夏が嫌いで君を好きになった(僕とくぴぽとオーケンの話②)

「夏が嫌い」という曲の特別さは誰もが知るところだ。
少なくとも僕の周りのオタクでこの曲を知らない人間はいないし、皆、高く評価している。楽曲、歌詞、そしてメンバーの歌、すべてにマジックがある曲だと思う。

ちょうど僕がくぴぽが気になり始めた頃にMVが公開された。まきちゃんがスマホで編集したという素朴でエモーショナルな映像が素晴らしい。

その時改めてこの曲を聴いて、歌詞から漂う「オーケンっぽさ」に僕は胸を打たれた。

オーケンこと大槻ケンヂ氏。彼のバンド筋肉少女帯と特撮、そしてソロや著作に僕は多大な影響を受けたし、暗鬱な青春時代を送っていた僕の救いだった。

彼の詩の特徴は、ダメな奴にひたすら寄り添ってくれるところだ。励ましてくれるわけじゃないし、こっちも励ましてほしいわけじゃない。ただ、「オレはこんなにダメだから、キミもダメなまま生きてみたらいいよ」みたいな、とにかく根暗な奴はめちゃくちゃ共感する内容で、日々鬱々と「こんなに世界を憎んでるのはオレだけだ」と思ってたのが、「他にもオレみたいなやつ割といるじゃん」と心を軽くしてくれる存在だった。それに彼と組むミュージシャンは天才ぞろいでとにかく曲が格好良いのも僕が心酔した理由だ。

まきちゃんもオーケンによく似ている。
作曲やダンスなどの音楽の技術的な才能がそんなにあるわけではないと思うけど(まきちゃんごめん)、とにかく感性の鋭さや豊かさと、それをアウトプットする能力、形にする能力がスバ抜けているし、その才能と人柄を信じて周りにスゴい人が集まってくる。

そうやって生まれたくぴぽの曲は、まきちゃんのとてもパーソナルな部分を表現したもので、僕らはそれに勝手に共感したり、救われたりする。まさに寄り添ってくれているような感覚を得るのだ。

「夏が嫌い」にはまさにそういう要素が詰まっていた。
厭世的なムードを漂わせながらも、人を否定することができない優しさ、ほのかな未来への希望、そして最後にまた「夏が嫌い」とちょっとヒネて終わるシニカルさ、全部が胸に刺さった。

僕のくぴぽへの興味は「機会があればライブを観たい」というぐらいにはなっていた。奇しくもそのタイミングでくぴぽは新メンバーとしてあむちゃんが加入して、少しずつライブ活動を再開していた。
ライブ再開は他のグループも同じで、僕もまたライブに行き始めた。くぴぽもとりあえずメンバーのツイッターを見ながらその機会を伺っていた。

つづく。

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