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子育て中の心理職の座談会「こしんかい」報告レポ

こんにちは。りんです。

この度、2023年11月19日に、子育て中の心理職の座談会「こしんかい」を開催いたしました。
当日は4名の子育て中の心理職の方にお集まりいただき、オンライン上で座談会を行いました。

この記事では、「こしんかい」の様子をご報告するとともに、参加者の皆さまからいただいたお知恵や経験談をシェアできればと思っております。

特に今回は、スクールカウンセラー(以下SC)経験のある方が複数おられ、SCとしての働き方について深堀りすることもできました。

簡単ではありますが、会の様子を振り返り報告レポとしてまとめましたので、ぜひお手すきのときにゆるりとご覧いただければ幸いです。

それでは早速いってみましょう!


「こしんかい」を企画した経緯

今回この「こしんかい」を企画したのは、心理職で特に子育てをしている人のピアサポートの場があるといいなと思っていたからです。

自分自身、院卒後から今に至るまで1人職場で働いており、周りにすぐに相談できる同業者の方もおらず、孤独を感じることもありました。
さらに、子どもが生まれると、心理職として働くことに加え、「母としてどのように生活と仕事(臨床)を両立していけばよいのか」という悩みにも直面し、現在長男(2023年12月時点で3歳)が1歳の頃からSNSを使って情報収集を始めたのでした。
そして、本当に細々ではありますが、noteやブログ等で発信活動も始めてみました。

2023年10月、普段から愛用しているX(Twitter)にて「子育て中の心理職のための勉強会や座談会があったらいいのにな」という投稿をしてみたところ、多くのご反応をいただいたため、勇気を出して企画してみました。

開催日時

2023年 11月19日(日) 10:00~10:30 (Zoomにて)

詳しい開催要項はこちらの記事をご覧ください。

お申込みいただいた方

6名

締め切り(11/17)までにお申し込みをいただいた方が3名でした。
うち2名の方は諸事情によりキャンセルをされましたので、再度X(Twitter)上で募集をさせていただき、当日3名の方にお申込みをいただきました。

また、今回は「参加をしたかったが日程が合わずに見送った」「参加をしたかったが、参加条件が合わなかった」というお声も複数いただきました。
この点については、今後の開催するにあたって再度検討させていただきたいと思っております。

ご参加いただいた方

4名

事前申し込みをいただいた方が1名、当日お申込みいただいた方が3名でした。
お申込み・ご参加いただいた方はすべて女性でした。
企画者も含めて、女性5名で座談会を行いました。

※以下、個人情報保護のためざっくりした形でご報告させていただきます。人数などの具体的な内訳は伏せさせていただきます。

在籍地

日本各地からご参加いただきました。
その中でも関東圏にお住まいの方が多かったです。

子育て歴

ご参加の皆様のお子さんの年齢は0~7歳でした。
お子さんの人数は1名または2名でした。

主な勤務地

今回は、教育・福祉・医療領域で働かれている方にご参加いただきました。
特に教育現場での勤務経験をお持ちの方が多かったです。

臨床歴

ご参加いただいた方の臨床歴は3~14年でした。
今回は、企画者を含め育休等で現在一時的に臨床から離れておられる方のご参加が多かったです。

「こしんかい」の様子

「こしんかい」の所要時間は90分でした。

はじめの30分間で企画者から「こしんかい」の主旨をご説明した後参加者の皆さまに自己紹介をしていただきました。

その後は、皆さんが気になっておられる話題を中心にフリートークを45分間行い、終盤の15分間で参加されての感想を一言ずついただきました。

終始穏やかでサポーティブな雰囲気の中、有意義な意見交換ができたと感じています。

以下、フリートークで主に話題になったトピックを振り返ってみたいと思います。

子育てと仕事の両立について(子どもの体調不良時の対応)

お子さんがおひとりいらっしゃる方よりお尋ねがあったこともあり、こちらのテーマが最も大きな軸となって話題が展開していきました。
特に、「子どもが体調不良になったとき、仕事はどうするのか」といったことについて、様々なご意見があがりました。

パートナーが転勤のある仕事をされておりそれにともなって転居を経験された方々もおられました。
その方々からは「引っ越し先ではまずスーパーと小児科を探すことから始まった」「『助けてください』とアピールをすること、積極的に声を上げていくことが大切だと思った」というお話もありました。

“アピール”をすることが大切”ということについては、多くの方が共感されていたように思います。
「『私は育児があって早く帰る必要がある』『手を貸してほしい』ということを積極的に伝えるようにしていた」という意見も聞かれました。

「自ら声を挙げなければ気づかれないことも多く、子育てが始まってからは特にその重要性を再確認した」という声もありました。これは、子育ての場面だけでなく、今後介護や自分が体調を崩したときなどにも通ずるものであるということを共有しました。

子どもが体調不良になってお休みせざるを得ないときについては、「常勤だから助かる部分も大きかった。1日休んでもまた日を改めて他のスタッフと話をすることもできるので」と、働く形態(常勤職であること、公務員であること)にも助けられたというお話も聞かれました。

一方で、お子さんが身体が強く保育園からのお迎えの要請がほとんどなかったという方もおられました。ただ、病欠をすることは少なかったようですが、下のお子さんが生まれられたときに、その(上の)お子さんが調子を崩してしまうこともあったようでした。
「今振り返ってみると、保育園を休まない=休む機会がない、つまり子どもの休憩の時間が不足していたのかもしれない」というお声もあり、月に1度程度子どもも親も意識的にお休みをするというのも健やかな育ちのためには必要なのかもしれないという話になりました。

育児中に助けられたリソースとしては、病児保育とファミリーサポート(以下ファミサポ)が主に挙げられました。
ファミサポの利用の仕方の例としては、保育園の送迎をファミサポさんに依頼しその間に自宅で家事をする、などがありました。

スクールカウンセラーとして働くことについて

今回ご参加の方はSCの経験がある方が多く、SCの働き方について深掘りすることができました。

話を進めながら浮かんできた疑問を言葉にしていただいたり、それに対してご回答をいただきましたので、項目ごとに記載したいと思います。

◇SCの仕事をお休みすることについて
病院等では、治療契約を結ぶ時点で「自分は子どもの体調不良等で休む可能性のある心理士(師)である」と表明される人もいる。SCでもそれは適用できるのではないかと思う。(例:「病児保育の空きがなくて、やむを得ずキャンセルさせていただくことがあると思います」など)
クライエントに対して「あなたが要因でのキャンセルではない」というメッセージを伝えられるようにすることが必要だと思う。
学校には、SCの窓口となるコーディネーターの先生が必ずおられるので、コーディネーターの先生方と協議しながら仕事を急きょお休みするときのフロー図などを作っておくのもいいかもしれない。

◇やむを得ずお休みする(した)ときの対応

手紙を残しておいたり、オンラインのツールを使って面接をしたりする方法があるかもしれない。
コロナ禍のときは、「感染の可能性があるので」とキャンせざるを得ない理由を説明していた。また、緊急性が高いケースなどは管理職と相談して電話対応を行った。

◇育休明けでSCの仕事をすることはできるのか
「学校の先生は育休を取得する方が多い。つまり、学校は、育休明けの先生の状態(子どもの体調不良等)にも慣れている」という言葉をいただいたことがある。育休明けで仕事をする方に対して、学校現場は結構理解があると思う。

◇SCの自己開示について
保護者の方は「子育て経験のある心理職」の存在が嬉しかったりする。「自分は子育てをしていて、やむを得ずお休みをいただくかもしれない」を開示することがかえってプラスに働くこともある。保護者と一緒に協力しながら子どもたちを支援する土台づくりにもつながる。

多様な働き方について(個人開業など)

参加された方のなかには、個人でサービスを提供されている方もおられました。
(以下、ご本人の許可をいただきましたので詳細を記載します)

その方は、性の悩みを抱える方を対象としたオンラインカウンセリングのサービスを展開しておられるということで、そういったサービス提供についてお話を詳しくお聞きすることができました。

サービスの内容としては、主にZoomを使って性に関するお悩みを持つ方のカウンセリングを行うといったものです。ご相談される内容の特性から、顔出しをせず音声のみの相談も受け付けられておられるということです。

また、SNSでの情報発信もされており、そのSNSのDMからご相談のメッセージをいただくこともあるそうです。
「こしんかい」の中では、相談の枠組みをどのように定めていくのか、といった質問も挙がりました。それに対しては「DMでのご相談でやりとりが長く続きそうなときには、無料で相談ができる機関を紹介する」といった対応をとっているというお話がありました。

このような個人開業のお仕事であれば、子どもや自分の状態に応じてある程度業務を調整することができます。
ケアが必要となる家族と暮らす心理職にとっては、検討したい働き方の一つとなりそうだ、という感想も挙がりました。

ご参加いただいた方の感想

「こしんかい」にご参加いただいた皆さまには、会の終了後にご感想をお送りいただくことをお願いしておりました。
今回皆さまより許可をいただき、こちらでシェアさせていただきます。
ぜひご覧ください。

・心理職でもあり、母でもある、同じ属性を持っている人と悩みを共有できたことは、自分の中で大きな癒しでした。

・月齢の小さいお子さんのママさんのお話に、深い共感と新たな視点も得られました。子どもの年齢が大きいママさんの話を聞いて、これからに備えなくちゃと思っていたが、偏見でした。これから働き方を選んだり調整する立場は同じでした。バイタリティを見習って私も活動したいです。

・ひとつ残念だったのは、仕事の選び方や就職活動について、皆さんの話をもっと聞きたかったけれども時間が来てしまったこと。1つの座談会に1つのテーマくらいがちょうど良いのかもしれませんね。

結婚や出産というライフスタイルの変化に伴い、ままならないことも多い日々。
育児×心理士という共通の属性を持つ人たちが集まることによって、子育てとの両立への苦労や、子育てにコミットすることでの焦りを分かち合うことができました。
また、自己開示し、耳を傾けてもらうことで、自分に対する気づきも生まれました。
私自身がそうやってピアサポートを受ける経験も今後の臨床にいきていくとおもいます。
ぜひまた参加させていただきたいです。

最後にも少しお話させていただきましたが、(どのような仕事でも子育てとの両立は難しいというのは十分承知していますが)
クライエントさんと治療関係を築くにあたって、治療者側である自分が枠を十分に守り切れないと感じることってやっぱりしんどいことだなと
皆さんとお話ししながら感じました。
クライエントさんとの関係性だけでなく、治療を行う場を取り巻く関係者との関係性も臨床には大きな影響を与えます。
職場や関係する方々に自分の状況をわかってもらうために声を上げることや実施の工夫など様々に心を配りながら臨床にあたることは、
セラピストが安心して臨床の営みにあたるためであり、それはクライエントやコミュニティにも還元されるんだという当たり前のことだけど大事なことを再認識しました。
コミュニティを含めたクライエントとの治療において最善ではないかもしれないけれど、今できる最大限の枠を守るための工夫をみんな苦労しながら考えているわけですが、
それってすごく臨床的だし、きっとこの先の自分のスキルにも生かされるはず…と言い聞かせることにします。
やっぱり家族のことが一番大事だし、家族のことが気になりながら臨床していても多分あまりいい臨床にはならないですよね。
それも自分に言い聞かせながら、家族と自分を大事にしたいと思います。

あと、ブランクの話もありましたが今までそれなりに社会にコミットしていた経験があるだけに焦ったり、自分とは…?みたいなこと考えてしまいますよね。
でもそういえば昔院の教授から、子育ては心理臨床しているのと同じくらい心を使う営みだから子育て経験はブランクにならないと言われたのを思い出しました。
全てを真に受けちゃいけないなとは思いますが(笑)、確かにうなずけるところも多々あります。
それに自分のバイザーも他の60代前後の先生たちも、時代の影響は大きいと思いますが子育て期間は比較的長く臨床から離れていた方々が多いですよね。
だからあまり不安に思うことなくそのうちまた心理の仕事に全力を注げるようになるだろうと気長に考えたいなとも思います。
(その頃はもっと悠々自適な生活を送っていたいですけど)

私自身夫の転勤に伴い退職し、また新たに転職するにあたって短時間で働けてかつ自分の経験も生かせる職場がない!と愕然としましたが、今までと違う領域の仕事に携わる機会にもなり、自分の臨床の幅も少し広がったと感じていますし、違う領域でも自分が大事にしてきた心理臨床への姿勢は自分を支えてくれるんだということにも気づきました。

下剋上球児を見ていたら、「ピンチはチャンス」と鈴木亮平さんが言っていて、これだわーと思いました

◇こしんかいに参加して◇

先日のこしんかいは、今年第一子を出産して来年度以降の働き方はどうすればいいのか、と悩んでいた私にとってタイムリーなイベントでした。

過去に育休明けの心理職の方と働いたときの経験からも、心理職が妊娠前のようにコンスタントにフレキシブルに働くことの難しさも感じていたこともあって、答えの出ない問題を抱えているような感じでした。

ですが、今回こしんかいに参加して、他の心理職ママさんとその思いを直接(オンライン上ではありましたが)共有できたということが大きかったように思います。

来年以降どうなるかということは領域によっても職場によってもまったく変わってくると思いますが、それでもみんな不安に感じていることをお互い大変だよね、と心理職同士共有できる機会はなかなかないと思いますので、ぜひ今後もこのような機会を定期的に持てると、1人で抱えているという感覚はずいぶん減るのではないかと感じました。

また今回は他の方々が育休明けの働きを経験されている先輩ママさんばかりでしたので、わたしとしては本当に参考になるお話ばかりで大変有意義な時間になりました。

ある意味心理職ママの互助会のような・・・そんな場所だったように思います。

ぜひ今後も開催されることがあれば参加したいと思います。

開催して下さったりんさん、他の参加者の方々、本当にありがとうございました。

最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

このような会を企画・運営するのは初めてで、「興味を持ってくださる方はいるのか」「申し込んでくださる方はいるのか」「うまく進行できるのか…」等、不安を抱えながら当日を迎えました。

おかげさまで、今回は多くの方に関心をもっていただき、4名の方にご参加いただきました。
一方で、冒頭でも触れましたが、興味はあるけれど日程や条件が合わずにご参加を見送られた方や、お申し込み後に諸事情でキャンセルせざるを得なかった方もおられました。

子育て中の心理職の方のピアサポートの場になるといいなという思いがあり開催した「こしんかい」でしたが、自分が予想していたよりもそのニーズは多いという印象を受けました。

子育てと仕事を両立するにはどうしたらいいのか。

一人の人として、親として、心理職としてワークライフバランスをどのように考えていけばよいのか。

そういった思いを持って日々過ごされている心理職の方々が多くおられること、しかしそれを共有できる場が実生活の中では多くはないことを改めて認識しました。
そして、こういったピアサポートの場の必要性を再確認したのでした。

今回は、参加者を
①子育て中の臨床心理士・公認心理師
②未就学児のお子さんがおられる方
に限定して開催しましたが、今後は“プレパパ・プレママさん”、“育休中の方”、”小中高生のお子さんをお持ちの方”、”○○領域でお仕事をされている方”など、さまざまなパターンでの開催にもチャレンジしてみたいと感じました。

私自身、今後も引き続き「こしんかい」を続けていきたい思いがあります。

一方で、今回企画・運営をするにあたって、私自身多くのパワーやリソースが必要だったことも事実です。

今後、自分自身がどのようにリソース(準備や実施のための時間や場所、家族の協力等)を確保していくかということについては、改めて検討が必要であると感じています。

今回「こしんかい」を企画するという体験を通して、自分自身学ぶことが多くありました。

さまざまな反省を踏まえ、今後の開催についても前向きに検討してみたいと思っています。

今後の開催につなげるために、もしよろしければこの座談会に関するご要望や、noteをお読みいただいたご感想やご意見をいただけると嬉しいです。
noteのコメント欄やX(Twitter)のリプ・DMなどにコメントをいただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。

最後に、今回「こしんかい」に興味を持ってくださった方、「お手伝いしますよ」とお声掛けくださった方、お申込みいただいた方、ご参加いただいた方、こうやってnoteを読んでくださった方、本当にありがとうございました。
皆さまのおかげで、第一回目の「こしんかい」は無事この報告レポ作成までたどり着くことができました。
今後も皆さまと助け合いながら、めまぐるしい日々を乗り越えていくことができればと思っております。

追記(2023/12/19)
ただいま、「こしんかい」の次回の開催を検討するためアンケートをおこなっています。もしよろしければ、ご協力をお願いいたします。
以下のフォームにご入力ください↓
https://forms.gle/MefYnzWwgAkCZVmn6

りん


おまけ


ご報告のレポートはこれで終了となります。
今回企画を実現するにあたって、実際はかなり右往左往し、失敗し、悩みました。
「こうすればよかったな」「ここが迷ったな、困ったな」という反省も数えきれないほどあります。
そんな「こしんかい」開催の裏側をありのままに綴ったnoteも同時公開しています。
こちらは有料(300円)とさせていただきます。(冒頭の約800字は無料でお読みいただけます)

1人で壮大な反省会を繰り広げていますので、もしご興味のある方はご覧ください。
※読まなくても全く問題はありません(笑)

改めまして、ここまでお読みいただきありがとうございました。



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