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環境課題への取り組みが地域愛を深める。湘南ベルマーレが目指す「循環型社会」のあり方

「たのしめてるか。」

そんな一言をクラブスローガンに掲げて活動しているのが、神奈川県平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市など、自然豊かな湘南エリアをホームタウンとする「湘南ベルマーレ」です。

湘南ベルマーレは、世代と地域を繋ぐクラブとして、チャレンジする人の成長を支え、夢と感動を提供することを使命に、たくさんの試合でファンの心を打ってきました。

これまでにJリーグ執行役員・辻井隆行さんやヴァンフォーレ甲府に続き、Jクラブの環境課題への取り組みについて伺ってきたCQプロジェクト。

今回は、「循環型社会」を目指した、湘南ベルマーレの環境課題への取り組みについて聞きました!

湘南ベルマーレ
Jリーグに加盟するプロサッカークラブ。神奈川県平塚市に本社を置き、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、秦野市などをホームタウンとして活動中。本拠地は、「レモンガススタジアム平塚」。チーム名はラテン語の美しい(bellum、ベルム)と海(Mare、マーレ)から由来している。

豊かな自然によって育まれた地域住民の環境意識を、湘南ベルマーレが後押し

湘南ベルマーレ社会連携部の風村ひかるさん

ーーまず、湘南ベルマーレならではのエコな取り組みについて教えてください!

風村さん:
湘南ベルマーレでは、地域の美しい海を守るために、定期的に「ビーチクリーン」を行っています。

2023年6月18日(日)に開催したビーチクリーンには、主催のスポンサーの方々を中心に、NPO法人の方々やサポーターを含めて、139名もの方が参加してくださったんですよ。

45分間のビーチクリーンで、最終的におよそ3,900ℓ 、45ℓ袋換算で86袋ものゴミを拾うことができました!

ーーそんなに…! 休日を使って、サポーターがビーチクリーンに協力するって、すごいですね!

風村さん:
湘南エリアは、山も海もある自然豊かな土地なので、我々の活動を抜きにしても、環境への意識が高い地域住民が多いんです。地域に根ざすクラブとして、そんな方々が集まって、環境に貢献できる場を作りたいと思っています。

また、海にゴミが流れないようにするためには、街や試合が行われるスタジアムからゴミを出さないことが大切ですよね。

そこで、湘南ベルマーレでは、試合が終わるたびに毎回スタジアムのゴミ拾いを行っています。

ーー毎試合後にゴミ拾いを開催しても、参加してくれる人がいるんですか!?

風村さん:
それが、毎回100人以上のサポーターが参加してくださるんですよ! それも、すごく意欲的に。

また、以前コロナ禍で試合ができなかった時期に「近所のゴミを拾って、SNSに投稿してもらう」というゴミ拾いキャンペーンを行い、サポーターの皆さんに参加していただいたことがありました。

これをきっかけに、その後もゴミ拾いを続けて、SNSに投稿してくださる方も出てくるなど、大きなインパクトがありましたね。

ーークラブの働きかけで、サポーターの日々の行動まで変わったんですね。

風村さん:
湘南ベルマーレが試合でうまくいかないときに、「ベルマーレの勝利の願掛けのために、ちょっとでも良いことをしよう」と、地域のゴミ拾いをしてくださるサポーターさんがいるくらいなんです。

「胸を張ってベルマーレのエンブレムをつけられるようなサポーターでありたい」とおっしゃって、クラブ愛で行動してくださるサポーターの皆さんがいるのは、環境課題の解決においても、クラブの活動においても良い土壌になっていると思います。

プラスチックで地産地消? 湘南ベルマーレがお米のプラスチック「ライスレジン」を使うワケ

ーービーチクリーンやスタジアムのゴミ拾い以外にも、取り組まれていることはありますか?

風村さん:
ライスレジン」という環境に優しいバイオマスプラスチックを使ったカトラリーでスタジアムグルメを提供したり、ライスレジン製のうちわを配布したりもしています。

ーー「ライスレジン」って何ですか?

風村さん:
ライスレジンは、その名の通りお米から作られたバイオマスプラスチックのこと。お米を最大70%まで石油性プラスチックに混ぜることで、石油製プラスチックの含有率を大幅に減らすことができる画期的な技術なんです!

スタジアムで提供されているライスレジン製のカトラリー。お米ならではの黄色みがかった色合いや優しい触り心地が特徴。

ーーお米からできているプラスチック! 面白いですね!

風村さん:
スタジアムからゴミを出さないことを目的に行っているゴミ拾い活動ですが、そもそも出してしまうゴミ自体も環境に優しい素材になれば、より環境課題に貢献できると考え、ライスレジンが導入されました。

さらに、我々はこのライスレジンで「地産地消」をもっと打ち出したいと考えています。実際に、現地でとれた野菜や魚を使ったスタジアムグルメを、ライスレジン製のカトラリーと共に提供して、地産地消を促しているんです。

目指すのは、勝ち負けだけじゃない。クラブが掲げる「循環型社会」のあり方とは

ーーこれらのさまざまな取り組みは、地球にやさしい反面、直接的にはチームの勝利に繋がるわけではないと思います。どのようなモチベーションでやられているのでしょう?

風村さん:
たしかに、試合での勝利には直接繋がらないかもしれません。でも、Jリーグに所属するすべてのクラブの願いは「地域が元気であること」なんです。

クラブが行っているエコな取り組みは、環境課題の解決だけでなく、地域を元気にする「経済の循環」も生むんですよ。

ーー「経済の循環」ですか?

風村さん:
たとえば、先ほどお話ししたライスレジ製のカトラリーによる地産地消の推進は、CO2の削減にも繋がりますが、それと同時に地域の中でお金が回ることにも繋がります。

実際に、スタジアムグルメを提供するキッチンカーの出店は、地元のお店や企業のみに限定しており、各出店者にクラブからライスレジ製のカトラリーを卸売しているんです。

年間20回行われるスタジアムでの試合は、それだけで大きな経済効果を生みます。そんな経済効果を最大限に発揮させたい。

だからこそ、クラブの経済効果で地域の中でお金が回るようにして、さらにライスレジン製のカトラリーで環境課題への意識を上げたいと考えています。

ーークラブの経済効果が地域の中で循環していくんですね!

風村さん:
環境課題への活動を通じて、有限である資源を効率的に活用し、クラブの経済効果を中心に、地域経済が潤っていくことが、我々の目指す「循環型社会」のあり方です。

また、地元の食材で作られたスタジアムグルメを食べて、そのおいしさに気がついてもらえれば、次はスーパーや地元の飲食店でも、地元の食材を選んでもらえるかもしれませんよね。
そんな地産地消の連鎖によって、地域愛が深まれば、地域に根ざしたクラブへの愛も深まるかもしれません。間接的ではありますが、地域に愛されるクラブになるためにも、環境課題への取り組みは非常に意義のあることなんです。

湘南ベルマーレの練習拠点「馬入ふれあい公園サッカー場」

風村さん:
また、実際に、湘南ベルマーレの練習拠点である「馬入ふれあい公園サッカー場」が、気候変動の影響で増えた台風によって冠水したことがありました。ピッチには、相模川から大量の堆積物が流れ込み、しばらくの間練習できなくなってしまったんです。

だからこそ、環境課題は我々にとっても、取り組んでいかなければならない重要な問題なんですよね。

環境課題への取り組みを「カッコいい」と感じてもらうことが第一歩

ーークラブの取り組みを通じて、地域経済が循環し、環境課題に取り組む人が増えるという理想的な形が実現しつつあることが伝わってきました!

風村さん:
スポーツを通じて、夢と感動を提供することを使命としている我々だからこそ、環境課題への取り組みも「カッコいい」と思ってもらえるようにすることが重要だと思うんです。

最初は環境に関心がなくても、湘南ベルマーレを好きになってもらい、好きなチームのために環境課題に取り組むのが、カッコいいことだと思ってもらいたいですね。

ーーたしかに、カッコいいことは進んでやってみたくなります。

風村さん:
そのためにも、現在の活動をもっと広めていく必要があります。現在は、スタジアム内での活動が多いため、今後は既存のゴミ拾いイベントなどをホームタウンにも広げていきたいです。

また、エコな取り組みが課題解決に繋がっているという実感を持ってもらえるような取り組みも行っていく予定です。

ヴァンフォーレ甲府さんや清水エスパルスさんがすでにやっているような、クラブの活動によって削減できたCO2排出量の見える化などは、取り組みに参加してくださるみなさんのモチベーションに繋がると思います。

そんな活動成果の見える化を、ライスレジン製のカトラリーによるCO2の削減や地産地消など、湘南ベルマーレならではの形で実施したいですね。

自然豊かなこの土地だからこそ、湘南ベルマーレの活動を中心に、課題解決の「小さな波」が立っていくよう、これからも地域住民やサポーターのみなさんと力を合わせて、取り組んでいきたいと思います!

(取材・執筆=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)/(撮影=深谷亮介(@nrmshr))

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