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” ゾーン ”に入った思い出

みなさんには忘れられない思い出はありますか?
人生で最も気持ちいい瞬間であったり、楽しい・嬉しい瞬間であったり、悔しい・悲しい瞬間であったり……。
私にも1つだけ忘れられない思い出があります。

” ゾーン ” に入った思い出です。

ゾーンとは、アスリートなどが経験する「極限まで集中した状態」のことを指します。
元プロ野球選手の川上哲治氏(一説には小鶴誠氏とされることもある)が言ったとされる「ボールが止まって見えた」という言葉は、まさにゾーンに入った感覚を分かりやすく表現していると思います。

そんなアスリートの中でもトップクラスの人間しか経験することができないとも言われるゾーンですが、私が経験したのは中学3年生の時です。
あまりに早熟です。

私は中学時代、サッカー部に所属していました。
正直、毎日の練習はつらく、あまり真剣に取り組んでいませんでしたが、人数が少なかったため試合には出させてもらっていました。

そして、中学最後の大会でもレギュラーとして出場していました。
試合は1対1の拮抗した状態で、延長戦に入りました。
私たちにとっては初めての延長戦で、苦しいほど体力も消耗した中でチーム全員が極限状態に達していました。
それでも決着がつかず、試合はPK戦になりました。

私たちのチームは後攻で、私は4人目でした。
相手チームの4人目まで全員が決めている状況で、私が外してしまったらチームの負けが濃厚になる。

そんな大事な場面で、「このPKを外したらつらい練習も終わりか」という邪な考えが浮かんできました。
その考えがどんどん膨らみ、頭がそれでいっぱいになりました。
すると、迷いがなくなったからか不思議と集中力が高まり、ボールをセットして相手ゴールキーパーの目を見たときに、向かって右に跳ぼうとしているのが分かりました。

「左に蹴れば絶対に決めることができる」

そう確信しました。
その時は気が付きませんでしたが、恐らくゾーンに入っていたのだと思います。
蹴る瞬間、予想通りゴールキーパーが右に跳ぶのが見えました。
私はそのまま脚を振り抜きました。

ボールは左上に向かって飛んでいき……、そのまま枠の上に外れていきました。
そこで私の中学3年生の夏が終わりました。



最終的な結末は、私の怠慢な気持ちがそうさせたのかもしれません。
ただ、疲労も最高潮に達した状況で非常に集中力が高まりながらも、とても冷静で自信に満ち溢れていたあの瞬間のあの感覚は、後にも先にもそれっきりで今でも忘れられません。

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