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ごりまる母さんメラピークへ⑤(全10話)



上がる標高とトイレ回数の密な関係

標高が少しずつ上がるにつれ、朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。
夜、就寝時に寝袋に入る時は厚手のももひきに毛糸の帽子。
そして真っ暗闇の中、ヘッドランプの灯りを頼りにロッジの外に建てられた小さなトイレ小屋に行くことはなんとも億劫なことでした。
なるべくギリギリまで我慢するのですが、「あの時すぐトイレに行ってたら、今頃はもう帰って来て、また寝れてる...」と思いながらも、温まった寝袋から出る勇気もなく時間だけが過ぎ去ってゆきます。
「あぁ…なんであの時ササッとトイレに行かんかったんやろ…」
そんな後悔と寝不足で朝を迎える負のループの始まりです。

ついにきた!高山病の症状が

朝、寝袋の中で目を覚まし、目を開けるとなんだか瞼が重い...
部屋のガラス戸にうっすら映る自分の顔。
「霞んで見えるぞ。帰ったら視力検査に行ったほうがよさそうやなぁ」などと呑気に1歩ガラス戸に近づき、ハッとその瞬間跳ぶようにまた1歩後ずさり。

むっちゃ腫れとる!顔、パンパンになってる。。。

標高うんぬん抜きにして、普段の顔でさえ大きめの顔が、ぱっつんぱっつんになっています。
そして、手も霜焼けになったかのように浮腫みが。

ついに出た。高山病の症状。

食堂にいたパサンに「見て。私の顔、風船みたいに膨らんどる…」と言うと
彼は「いや。そうかなぁ。そうでもないと思うけどなぁ。」と、何か見てはいけないものを見てしまったかのようにフッと目をそらし、笑いをこらえています。

この日から高山病の症状に効果があるといわれるダイアモックスを朝晩2回、125mgずつ服用を始めました。

夜は寝れないもの

ダイアモックスの副作用として、手先や足先の痺れ(小学生の時、全校集会で校長先生の長い話を正座して聞き、立ち上がった瞬間に足先に感じる電流のようなピリピリするあの感じです)やトイレ回数の増加があります。
服用を始めてから、夜間のトイレ回数が1 回→ 3 回に増えました。
1度寝袋から出て冷えた体はすぐに寝つけるほど温まってはくれません。
なんとなくうつらうつらし始めた頃には、またトイレに行きたくなります。
‘’深い眠り‘’ という言葉がこの世に存在するんか?!と思うほど ‘’浅い眠り‘’ の夜が服用を開始した日から、標高が下がり服用が必要となくなる日まで続くと思うとゲンナリします。
もう「夜は寝れないもの。ちょっとでも寝れたらそれでええ」ということにしました。

Day 7 : Khola Kharka - Kote

[歩行時間]7時間
[Kote 標高 3600m]

Khola Kharka からKoteまでの道のりでは
映画のセットに出てきそうな
苔むした森の中を歩いてゆきます
素晴らしい晴天
左から田村正和さま(Ken)・パサン・私
森の中でお昼ごはん休憩

ケンに異変が

苔むした森の中でお昼ごはんを食べ、休憩をしている時です。
ケンが心なしかグッタリするような感じで長座し、ザックに上半身をもたれかけ休んでいます。
ケンもここ数日間、ぐっすり寝れていないことを知っていたので、眠気が襲ってきたんだな、少しでも寝れれば良いなと彼をそっとしておきました。
休憩後、今日の目的地であるKoteへ出発しようとザックを背負い、準備している時です。
ケンが脱力したように地面に倒れました。
彼の顔は蒼白で、嘔吐も始まり、パサンが急いで先行していたポーターのチームに連絡をとり酸素ボンベを持ってきてくれるよう伝えています。
私たちはそろそろ出発しないとKoteに到着する前に夜となってしまうとのことで、ロブ・アンディ・私・チェワン(もう一人のクライミングガイド。パサンの甥にあたります)の4人でKoteに向かって出発しました。

酸素ボンベのセッティングをするパサン
布で救急おんぶひもを作って
ケンを搬送
ポーターの皆さんが到着し、ケンを交代で
今晩の目的地であるKoteまで搬送。
皆さんのチームワークの素晴らしさ。
そして、先に出発していた私たちをあっという間に追い越して行ったスピードには驚嘆。

皆がそろってKoteに到着

ケンの状態はどうなっているのか、少しでも良くなってくれていることを祈りながら私たち4人は遅れて無事Koteに到着しました。

無事にKoteシェルパゲストハウスに到着

まとめ

ロッジから見える遠くの山々は緑の山から雪山へと変わり、標高が上がってきたのを実感。
「ここまで来たか」と改めてヤル気と共に気も引き締まります。

ですが、ジョンがチームを離れた2日後、今度はケンが高山病で体調不良となり、再びチーム皆での話し合いが持たれる事となります。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

もうしばらくお付き合い下さると嬉しいです。