言うと、仕事でも個人情報でも情報管理に関しては、ここ数年当事者の意識が過剰すぎるのではないかという感じがあります。これが一般的な感覚だとするのなら認めていくしかないですし、その意見に基づいて個室とかブースとかのあるコワーキングスペースができてきたというのがありますが、大規模な災害が発生している地域ではそこまで準備ができる余裕は持てないですし、被災地域の人の力になりたいとすればこういう活動をしてサポートしますという情報を隠していくことに価値や意味はあるのだろうかと思います。
 私自身が体感して教えられたコワーキングスペースでのコワーキングから基づいて言えば、コワーキングスペースで出す情報というのは、そこの利用者全てが共有して、その情報を基に利用者間で力不足なところを補い合って相互の成長に繋げていくためにあるものなので、「情報は利用者自身の自己管理が基本」として、利用者側で出す情報出さない情報をあらかじめ決めた上で利用してもらうというのがポイントではないかと認識しております。Wi-Fiも共有して利用するのが嫌だとするのなら、利用者自身でモデムやポケットWi-Fiを準備してご利用していただく事も悪いとは思いません。
 で、どうしても利用はしていきたいけどオープンスペースで仕事をすることを嫌う利用者・利用団体さんがいるのであれば、利用者さんの自前でパーテーションを持参してもらうとか、しっかりとした事務所スペースを見つけるまでは一時的に受け入れるとして一緒に探すとかは有効だと思います。また、利用団体さんでネット会議をする時には、音を出してもいいので、極力利用している地元の方にも参加してもらうようにして、意見を出してもらえるといいと思います。

8.コワーキングスペースの運営終了について

 これも個人の意見になるのですが、復興支援というのは計画的かどうかはともかくとして期限を定めたら定めた期限通りに終わる事項であるべきと考えています。そのため、復興支援のサポート目的でコワーキングスペースを続けるとしたら、一時期と比較して復興支援の団体やボランティアの利用が目減りしたり、次年度もスペースをシェアしていきたい団体が2、3団体程度になった時には、コワーキングスペースの運営を終えてもいいと思います。

 ただし、災害復興に関する工事などの公共事業が終了することになると、それで生活してきた人の仕事がなくなってしまうことになるので、この影響で解雇された人の新しい仕事づくりや地域おこしの新規事業づくりを目的として、継続をしていくことはできると思います。その時には非常時ではないので、これまでの経験を基に事業計画を立てて金融機関から融資を受けるなり、地元の人に運営や経営を移したり、どこかのコワーキングスペースのブランドを活用して運営したりしていくとよいと思います。ですが、コワーキングスペースを通じて知り合ってきた皆様との交流は、引き続き続けてもらえればありがたいです。

最後に

 東日本大震災クラスに甚大な被害を起こす自然災害は今後起きないことに越したことはないのですが、それでも起きてしまいます。東南海地震・津波はいずれ起きると言われていますし。それが発生してしまった時に被災地域でコワーキングスペースを始めたいという方のためのライフハックとして、これを残すことにしました。繰り返した箇所や太字の箇所はコワーキングスペース運営として大事な所だと捉えていいですが、被災状況や地域事情によってできることできないこともあるので、これを参考にする程度で大丈夫です。長いですがここまで書いてきたことを頭の片隅に入れておいて、ご活用していただければありがたいです。読んでてわからないことがあったら、私までメッセージを残してください。長くなりましたが、ここまで読んでいただきましてありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?