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はじめの言葉に耳をすます:発語からみる子どもの世界

子どものまなざしには何が映っているのか、何を感じているのか。そんな素朴な興味から、私は娘が話し始めてから、その言葉を大切に書きとめてきました。

特に2歳半から4歳半にかけての2年間には、いきいきした想像力が言葉のかたちであふれ始めました。そして、この特別な期間に記録したなかから印象深いものを集めて、小さな本のかたちにまとめました。

ここにあるのは、言葉をおぼえたばかりの子どもの、いちばんやわらかないちばんはじめの心おどるような言葉たちです


たとえば、こんな言葉です。

気象や自然の変化にはいつも目をみはっている
自分の体をよく観察していた。文字(数字)の存在に気がつき夢中になっていた


すべての生きているもの・生きていないものとの対話。
知っているかぎりのことをつなぎあわせて生まれる思いがけない文脈。
あらゆることに感じるふしぎと探究心。

見ること感じることすべてに、彼女なりにおおまじめに好奇心をもっているようでした。それらに耳をかたむけ、幼い言葉を借りてものごとを見ることで、私も世界とのつながりを新たに結びなおすような気持ちにもなりました。

こんな無垢な言葉たちは、きっとすぐに娘の中からも消えてしまうかもしれない。そう思うと、とてもいとおしく感じました。

制作工程

①言葉を集める

小さな口からたどたどしく発せられるふしぎな言葉は、砂がこぼれ落ちるようにすぐに消えてしまいそうでした。実際に、ほとんどの言葉は、メモにたどりつく前に忘れてしまいました。なるべく言葉を聞いたその瞬間に、育児日記に書きつけるようにしました。外出時はスマホに記録(日付と言葉)していました。

実際の育児日記メモ。「5年日記帳」に夫婦で気が向いたときに書く


子育ての日々に、娘の発する些細な言葉を記録し、整理し、まとめる作業は容易ではありませんでしたが、いつのまにか、書きためた言葉は3万字を超えていました。

年末年始の休暇中、一念発起して作業開始。夜中にコツコツとテキスト化した

②選ぶ、並べる

まず発語順に時系列に並べました。「単語期」と「センテンス期(ある程度、文章でしゃべるようになる)」があったのですが、意味がわかりやすいセンテンス期の言葉に今回は絞りました。

おおまかなテーマごとに分類し、それぞれについて、特に印象深いものや、できるだけ普遍的に伝わりやすそうなものを選びました。

テーマ別の目次とした


さらに、発語と時期を同じくして、娘はさまざまな線や点を組み合わせて多くのことを表そうとしていたので、本人の描いた絵も添えることにしました。話をしながら描いていた絵もあれば、イメージとして選んだ絵もあります。

上:「あめが おっきいから ちょっとずつ ちっさいになって にじが でるの」七夕の短冊に絵を描きながら話した。その数日前には、公園で通り雨にあい、虹を見ていた
下:トイレットペーパー芯に「み」を書いた。「『す』と『み』にてる」と発見した
表紙に使った絵。前に、石ころに絵の具をぬって、はんこみたいにして遊んだ


③組版、印刷する

PowerPointに絵とテキストを配置して作りました。PDFファイルにして、印刷会社(冊子印刷工房さん)にオンライン入稿すれば、印刷と製本をして届けてもらえます。

本文はモノクロ印刷にした。絵が白黒になるのも味わいぶかい


④特装本を手づくりする

手製本の特装本も作ってみました。将来、娘にあげるために。
布をまいたハードカバーです。小口塗りも施しました。
手製本作りはまだまだ練習中ですが、段取りを動画にしました↓


手製本。世界でひとつの本になりました


おわりに

ただ子どもの発するありのままの言葉をコツコツと集めていったことが、私にとってかけがえのない子育ての記録・発見となりました。

こんな宝物のような日々を娘は覚えていないでしょう。人生のはじめの時期に、こんなにも楽しく豊かな世界があったということを、大きくなったときに伝えたい、そして、これからも小さな子どもたちの言葉に耳をかたむけていたいと思います。


おまけ:
小さく、ぽつぽつとしゃべる、娘の声です。

追記(2/12)と修正(2/22)
余分に印刷したぶんを、神戸にある「自由港書店」さん、「1003(センサン)」さん(オンラインはこちら)、「ワールドエンズガーデン」さん、「本屋わわわ」さんの書棚に並べていただけることになりました。関心を寄せてくださる方に手にとってもらえるとうれしいです。


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