アニメ「ガールズバンドクライ」第四話感想
気がついたらリアタイしてるし毎回感想も書いてるな
今回はライブも無いし何も動かない話
話自体煮え切らなくてバタバタしてて、けど普通に面白いし、思いの外深い話でもあり、つい感想を書きたくなっちゃう
1)すばるの事情
こんなにもすぐにすばるのお当番回くるとは思わなかった
すばるからいきなり「バンドやめます」とメールが来る
当然すばるが最初から抱える問題「女優になりたく無いのに女優を求められてる」が原因なんだけど、思いの外想像していたのとは違う感じなのが少しずつ分かってくる
すばるの祖母が大女優で、すばる自身は女優になりたく無いのにアクターズスクールに通ってる
今回すばるが件のメールを出したのは祖母が突然上京したからだが、仁菜の様に何らかの抑圧があるのかと思ったら実は全く逆
すばるは、自ら祖母に対して女優になりたいと言っているらしい
つまり、強制されて女優を目指してるのではなく、アクターズスクールも自分からすすんで通い始めてるっぽい
その理由は祖母の笑顔が見たいため
子供の頃、祖母に「女優になりたい」と言ったら笑顔になってくれたのがすばるの裏腹な行動の動機
アクターズスクールも、演技の才能が無いことに気がついて欲しいが為とか
つまりすばるは、祖母を喜ばせたいが為に女優になりたいと嘘をついている
それは誰も悪く無い、優しい世界の嘘と言える
これは理不尽に強制してくる分かりやすい敵が居るよりも余程厄介な問題と言える
すばるは自分自身で何らかの決着をつけないといけないから
すばるは仁菜を自宅に招き助言を求める
仁菜は基本的に正論モンスターの良い子ちゃんだから、当然その答えは決まっている
正直に祖母に伝えること
すばるも最初から背中を押して欲しくて仁菜に相談したのは想像に難くない
2)意外な展開
しかし話は予想外の展開を見せる
それまでも仁菜と桃香がすばるの事情を聞きに行った時すばると祖母に会うが、三人とも俳優志望だと嘘をついたことによりそのまま四人でお茶をする話になってしまい、更には祖母からの要求で三人で祖母の前でエチュードをやることになった
三人の言動を見れば俳優志望が言い逃れの嘘であることはすぐ分かるはずなのに、祖母はそれには全くツッコミを入れず、三人のエチュードを要求し、それを観た後も特に感想を述べるシーンは無い
多分、実際に何も言わなかったのだろう
そして、祖母が突然上京した理由もドラマの撮影がある為であり、更にそこにすばるを出演させ共演する為だった
その撮影現場に仁菜達二人を招いたり、二人に話しかけたりもする
その結果どうなったか?
すばるは祖母に対して、俳優志望を辞めるという本心を伝える決心をしていたのに、それを仁菜が止めてしまう
この結果から改めて展開を観てみると、祖母の少し不可解な行動の理由が見えてくる
3)祖母の思惑
まず上京してきた理由が元々ドラマ撮影があったからだとして、そこに孫娘との共演をねじ込んだ理由は何か?
恐らく、すばるのバンド活動をSNS等で知ったからでは無いか?
そもそも子供のつく嘘を大女優の祖母が気が付いてない筈は無いと思える
バンド活動を始めてより俳優から心が離れているであろう孫を引き止める為、ドラマ出演をねじ込んだのではないか
そこにそのバンド仲間であろう仁菜達も現れる
その人となりを見るために、俳優志望だと言う嘘を根拠にお茶に誘い、更にはエチュードまでさせてしまう
そこで仁菜は、エチュードを利用してすばるに対してバンドに対する想いを問い質す
その台詞は演技であっても本心からのものであり、恐らくは祖母の目には真摯な態度に映ったことだろう
それは仁菜達と孫娘すばるとのバンド活動への真剣な想いそのものでもあり、すばる自身をも大切に考えている言葉でもある
その言葉を聴いて祖母はどう思っただろうか
ドラマ撮影の孫との共演を終えて先に上がった祖母は、仁菜達に孫娘への期待を語る
その言葉を聴いて、仁菜はそれだけで情に絆されすばるの祖母に本当の事を語る決心を止めてしまう
恐らく、祖母はエチュードでの仁菜の台詞を聴いて、仁菜がどういう人間か、どう押せばどう動くかを理解したのではないか
そして、すばるが懸念してる祖母の笑顔を奪う事になるであろう状態を祖母自身から伝える事で、仁菜にその悲劇だけは絶対に阻止しなければならないと思わせる
結果として、祖母は当初の目的であろうすばるを演劇の世界に留まらせる事に成功する事になった訳だ
最初から最後まで、すばるも仁菜達も祖母の手のひらの上で踊らされていた様なものではないかと思える
4)演劇とバンドとモラトリアム
そもそも、祖母がすばるの嘘をある程度把握していたと仮定すると、そのすばるの行動をどう考えていただろうか
孫娘には女優になって欲しい
しかし、それは自分の為の嘘の理由からではなく、本心から女優を目指して欲しいと思っているに違いない
とすればその嘘の行動は許されないかと言えばそうではなく、今のどっち付かずの状態から少しずつ女優の良さを知ってもらい、少しずつでも女優が好きになり、気がついたら嘘からでた誠となって欲しいと思っているのではないだろうか
すばるのバンド活動についてもどう思っているのだろう
女優を志すのを辞めなければ、芸の肥やしとして他のどんな活動も積極的にやるべきだし、バンド活動も観客を相手にする芸能活動だからより好ましい活動とすら思っているのかもしれない
仁菜にしてもバンドを始めてはいるが大学進学を諦めている訳ではない
桃香にとってのバンド活動は、前半パートで語られていた様に、プロになるか諦めるかの二択かもしれないが、まだ高校生の年代である仁菜とすばるにとっては、バンド活動は未だモラトリアムな活動と言えるのかもしれない
バンド=ロックとは、自分の内にある想いを音楽にして、それが他人に価値があるものと認めさせるものだ
そんなプライベートなモノを他人が金を出してまで喜んでくれる事など本来ならあり得ない
しかし、一部の才能ある者だけがそんな物を持っていて、プロに成り上がれる
そんな自身の中にあるモノを信じて他人に伝え自分を試し続けることなど、正に若者故の全能感を拗らせて先に進めないモラトリアム年代特有の感覚といえる
バンド活動とは、正にそんな人生におけるモラトリアムな行動そのものと言えるかもしれない
すばるが偽りの女優志望を辞めず今まで通りどっち付かずな状態であることも、バンド活動をすることも、いずれもモラトリアムな行動と言える
それはすばるの祖母にとって、すばるが女優志望を辞めない限り何の問題もないことなのだろう
しかしただ一つ、そんなすばる達を完全に手玉に取った祖母にも計算違いがあるかもしれない
それは仁菜の才能
このナチュラルボーンなロックモンスターは、きっと彼女達を想像もつかないメジャーシーンに連れて行ってしまうかもしれない
もしそうなれば、それはそのままモラトリアムからの脱却になるだろうし、すばるにとっても女優とは違う道に進ませる事になるだろう
祖母の圧倒的な勝利に終わったすばるとの駆け引きは、この物語の最後の最後に逆転するかもしれない
そう思うとそれはそれで面白い
終わり
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