クリームソーダ飲みたい

クリームソーダを飲みたがっているが、実際に喫茶店に行くとコーヒーを頼む。

クリームソーダ飲みたい

クリームソーダを飲みたがっているが、実際に喫茶店に行くとコーヒーを頼む。

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浮遊した喫茶店にて

最近、喫茶店のモーニングにハマっている。癖のないブレンドコーヒーとバターの効いた八切りトースト、こんもり盛られたキャベツのサラダと、キンキンに冷やされた固いゆで卵、そして豊かな朝が提供される。それで500円玉でおつりがくるんだから、この消費加速利益の社会において、重い木のドアを隔てたシェルターだ。 4年この街に住んでいて、ようやくこの喫茶店を知り、入り浸るようになったのはごく最近。きっかけはいつも突然にやってくる。春の終わりの深夜に、徒歩10秒のところに住む友人と散歩をした

    • 近況レター

      お元気ですか。 わたしはなんとか理由を探して元気なつもりで生きています。 繁殖以外の目的を持つようになった人間は、自分自身はどのように生きていくべきかの命題を抱えてしまいます。 貴方たちを考えて気を病むということも、寝ないで朝を迎えるということも、一人で生きていこうとすることも、なくなりました。 部屋に花を飾ることが増えました。 24歳になりました。 ____  ひとり呑みが好きだ。  夜、仕事を切りよく終わらせて足どりが軽い。真っ直ぐな四車線の両端のマンションやビルの

      • 或る日の記① 大学の狩人

        「乱」と「北」どちらが字の形が美しいか。 大ホールで行われたコンテストの命運を分ける私の一票は「舌ヒ」と書かざるを得なかった。  起きた時「心」こそが上位に入るだろうと思った。二度寝から目覚めて、天窓の青さに寂しさを感じ、分厚い食パンにイチジクのジャムをかけて食べた。  ある人はクレオパトラと言い、ある人は天功と言い、ある人は山口小夜子と思っている海風のような素敵な女性と、昼下がりの大学の森の中のオアシスに新聞をひいて座り込みながら、宗教学第4回目の講義の冒頭13分だけ受け

        • ヘアアクセには他人の髪を

          大学の卒業式を目前に控えた私は、ある強迫観念に支配されていた。 「絶対に、袴にはハーフアップでなければならない。絶対に。」 どこで身に付けた主義主張、偏見なのか定かではない。憧れ、という生易しいものでもない。お賽銭には5円玉、贈り物にはアワビの干したやつを模ったイラストをつける、そういう社会通念と宗教がごっちゃになったぐらいの、意味分からないけれど強固な力を持った観念があった。 この観念は今さっき浮かんだものではない。半年前から何となく思っており、ショートヘアだったのに

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        浮遊した喫茶店にて

          「ネコ人間」という生き物

          私はネコ人間だ。 大学の講義の一貫で、学生数名で一冊の本をつくることになった。講義で与えられたテーマは「公共性」。「公共性」に関する本をつくらねばならないが、手垢にまみれたこの言葉に対してそこらの学生が何か主張したところで、先人が議論しているだろうし、何かを変えられるようなエネルギッシュな考えに行きつけるわけではない。なにより、堅苦しくてつまらない。あーだこーだ夜が更けるまで議論して、「ネコの本をつくろう」と話がまとまった。メンバー全員がネコ好きだったから。猫から世界を見る

          「ネコ人間」という生き物

          「ラジオ 深夜喫茶」#2

          皆様、こんばんは。ご注文はお決まりでしょうか。オレンジジュース、ロイヤルミルクティ、ウイスキーをおひとつ。 おっといけない、喫茶店では法律上アルコール類はお出しできないのですよ。「喫茶店営業許可」と「飲食店営業許可」というものがございまして……っとそんなことはどうだって良いんです。 だってこれは電波にのせた喫茶店。電波ではアルコールを届けられませんので未成年の方も下戸な方もどうかご安心してお聴きください。今夜も始まりました「ラジオ 深夜喫茶」。ご来店時の除菌もね、できない

          「ラジオ 深夜喫茶」#2

          私は私に恋をする

          以前の記事で、名も性別も何もかもわからない、ただ向かいに住んでいる窓の住民に恋をして、失恋した話を書いた。 その続編の話をしようと思う。 私は一体、何に恋をしていたのか。その窓に住んでいる住人という概念に恋い焦がれていた。 コロナ禍の春、緊急事態宣言、外出自粛、一人暮らし。私は自分以外の存在を欲していた。そんな中、皆が寝静まった深夜に一人黙々と勉学に励み、心地よい風の日にはベランダから写真を撮り、オクラを育てている粋なあの窓の住人。その住人を私の心に住まわせ、勝手に恋を

          自粛期間中、窓の恋

          窓から見える、道路挟んで向かい側のアパートの一室の住人に恋をした。 コロナが流行し自粛せざるをえない日々、窓からの景色が本当の世界を伝えてくれる唯一の存在だった。私が世界で一人だけ取り残されているわけではないという唯一の証明だった。 ある春の夜、所属している学生団体でのZOOM会議に参加していた。仕事も講義も飲み会も全部オンライン上で行えるなら、都市の存在意義はどうなるのだろう。もはやSNSも一種の都市と呼べるのではないか。しかし、オンラインには偶然の出会いが存在しにくい

          自粛期間中、窓の恋

          手紙と、レモンの輪切りの話

          今日の正午過ぎ、私は名も住所も知らない女の子に手紙を出した。その話をしようと思う。 3日前の夜、私は無性に手紙を書きたくて堪らなかった。特に書きたいことがあったわけでも、何かに感化されたわけでもなかった。どうしても梅干を食べたい日や、どうしても横断歩道の白いところだけを渡りたい日があるように、どうしても手紙を書きたい日があってもおかしくない。1年は366日もあって、1日ぐらいそんな日もある。だから、私は手紙を書き始めた。 とびっきりの便せんを使うことにした。第三者から見る

          手紙と、レモンの輪切りの話

          蛍光グリーンの発泡酒

           私は「20歳女子大生」である。最悪だ。これだけで勝手に消費の対象になる。この世で消費されることほど嫌いなことはない。鯖缶を開けて中の液体が素足にぶっかかる以上に嫌なことだ。そう、今さっき素足に鯖缶の液体がぶっかかった。今さっきって深夜3時ね。私はシャワーを浴びようと思った。どこを歩いてもヌルヌルするし、良いスメルがする。最悪だ。しかし同時に今日は素晴らしい日だ、とも思った。なぜ素晴らしいと思ったのか言語化するのは難しい。かろうじて例えるなら、鯖と私が一体となった感覚……いや

          蛍光グリーンの発泡酒