レイヤー2ソリューションの基本を理解する

前提:スケーラビリティ問題とは

ブロックチェーンのトリレンマ


ブロックチェーンのトリレンマとは、イーサリアムの開発者であるヴィタリック・ブテリン氏によって提唱された概念です。


1,スケーラビリティ:ネットワークに人が集まり取引が集中した時に遅れることなく処理ができるか
2,セキュリティ:ネットワークの改竄や不正がしにくい仕組みになっているか
3,分散性:取引検証する参加者(バリデーター)がどれだけ分散しているか

ブロックチェーンネットワークの構成要素として上記の3つの概念が存在します。その中の2つの概念を重視すると、残りの概念が犠牲になる事象のことです。

スケーラビリティが低いとなぜ問題なのか


BitcoinやEthereumは、セキュリティと分散性に優れたブロックチェーンです。そのため、スケーラビリティが低いことが問題としてこれまでもその解決を目指して様々な検討が行われてきました。そもそもスケーラビリティが低いとどのような問題があるのでしょうか?

スケーラビリティとは「拡張性」という意味であり、システムやネットワークが利用負荷の増大に対応できる度合いのことを指します。ブロックチェーンにおけるスケーラビリティ問題とは、利用者の増加によるネットワーク負荷の増大によって「処理速度の低下」と「ガス代の増加」の2点が悪化する問題を指します。つまり、利用者が増えれば増えるほど、取引が円滑に進まなくなったり、手数料が増加するという問題をBitcoinやEthereumは長年抱えていて、それを解決する手段として「レイヤー2」という技術が存在します。

レイヤー2の概要


レイヤー2とは、ブロックチェーンのスケーリング問題を解決するために作られる追加のネットワーク層のことです。Ethereumネットワークをレイヤー1ブロックチェーンだとすると、ArbetrumやOptimism等のそれに繋がった別のレイヤー2ブロックチェーンがEthereumの取引処理を引き受けて、拡張性をサポートする役割を担います。

Ethereumのレイヤー2について説明すると、現在、主流となってるやり方は、処理能力を拡張しつつレイヤー1の強固な分散型セキュリティを活用する方法です。レイヤー2で取引処理したデータを圧縮してレイヤー1に送り返し、最終的なデータの格納はレイヤー1が担当することになります。レイヤー2の実装により、ユーザーはトランザクションの高速処理を享受でき、ガス代の負担も削減できるとされています。

また、レイヤー2は追加層として実装されるため、レイヤー1の構造を変更する必要がないというのも大きな利点です。レイヤー1で複数のレイヤー2に対応できるため、近年多くのレイヤー2ネットワークが立ち上がっていて、Ethereumに接続されています。

ちなみにレイヤー2は、よく「L2」と省略して記述されます。

レイヤー2の技術変遷

State ChannelとPlasma


Ethereumのレイヤー2として初期に提案された技術は「State Channel」というものです。State Channelは特定のユーザー間でチャネルを開き、オフチェーンで状態遷移を行い、ある時点でオンチェーンに記録をするというものです。しかし、State Channelではスマートコントラクトなどの機能もレイヤー2に持ち込むことができず、主要なスケーリング技術になることが難しいと認識されるようになりました。

次に「Plasma」が提案されました。Plasmaはメインとなる親チェーンに繋げることができる子チェーンのネットワークです。それぞれメインチェーン(親)に繋がる子チェーンは、今度はその子チェーンを親として別の子チェーンを繋げることができ、実質的に制限がなく子チェーンを拡張できるネットワークが想定されています。この方法で、取引処理ををメインチェーンから分離し、それらを子チェーンで処理や保存をすることが可能となります。

しかし、Plasmaはデータ可用性に問題を抱えていました。データ可用性とは、ユーザーが必要な情報にアクセスできることを指す重要な概念です。Plasmaでは、もし子チェーンのノードオペレーターがデータを非公開にしたりそのネットワークを停止したりしてしまうと、ユーザーは、子チェーンのデータにアクセスできなくなってしまいます。こうなるとメインチェーンへ資産を移動することもできません。つまり、人をトラストすることが前提となってしまい、ブロックチェーンのトラストレスという特徴が希薄化してしまうのです。

現在の主流はRollup


Plasmaのデータ可用性の問題を受けて生まれたのが、現在主流になってるのが「Rollup」というレイヤー2の技術です。「概要」の項目で説明した通り、取引の処理だけを別のチェーンで行い、そのデータをメインチェーンに「巻き上げる(Rollup)」ことでその可用性を確保します。

ここで重要なのは、Rollupが取引データをメインチェーンに格納し、その状態変更(つまり、各処理がシステムの状態をどのように変えるか)をオフチェーンで実行する点です。

Rollupには、現在「Optimistic Rollup」と「ZK Rollup」の2種類があり、どちらも「状態変更」の計算をオフチェーンで行いますが、それぞれの検証方法が異なります。(長くなるためこれらの解説は別の機会に行います。)

それぞれメリットとデメリットがあり、今後はこの2つのRollupの技術を使ったレイヤー2ブロックチェーンの競争が加速していくと考えられています。

今後の展望


今回ご紹介したレイヤー2は、ヴィタリック・ブテリン氏が今後のEthereumの発展に必須な最重要技術に位置付けているため今後のWeb3の発展にも影響する技術です。

前述した通り、現在はArbetrumやOptimsmがレイヤー2の中では大きなシェアを獲得しています。これら2つはOptimistic Rollupという技術を使った技術を使ったレイヤー2ですが、ZK Rollupを使ったレイヤー2ネットワークであるZK SyncやStarknetもシェアを伸ばしています。今後、これらの2つのRollup技術の競争が加速していくことが予想されています。

また、独自のセキュリティ基盤を備えるPolygonも、Ethereumと互換性のあるさまざまなスケーリングソリューションを組み合わせて一つの多層フレームワークを作り出すことを目指しています。ZK RollupとOptimistic Rollupを導入する計画を発表しており、間違いなくこのレイヤー2のシェア競争に食い込んでくるプロジェクトですので要注目です。

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