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アニメ「ガールズバンドクライ」第六話感想

物語に急ブレーキをかけたね
いや、メンバーも二人加入して話は進んではいるけど、その進む回だからこそ初回から続いていた心情のスピードにブレーキをかけて意図的に物語の方向転換をし、しかしそれに気付かせない
このあたりの意図的な視聴者のコントロールは流石だな

1)一つ目のブレーキ プロへの意識

今迄の物語の推進力は仁菜が九州から追い出されてやってきた心の中にある葛藤の発散だった
それは凄く効果的に物語を動かしてきたけれども、バンドと言うツールを見つけてライブで一つの成功をした時点で一つの到達点に達した
仁菜としては発散方法を見つけから

確かにヒナとダイダスと言う「敵」が現れ、それを倒す展開も推進力として強く残っている
しかし、物語の方向性が「敵を倒す」で良いのかという懸念はある

メンバーが揃うこの辺りで、単に主人公仁菜の心情に寄り添うだけの物語から方向性を変える必要があるかも知れない

仁菜はダイダスを強く意識し、プロになる方法を探る
それは物語の推進力の一つのブレーキだ

高校中退者としてモラトリアムのぬるま湯の中、ただ楽しいだけのバンドをする
今迄の推進力は仁菜の鬱屈だから、それを発散する方法に色々制約をつけるプロへの道はブレーキとなる
仁菜が勉強しないのも今迄は一つのギャグみたいなものだったが、それが人生を賭ける重い選択に変化していく

2)二つ目のブレーキ 敵を倒す目的への疑念

そして勿論、仁菜のプロになる動機が「ダイダスを倒すこと」であることへの懸念そのものも、物語のブレーキだ

仁菜はダイダスを倒すためにプロになりたい
それはダイダスに数で勝つこと
数で勝つには受け入れてくれるファンが好むことをすること
その為にはアイドル的な事も辞さない

仁菜はロックンロール馬鹿だ
目的の為に手段を選ばず、本来のダイダスのアイドル的な方向性を否定するという目的から外れてしまう
それはすばるによって一瞬で否定されてしまうが、この段取りによって仁菜のダイダスを倒すと言う新たな物語の推進力にも疑念が生まれる

自分を曝け出す、そのロックンロールに「敵を倒す」と言う物語の推進力が沿っているのか
今迄ただ感情のままに進み、快楽を貪ってきた仁菜だけど、その行き着く先がイジメへの恨みであり復讐の成功だけであってよいのか
そんな虚しいことにガールズバンドの物語としての意味があるか

仁菜は生粋のロックンローラーとして、いつかは正しい答えを出すだろうが、その為に今は立ち止まる必要があるだろう

その答えは今は出さず、しかし結果的にプロへの道を進む過程でダイダスと切り結ぶことにはなるらしいが

3)三つ目のブレーキ 桃香のモラトリアム

そして意外だったのが桃香のモラトリアムだ
仁菜に出会いすぐさますばるを連れてきた桃香が、今になって仁菜のプロへの意識に難色を示すかの様な言動をする
その結果、新メンバー加入にも慎重になる
新メンバーは欲しがっていたベースと鍵盤の二人ユニットで、既に楽曲発表により2万のフォロワー迄付いている
もう神の采配の様に都合の良いメンバーが降って湧いているのに、その加入を桃香が喜ぶことは無い

桃香は一体何を考えているのか
すばるは桃香が一度プロを諦め自信無くしたのが理由だと語っているが、それならば仁菜に引き留められて以降の今までの行動はなにか
桃香がプロとして再起を図るためのものでは無く、ただ仁菜やすばるをサポートするための行動だったのか

この桃香のモラトリアムには自信を無くしたこと以外にもいくつか理由が考えられる

一つは仁菜達の人生を左右する責任の重さ
これは今でも想像しやすい理由だ

そして他にも物語で隠されているかもしれない理由が考えられる

一つはニ話感想でも語った仁菜の才能の問題だ

桃香が川崎に残ったのは、自分の才能をもう一度確かめる自分の意志によるものか、それとも仁菜の才能を手に入れれば上に行けると思ったからか
そんな仁菜の才能に頼った自分の選択に躊躇しているのでは無いか
この躊躇はもしあったとしても、バンドが一人では出来ないと言うことから幾らでも納得して受け入れることはできるだろうが、物語としては一つの山を作るかもしれない

そして桃香はもう一つ大きな爆弾を抱えているかもしれない
それは桃香とヒナの関係だ

桃香はヒナと会っていないと言っている
その台詞が引っ掛かっている

ヒナは桃香がダイダスを脱退した後に加入したメンバーだ
普通に考えれば会って無いのは当然だろう
それなのに、なぜ敢えて「会っていない」と仁菜に語ったのか
そのほんの少しの不自然さに桃香の引け目を感じる

桃香はヒナに会ってない
けれども新メンバー加入のオーディションに何らかの形で関わり、桃香がヒナを推薦したことが大きく作用しヒナが採用されたのでは無いか

つまり、桃香は仁菜の最大の敵ヒナを作り上げた張本人なのではないか

そんな仁菜に対する引け目があるから「会ってない」などと不自然な事を言ったのでは無いか
その弱みから今迄仁菜のサポートをこれほどまでに熱心にしていて、しかしこれ以上深入りするのを恐れてプロへの意識を否定しているのでは無いか

そして、ヒナは桃香の推薦の事を知っていて、桃香を一方的に慕っているかもしれない
ヒナが桃香に会った時、その事を仁菜の前で告白するかもしれない

この妄想はもし本当に起こってしまえば、物語最大の爆弾になるだろう

4)ガールズバンドクライ

色々と懸念はありつつ、だからこそロックな物語として期待の出来るバンドは遂に結成する

あらゆるブレーキがかかった事で、物語はこれまでと同じ様な展開にはならないだろう

仁菜と言う主人公がただ一人自己実現していく物語は終わり、より大きな問題を抱えているかも知れない新メンバーの問題、そのより本格的なバンドとしての成功を目指す物語が、次回以降、新たに始まるのかもしれない
作り手は敢えて物語にブレーキをかける手腕から、次の展開に自信があるのだろう

登場人物の全てが学校に通わず、社会の安寧から外れた存在だ
バンドとして生き残りをかけて戦っていく必要があるだろう

己の道を作るのは己のバンド活動のみ
正に「ガールズバンドの叫び」と言える物語、ガールズバンドクライが、次回から本格的に始まるのかもしれない

おわり

✴︎おまけ

少し興が乗ったので川崎に立ち寄ってガールズバンドバンドクライの聖地でこの文を書いたり
ほんの少し滞在しただけだけど、やはり筆が乗るね
その分、妄想全開になっちゃったけど^_^;

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