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なんのためにクイズを観るのか〜『ユリイカ』クイズの世界「クイズ王とは何者なのか?」に寄せて

あの伝説のゲンロンカフェトークが再配信されると聞いて!しかも1200円で永久に見返せると聞いて!いつかまとめたいな〜と思っていた所感をこの機会に。(せっかく今年からnote始めたことだし……)

この記事は主に『ユリイカ』2020年7月号 特集=クイズの世界「クイズ王とは何者なのか?」について、クイズを殆ど知らない、でもクイズが好きなオタクが書いています。

2020年6月28日時点の所感

(購入直後に読んでツイートしたものの転記)

ユリイカ7月号の所感を・・・冒頭の対談(鼎談)素人でも理解しやすいクイズの歴史振り返りに引き込まれた。「クイズは出題者と回答者の共犯関係で成り立ってた」というお話になるほどな~となった。

伊沢さんによってクイズ王がアイドル化(偶像化)されている事を徳久さんに指摘されて、僕のせいです と返す伊沢さんが何とも・・・勉強ができる=クイズが強いという風潮になってしまったのを「伊沢のせいということですね(笑)」と指摘した田村さん含め3人のバランスが良すぎる鼎談だなと思いました。思想が一致しすぎている(徳久さん談)なるほど、、

「思想が一致しすぎている 」と思ったのがもう一つ、伊沢さんと田村さんの個人の寄稿、テーマも違うし展開の仕方も全く違うものだったのに、お二人共「(この論考が)批判的な検討に、議論の出発点になるべく」といった締めをしていて、似ているお二人なんだな・・・と思った

特に訂正したい事はないけれど、何を言いたかったのかは自分でもよく分からない。ワクワクしたまま、とにかく思ったことを書きたかったらしい。

2021年4月現在 読み返してみて

2020年6月時点と現在とで異なっていること(その間に触れたもの)
・伊沢さんの著書『伊沢拓司の軌跡Ⅰ、Ⅱ』を読んだ
・クイズLIVEチャンネルの動画を片っ端から見た
・この鼎談で度々話題に挙がっている「abc」過去大会のDVDを大量に見た
・関連して「abc」やそれ以外の大会の問題集や記録集を買って読んでみた

①理解しやすいクイズ史
内容は お三方の自己紹介(経歴紹介)→クイズ史振り返り(現代はお三方の実体験を交えてのお話)→クイズ王とは(クイズ王の消失)という構成。
一番のメインであるクイズ史の話が難しい部分もあったのだが、時代ごとに「夢の時代(1963-1985)」「王の時代(1985-1995)」「常識の時代(1995-2008)」「超難問の時代(2008-)」と名前が付けられていて、これがとても分かりやすかった。
読むまではそんなに細分化できるほどクイズに深い歴史があるのか・・・?と(正直なところ)疑問だったけど、実際は奥深かった。
テレビのクイズ番組変遷(出題者と回答者の共犯関係で成り立っていた)、「クイズ研究会」が何故「研究会」なのか、「クイズ荒らし」の話・・・ただただ〈面白いな〜すごいな〜〉と頷きながら読んだ。初めて知ることが多すぎて感想としてはそれ以上に思うことがない。とにかく面白かった。

②短文クイズが当たり前でなかったことの衝撃
私が思う早押しクイズのイメージは「文脈の一部から問題文を推測し、いかに早く押して解答するか」であったが、それは「短文基本問題」と呼ばれていて90年代以前の「難問長文化」に対抗して出てきたものだということ。そしてこの「短文基本問題」が広まったきっかけが「abc」だということをこの鼎談で知って驚いた。
徳久さんが初めて触れたというクイズの記録集はスルーも多く、ペーパーを解いたらあの徳久さんが60点中3点で、それでも褒められたというのを読んでますますこの「難問長文」とは一体!?となっている今日この頃。どういう問題群なのか、私、気になります!(CV:千反田える)
何を読めばその一端に触れることが出来るのだろうか・・・今でも流通している問題集なのだろうか・・・。「難問長文」として有名なオープンがあるのならばそれを知りたい。

③「abc」=整備の行き届いたF1サーキット
鼎談全体を通して一番面白い!と思った徳久さんのこの言葉。10年分の「abc」を観た今はたしかにF1だな・・・とも思う。
私自身は「abc」を見ていて味わう爽快感を「バスケで言えば相手のターンオーバーからの速攻→ダンクをずっと見ているような気分」と表現したのだけれど、(競技クイズとは最高のエンターテイメントである
プレイヤーが一問一問を秒単位で争う、(元プレイヤーならではの)大会を知り尽くしているスタッフによる運営、洗練された問題群、凝られた演出・・・その全て含めF1サーキットという表現は最適解だなと。そしてやっぱり私はその整備され尽くした「abc」が好きだなあと改めて。(私にとって初めて見たオープン大会で親鳥のような存在であるのと、abc以外のオープン大会を数える程度しか観ていないので他を知らないだけというのは否めませんが・・・)

④クイズができる=東大ではない
勉強ができる=クイズが強いという風潮になって"しまった"のを「伊沢のせいということですね(笑)」と田村さんが指摘するように(その後伊沢さん自身も認めていらっしゃる)現在のクイズ王ブームは「東大王」の影響もあってクイズ=勉強=高学歴のイメージはかなり強いと思う。
身近なところで言えば、伊沢さんにあまり詳しくない友人に伊沢さんの話をしたり、クイズを観るのが好きな話をすると「東大だもんね」という第一声が(ほぼ間違いなく)返ってくる。何なら東大以外でクイズをやってる人はたくさんいるという話をして驚かれたこともある。
私自身クイズ=勉強のイメージはそこまで持っていなかったが大会の問題集(記録集)を読むことでこの二つは大分異なっていることに気付いた。こと「東大」に関して言えば学生クイズ界を席巻しているのは恐らくここ5~6年の話であって、歴代「abc」のペーパー通過者を見ていても東大生が開始当初から大半を占めている訳ではない。
かと言って、私はクイズと勉強を完全に切り離して考えて良いとも思っていない。
クイズが強い人=クイズの為の勉強ができる人=勉強をする努力ができる人なのではないかと。いくら趣味と言えども知識を取り込むという作業は勉強とかなり似ていて、それが面白いと感じれる人は勉強も頑張っている=頭がいいに自然と繋がってるのではないかと思う。負けず嫌いが転じて勉強を頑張っているクイズプレイヤーが多そう、という非クイズプレイヤーによる勝手なイメージ。

⑤なにのためにクイズをするのか
棋士に「なにのために将棋をするのか」とは訊かないのに、クイズプレイヤーには「なにのためにクイズをするのか」と何故訊くのか、という話はそりゃそうだよなと。「クイズは勉強の役に立つのか?」という意見は前述の通りそもそも論点が異なっていると私も思う。
(現状)クイズプレイヤーになりたいという願望もなく、ただクイズを観ている私がもし「なにのためにクイズをみているのか」と訊かれたら「ただ楽しいから、面白いから」と答える。
観ていて楽しいから大会のDVDを集めて、記録集を買っては面白いなと読み漁っている。それ以上でもそれ以下でもない。
権威としての「クイズ王」は不要になる=「クイズ王」は消失したという締めくくりになっているが"クイズ観戦者"としては"既存のクイズ王"を見続けていたいし”クイズ王の誕生”にも立ち会ってみたいなと思う。
上記は既に「クイズ王」と呼ばれている伊沢さん、徳久さん両名の意見であるから「勝手になくさないでくれ!」と叫んでいるクイズプレイヤーが本当に日本中に居そうでクスッとしてしまった。

おわりに

思想が一致しすぎている三人(徳久さん談)の鼎談、クイズのあれこれをちょっと齧ってから読み返すと理解できることが増えた(ような気がして)一層興味深く面白かったです。
また、購入当時の感想とダブってしまいますが伊沢さん田村さん両名の個人寄稿の締めが「(この論考が)批判的な検討に、議論の出発点になるべく」であることに改めて"思考が一致しすぎている"を感じて、実際にこの論考や鼎談に対する他の方々の論考を読んでみたいと思いました。

次の記事では「ゲンロン」トークについて、私が思うクイズの観戦文化を交えて書きたいと思います。
本放送のチケットもお正月にあった再配信のチケットも購入して何回も観たはずなのにさすが8時間、忘れている内容の方が多い・・・伊沢さんの著書『伊沢拓司の軌跡Ⅰ、Ⅱ』片手にしっかり見直します。(この本のおかげで理解できることが多い)

さくっと書きたかったのに4000字近くになってしまった。ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!

クイズって…面白!!…(CV:リューク)


おわり

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