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バンドリアニメMyGO感想1 高松燈について

MyGOにどっぷりハマってる
自分としては10年に一度の傑作だと認識し、MyGOの事しか考えられない位の日々を過ごしてる
こうなると長文感想を書きたくなる
長くXユーザーだったのだけど物足りず、こうしてNOTEを始めた次第
どこから書こうか迷ったが、やはりキャラの深掘りが書き易いと思い、まずは高松燈について書いてみる
なお、ネタバレバリバリ有りなのでご注意を


1)羽丘の不思議ちゃん 高松燈

高松燈

高松燈は不思議ちゃんだ
幼少の頃から気に入った何かを集め揃えるのが好きで、自分の感性が他人と違うことに悩み、おしゃべりもあまり上手く出来ない
その鬱積をB5ノートに言葉や絵として書き記す癖も持っている
このキャラクター造形が実によく出来てる
このような特殊な性格を全ての場面で一貫して描いていて、どの描写でもリアリティがあって綻びを感じさせず、感心させられる
そして、この性格だからこそ燈がバンドの核として全ての原動力となっていく展開は、他のどんなバンドストーリーよりも熱く、リアルで、心を打つ

2)高松燈の収集癖

高松燈の収集癖の対象は、彼女自身としてはどのようなものでも良いらしい
ペンギンの絆創膏集めに対し、愛音から「ペンギンが好きなの?」と訊かれても、「集めるのが好き」と答えて対象物への好意を語る事は無い
自分がただ衝動的にその対象を集めているだけなので、「集めるのが好き」なのは認めても、「ペンギンへの好意」は認めない
この彼女の認識は、一体どの様な意味を持つのだろうか?
高松燈は、自分の心の中に他者への愛情があるかどうかを疑っている
この台詞を聴いた瞬間に、このキャラクターの人物像が実体をもって感じられ、一気に物語に入り込んでしまった
実際には、燈はペンギンが好きだから集めているのだろう
燈は、ほんの些細な道端に転がっている石ころですら拾い上げるが、それを丁寧に磨きあげては自身のコレクションにする
彼女の私室には様々なコレクションがあり、そのどれもが丁寧に整理され、綺麗に並べられており、そこには確かな愛情が存在するのは明白だ
それでも、燈は自分の心の中の愛情には気が付かない

収集癖

3)高松燈は何故おしゃべりが下手なのか

高松燈の収集癖の源泉は、その様な様々な些細なものに対する愛情から来てるのだろう
自分が気に入った物は全て見捨てられない
全てを大切にしたいという、ある意味子供じみた、万物への根源的な慈愛
それを捨てられないのが、高松燈という人間だ

そして、そんな彼女の収集癖の対象は自分の心にも向けられているようだ
自分の心に浮かぶ感情は当然全て本当だし、大切にしなければならない
それ以上に、自分に起きたあらゆる物事の価値に大小はなく、すべてが大切
例えそれが苦しみや悲しみにつながる事象だとしても捨てることはしない
どれも全て同列に並べ、自分の心としていつまでも持ち続ける
燈のモノローグや、彼女の書き記すB5のノートからは、そのような彼女の心の有りようが見て取れる
この様な心の燈が、その言葉を上手く吐き出せないのは当然といえるだろう
しかし、だからこそ、燈はその並列の心をB5のノートに書き殴る
整理されない全ての感情は、絵や文字としてバラバラに吐き出すことで少しだけ整理出来たり、他者に対する「伝えたい」という想いを慰めるのだろう

燈のノート

4)高松燈は何故泣けないのか

自分の心を整理出来ない高松燈は、極めて不器用な人間だ
燈は大切なバンドが解散し、中学校を卒業する段になっても、涙を流すことが出来なかったようだ
それはやはり、燈が不器用故に心の整理が出来なかったからだろう
哀しいでも無く、苦しいでも無く、愛おしいでも無く、悔しいでも無く
その全ての感情を大切に持ち合せ、一緒くたにして心の中に積み上げる
そして、誰にも想像出来ないような巨大な感情を持ち合わせていたとしても、逆に、それが故に「泣く」という行為に結び付かない
自分が泣くことの出来ない人間だと思っている彼女は「人間になりたい」という言葉を綴る
自分は人とは違う感性の持ち主であり、人間ではないとすら思っている
それは自分自身への不信であり、「自分の心の中に愛情があるか」すら疑う側面にも繋がっている
そんな燈にとって、バンド「CRYCHIC」との出会いは正に救いだっただろう
自分のB5のノートに書き殴った言葉を認めてくれる人がいて、バンド仲間とは「人間として」対等な付き合いが生まれた
だからこそ、その解散を改めて理解した時、燈はこのバンドにだけは涙を流せると認識することになる

大切なもの

5)英雄譚 高松燈の地獄巡り

高松燈にとってバンドこそが救いであり、唯一自分が「人間として生きられる場所」でもあるが、同時に自分が壊してしまったとも思っている
そんなところからアニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の物語は始まる
当初、バンドから遠ざかっていた燈だが、千早愛音からの勧誘によって旧バンドメンバーの長崎そよ、椎名立希と、新メンバーの要楽奈を含めた新バンドを結成するに至り、ライブも一度は成功させる
その経験により、燈は改めて自身の言葉に他人に何かを伝える力があることを認識することになる
そして同時に、自分以外のみんながバンドによって何かを成し遂げたい、ある意味「人としてしっかりしたい」と思い、また、何らかの問題を抱えていることにも気付いていく
これらの気づきの過程こそがこの物語の中心だが、それは燈にとってとても苦しいものになっている
しかし、その地獄巡りのような体験があればこそ、燈の本来の姿が浮き彫りになる
全てのバンドメンバーが傷付き、バンドから離れる最悪な状況の中、それでも燈は言葉を紡ぐ
そして、その自らの中から自然に湧き上がってくるこの言葉こそが、自分の力であることに気付かされた時、そのただ一つの力、言葉だけを武器に、全てを取り戻そうと一人で行動を起こす
誰よりも巨大な感情によって生み出された強い力を持つ言葉を武器に、万物への慈愛によって誰一人欠かすことなくメンバーを取り戻すため、たった一人ライブハウスのステージに立つ
その展開は、地獄巡りを経て、真の力に目覚め、たったひとりで世界を救う旅を始める、英雄の物語のようだ

集結

6)高松燈が見ている世界

バンド「MyGO!!!!!」がやっと軌道に乗る12話ライブシーンのMCで、高松燈は少し不思議な言葉を使う
自分達を騙していたと伝えられている長崎そよに対し「バンドを大切にしてくれてありがとう」と言うのだ
これはそよ自身にしてみれば真逆の言葉である筈で、真正面から受けとめられず目を反らしてしまう
燈は何故この言葉を選んだのか
燈が本心からこの言葉を発しているのは間違いない
もしかしたら、燈にとって「CRYCHIC」も「MyGO!!!!!」も全て同列であり、そよがその内の一つだけを愛していたとしても、まったく関心が無いのかもしれない
高松燈にとって全ての事象は元々整理されて無いものなので、何かを判断するときは心の雰囲気で判断しているのではないか
そよが、いずれかは別にバンドを大切に想い、その為に誰よりも熱心に行動していたことは燈も認識している
更に、愛音や楽奈を入れた「MyGO!!!!!」初めての曲の歌詞が出来た時も、そよは自然に喜んでいるように見え、その心がどこにあるかは分からない
実際、そよの心は「MyGO!!!!!」にも傾きつつあり、その心の雰囲気を燈は感じ取っていたのかもしれない
だからこそ10話のそよの行動は、結果的にあの様なものなったのかもしれない
他にも、高松燈が行動する時は、事象を幾つか飛び越える様な判断になっている事がある
それは、全ての感情を大切にしている彼女だからこそ、他人の発する雰囲気も全て大切に捉えて、具体的な何かとして見えているのかもしれない
高松燈は、他者の心を雰囲気から感じて見ることが出来る、ちょっとしたエンパス(共感能力者)の様な存在なのかもしれない

見えているもの

7)高松燈が成し得ること

最後に、高松燈が求めているものを考察してこの文を終りにしたい
これから先、高松燈は何を求めるのか
最終13話、燈は「CRYCHIC」を作り、壊し、この物語の始まりを作った存在、豊川祥子に自分の言葉を伝えようとする
この物語において、祥子がどのような意図で行動しているのか最後まで明らかにされない
しかし、燈にとって彼女から見えている祥子は、どのような感情をもっていると感じているだろうか
意図は不明だが、祥子は新たなバンド「AveMujica」を結成する
燈は祥子の中にどの様な形であれバンドに対する熱い想いを感じているかもしれない
しかし同時に、その想いはそよの時以上にとても大きな障害によって歪められていることにも気付いているのかもしれない
高松燈の望みは、今後、そんな境遇の豊川祥子を救うことになっていくのではないだろうか
最も辛い状況だった9話で、立希から「祥子と愛音のどちらを選ぶか」と問われ、燈は何れも「違う」と答えた
ただ一緒にバンドをする
それを実は祥子も望んでいて、燈にはその心のSOSが見えているからこそ、あのB5のノートを渡しにいったのかもしれない
そよに「ありがとう」と伝えたように、燈にとって「CRYCHIC」も「MyGO!!!!!」も、「AveMujica」も関係無いだろう
「MyGO!!!!!」があって祥子が「AveMujica」に居て、一緒にバンドをすれば10人になったとしても燈にとってなんの障害にもならない
1人でバンドを始めた彼女にとって、バンドは5人でも10人でも良い
ボーカルとギタボのツインボーカルが変というのは、先入観でしかない
燈が祥子を救う時、「MyGO!!!!!」と「AveMujica」の混成バンドの結成が起こりえるかもしれない
そして、その混成バンドが奏でるべき楽曲は、きっと「あの曲」だろう
あの雨の日の少女たちは、その時、全てを取り戻すことになるのかもしれない

求めるもの

おわり

次回はそよさんかな…

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