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くぴぽ「眠いよ青春」の話

僕が好きなアイドルグループ・くぴぽには「眠いよ青春」という曲がある。

作・編曲をタカユキカトー氏、作詞をプロデューサー兼メンバーであるまきちゃんが担当した本曲はアルバム「絶対結婚しような!!!!」に収録されている。

楽曲としては疾走感のあるギターロックで、メジャーでキャッチーな曲調だが、自分は何者か、何も成していないのではないかと悩みながら年を重ねていく主人公の焦燥感や、ある種の厭世観を反映した歌詞がストレートに表現されており、まきちゃんらしさとテクニックが同居していて素晴らしい。

この曲、というかアルバム「絶対結婚しような!!!!」が発売された頃のくぴぽは、コロナ禍とメンバーの卒業・加入が重なり怒涛のような日々だった。

そんな中、この曲はステージで歌い続けられていた。それだけパワーのある曲だ。なので、メンバーチェンジとともにこの曲の歌割は変わっていった。

特に印象的なのは落ちサビである。
前述したような、厭世観を感じさせる要素の集大成が、この落ちサビだ。

このまま続けていいのかな
頑張れなくて本当にごめんね
写真の私は笑ってますか
いつか忘れてしまうのが悲しいな

くぴぽ「眠いよ青春」より

この落ちサビは当初はひめちゃん(2021年7月卒業)が歌っていた。

発表当時(2021年1月頃)は「現役のアイドルにこんなん歌わすの、まきちゃんいけずやなぁ(ニセ関西弁)」と思っていたが、その後しばらくしてひめちゃんの卒業発表があり、まきちゃんからすればこの歌詞を歌わせることでひめちゃんの中の何かを繋ぎ止めようとしていたのではないか、という気がしなくもない。(制作時にひめちゃんの卒業がどの程度話し合われていたか分からないが)

僕は最初にひめちゃんがこの落ちサビを歌ってくれてよかったと思っている。
この曲は単純に楽曲としても好きだが、歌詞も、そしてそれを自分流の解釈で歌うメンバーも含めて、大好きで大切な曲になっている。それは今でも変わらない。
そのファーストインパクトがひめちゃんが歌うこの落ちサビだったわけで、ずっと忘れられない。いや、忘れない記憶だ。

7月初旬にひめちゃんが大阪でのラストライブを終えると(そのあと7月24日の卒業公演までひめちゃんはライブに出演しなかった)、落ちサビはなだれちゃんことなだれぴ(2021年7月卒業)に引き継がれた。

なだれぴが「眠いよ青春」の落ちサビを歌っていた期間は卒業までのほんの2週間ぐらいだったので、とても短い。
しかしながら、なだれぴにとってこの曲が特別であることは間違いなかった。
なだれぴはこの「眠いよ青春」で振付を担当したからである。
曲が上がってきたときに「振付をやってみたい」とまきちゃんに直訴したというから、相当に気に入って、インスピレーションを受けたことがうかがえる。

まきちゃんのツイートにもあるように、泉茉里ちゃんのサポートが入ってダンスとしての完成度も高いが、歌詞や楽曲から受けたインスピレーションをそのまま振りに落とし込んでいるところもあり、初期衝動的なものも感じる。やはりエモーショナルなのだ。
僕はこの曲のダンスがとても好きだし、当時を知らない今のくぴぽのファンの人たちや、初見の人からも目を引かれる、好きだという声が多いので、なだれぴが感じたものが今でもしっかりと伝わっていると思う。

なだれぴはこの落ちサビを引き継いだ時点で既に卒業が決まっていたこともあり、この曲が歌われるときはその1回1回がオタクもメンバーも非常に気持ちの入ったものとなった。
「眠いよ青春」がより特別な曲へと進化していったのもこの時期があったからかもしれない。

なだれぴの卒業後は、2021年8月から加入したうのちゃんことウノチャンがこの落ちサビを引き継ぐことになった。
その後は特別な場合を除き(※後述)、2024年1月の新メンバーの加入までウノチャンが歌っていくことになる。

この歌はウノチャンが歌うことで、また新たな意味を持つこととなった。
実は、この「眠いよ青春」の歌詞は、ウノチャンがくぴぽ加入以前にまきちゃんに話したことや言葉が元になり書かれたとまきちゃんは公言している。

ウノチャンの言葉によって生まれた歌詞に、ひめちゃん、なだれぴ、あむちというそれまでのくぴぽのメンバーとオタクによってたくさんの想いと物語が付与され、またウノチャンの元へ還り、ウノチャンが歌う。
僕はその意味を、数か月かけて咀嚼しながら受け止めていった。

前述していた特別な場合の話だが、あむちゃんことあむち(2022年2月卒業)も卒業公演でこの曲の落ちサビを歌った。

ひめちゃん、なだれぴと歌い継がれたことで、「卒業するメンバーがこの落ちサビを歌う」というある種のお約束のようなものも出来つつあった。歌詞を鑑みればそのイメージがつくのはわかるし、2人の後にこの部分を担当していたウノチャンもくぴぽ加入前にアイドルグループを卒業した経験があるので、意味合いとしては地続きだ。
ただ、まきちゃんはこういう感傷的な演出があまり好きではなさそうなので、このときは本人からの申し出が大きかったのではないかと思う。(憶測です)

少し変則的だが、まことちゃんことまこち(2022年9月卒業)もこの落ちサビを歌っている。

まこち卒業前に行われた大阪・エミュリボンでの「くぴぽ音楽会」というイベントで、ちあきちゃんとデュエットした際のものだ。
肩ひじ張ったライブではなく、ファン向けのイベントではあるものの、卒業直前にこの歌を歌うことについては、まこちにも思うところがあったのかもしれない。

まこち卒業後の1年と3か月はメンバーの変動がなく、2024年1月に新メンバーが加入するまではまきちゃん、しゅりちゃん、ちあきちゃん、うのちゃんの4人で活動していた。
「眠いよ青春」はセットリストに入ったり入らなかったりする、いい意味で普通のくぴぽの持ち曲となっていった。

そして2023年10月、ウノチャンの生誕イベント「うの誕2023ワンマン」が滋賀で行われ、「眠いよ青春」の落ちサビでファンによるサイリウムの点灯が行われた。

この出来事は「眠いよ青春」が紡いできた物語のひとつの区切りになったのではないかと思う。
元のツイートにもあるが、ウノチャンの言葉から生まれた歌詞が様々なメンバーに歌い継がれ、ウノチャン自身、そして2023年のくぴぽのメンバーに歌われることで、特別な曲であり、特別な曲でなくなったと言えるのかもしれない。

2024年1月のまきちゃんの生誕イベント&新体制お披露目ライブ「まき誕2024(タイトル後略)」において、新たな6人体制で「眠いよ青春」は披露された。

歌割が大幅に変わった曲も多いが、落ちサビの担当などは4人時代とあまり変わらないものもあった。
そんな中、「眠いよ青春」の落ちサビは新メンバーのあやぴぃが担当することになった。

個人的には、前述の通りウノチャンが歌う落ちサビは昨年の「うの誕2023」で一つの区切りを迎えていたと思っていただけに、非常に腑に落ちる交代だった。

あやぴぃもまたアイドルグループの卒業を経験しているメンバーであるし、くぴぽで新たなアイドル人生をスタートさせた彼女は「眠いよ青春」の新たな物語を紡いでいくのにふさわしいと思う。
それに、オーディション時には「眠いよ青春」の弾き語り動画を提出していたというから、きっと思い入れは人一倍だろうし、大切にしてくれると信じている。

「眠いよ青春」、大好きな曲だ。
これからもくぴぽとこの曲が作る物語に、僕は魅了されていくことだろう。

…………

おまけ
自分の話で恐縮ですが、「眠いよ青春」ベースの弾いてみたをやっております。
楽曲の良さを引き出すとても魅力的なベースラインです。
お暇なときなどに観ていただけたら嬉しいです。


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