くりぷとくりぷと

2017年に暗号資産投資をスタート。それから趣味で色々調べ出したら、リサーチそのものが…

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2017年に暗号資産投資をスタート。それから趣味で色々調べ出したら、リサーチそのものが趣味になりました。web3が好きで知的好奇心が高いだけの人間ですが、これが何か仕事にならないかなと思ってます。記事がいいなと思ったらフォローしてもらえると励みになります┏○ペコッ

最近の記事

すげえぜ!Suiのオンチェーンストレージ

今回はSuiブロックチェーンのアーキテクチャの一つである「ストレージ」のお話です。 Suiには分散型のストレージ機能が備わっていて、多少大きなデータでもブロックチェーンに保存することができます。 と、言ってもそれの何がすごいのかわかりにくいと思うのでBitcoinと Ethereumのデータ保存の制約を見てみましょう。 1.BitcoinとEthereumのブロックサイズ1-1.Bitcoinの場合 まずはBitcoinがデータをどのようにブロックチェーンに保存するの

    • Suiのオブジェクトベースモデルを理解する

      はじめに以前に、Xでこんな感じでSuiの技術解説をしたのですが、後で見直せるように残した方がいいなということで、ここを有効活用していこうと思います。 だいたいはXの内容と同じですが、多少手直ししてる部分もあるので、一度読んだ人ももしよければ読み直していただけると嬉しいです。 1.Suiは資産を単なる数字ではなくリソースとして扱うことができる1-1.資産をリソースとして扱うとはどういうことか? Suiが他のブロックチェーンと大きく異なるのがこれです。Suiはトークンなどの

      • オストロムから持続可能なコモンズ的DAOを探る

        1,はじめに Web3カルチャーにおいて、徹底的なパーミッションレスや真の分散化は神聖なものです。ですが、現在のWeb3で本当に完全な分散性を獲得しているのはごくわずかなプロジェクトのみと言えるでしょう。 そして、それは最近僕がリサーチを進めてるDAOにも言えることです。先日書いた『持続可能なDAOのガバナンスシステムを考察する』でも触れていますが、持続可能なDAOのガバナンスシステムを構築するためには構造化が最も重要であり、プロトコルファーストの戦略に沿って実力主義の組織

        • DAOのデリゲート報酬システムを考察する

          1,はじめに 前回の記事が好評だったので、今回も続けてDAOに関する考察記事です。前回同様Rika Goldbergの記事を参考に僕自身の解釈や感想も交えて記事を書いてみます。 今回取り上げる記事は『A new approach to reward DAO delegates』です。こちらは、Rikaさんが考えるDAOのデリゲートシステムに関する懸念と改善方法を提案した内容です。 「デリゲートシステム」と聞いてもピンと来ない人もいるかと思いますので、そちらから解説していき

        すげえぜ!Suiのオンチェーンストレージ

          持続可能なDAOのガバナンスシステムを考察する

          はじめに 最近、あるプロジェクトのDAOが2つに分かれました。具体的な内容は差し控えますが、異なる意見の落とし所が見つからず、コミュニティがフォーク(分岐)したという経緯です。コミュニティが分岐することはこれまでもBitcoinやEthereumでも起こってきたことですので、もちろんそれが必ずしもプロジェクトの失敗ではないのですが、今回そのDAOのガバナンスはなぜうまく機能しなかったのでしょうか?また、うまくいっているDAOはどのようなガバナンスの仕組みを作っているのでしょう

          持続可能なDAOのガバナンスシステムを考察する

          ブロックチェーンで自己主権型アイデンティティを実現するPolygon IDの解説

          前提:ブロックチェーンで個人情報を扱うことの難しさ ブロックチェーン技術は、その透明性と改ざんの難しさから、革命的な技術として認知されています。しかし、一方でその透明性がプライバシーの問題を引き起こす場合があります。具体的には、ブロックチェーン上の取引情報は公開されており、このアドレスと個人のリアルな情報を関連付けられてしまうと、その人の取引履歴や資産状況が広く公に知られるリスクがあります。 プライバシーに配慮した信頼性の高いデジタルアイデンティティを自分自身で管理する必

          ブロックチェーンで自己主権型アイデンティティを実現するPolygon IDの解説

          デジタルアイデンティティの相互運用を可能にするプロトコルRarimoの概要

          1,はじめに デジタルアイデンティティはオンライン上のコミュニケーションを行う上で重要な役割を果たしていますが、今後はオンラインだけでなく、オフラインを含む様々な場面で自身を証明するものとして普及し、僕らのデジタル体験を向上させるものとして期待されます。一方で、中央的な企業や行政によるID管理に対する懸念があることも確かであり、そのような背景からWeb3の文脈で議論が増えているのがSSI(自己主権型ID)という概念です。分散型識別子(DID)によってユーザー自身の個人情報(ク

          デジタルアイデンティティの相互運用を可能にするプロトコルRarimoの概要

          Web3時代の身分証明の在り方 DID/SSI/VCの概要

          1,はじめに Web3のアイデンティティ領域は今後成長が見込まれる分野として期待されています。基本的には自身の個人情報を第三者に渡さずに自分自身で管理していこうというビジョンがあり、様々なところで議論が進められています。それを実現するために重要な下記の3つの概念について解説します。 ・DID(Decentralized Indentity:分散型ID) ・SSI(Self sovereign identity:自己主権型ID) ・VC(Verifiable Credenti

          Web3時代の身分証明の在り方 DID/SSI/VCの概要

          これまでのNFTとこれからのNFTの価値を問い直す

          1,はじめに 「NFTの冬」と言われるようになってからしばらく経ちます。最近はどんどんNFT領域から人が抜けてるそうで、ブルーチップNFTですらポジティブなニュースが全然流れてきません。全体の取引量を見ても過去2年間でもっとも低い水準となっているという情報も目にしました。 2021年の後半頃から約半年間は「NFTバブル」と言われるほどに盛り上がりを見せたのに、なぜ今このような状況になっているのだろうとふと思ってから、最近ずっとNFT関連のリサーチを行なっていました。その中で

          これまでのNFTとこれからのNFTの価値を問い直す

          Web3×環境問題を考える 二酸化炭素吸収量の測定における現在地

          1,はじめに 二酸化炭素(以下CO2)吸収量の測定は、環境対策全般における重要なテーマです。しかし、この取り組みは専門知識を要するため小難しく、社会一般的にあまり注目されることさありません。また、CO2吸収量測定と言っても目的や、森林、海洋、農地といった地域特性ごとに最適な測定方法が異なるため、その方法は多岐に渡ります。このような背景から、気候変動問題に興味はあるけど、そこで何が行われてるかはよくわかっていないという人も多いのではないでしょうか。(僕もその一人です) 今回は

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          レイヤー 2を巡るブロックチェーン生き残り戦略

          1,はじめに 最近、イーサリアムの「レイヤー2」がトレンドになっています。 例えば、Optimistic Rollupを利用したモジュラー式の「Mantle Network」はメインネットをローンチしました。そして、Metamaskの親会社であるConsensysが開発した「Linea」がメインネットのアルファ版を公開しました。さらに、以前には、Coinbaseも自社で開発した「BASE」のテストネットワークの開始を発表しています。パブリックブロックチェーンである「Celo

          レイヤー 2を巡るブロックチェーン生き残り戦略

          Aptosの成長戦略を探る -高性能チェーンが見据えるWeb2企業との発展-

          1,はじめに Aptosは、元MetaのDiem開発チームによって作られたレイヤー1ブロックチェーンです。Aptosの最大の特徴はスケーラビリティの高さと、安全性と柔軟性を兼ね備えた開発環境が整えられている点です。スケーラビリティに関しては、1 秒間に理論上10万〜16万の処理を達成するように設計されています。また、Moveプログラミング言語をサポートしていることで、ブロックチェーンエンジニアにとって柔軟性の高い開発環境を提供しています。今回、この記事では、Aptosで採用さ

          Aptosの成長戦略を探る -高性能チェーンが見据えるWeb2企業との発展-

          レンディングプラットフォーム:AaveとCompoundの戦略とサービスを比較

          はじめに 分散型金融(DeFi)の世界は、急速に成長し、Web3.0全体のエコシステムに欠かせない存在となっています。その中でも、AaveとCompoundという二つのレンディングプラットフォームはDeFiを代表するプロトコルです。それぞれどのようなアプローチをとり、そして、それがどのような結果を生み出しているのか、その戦略を比較してみようと思います。 今回は、下記の記事を参考に、日本語要約しています。さらに詳しい解説は下記の記事を読んでください。 PANews: 蓝筹D

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          レイヤー2ソリューションの基本を理解する

          前提:スケーラビリティ問題とはブロックチェーンのトリレンマ ブロックチェーンのトリレンマとは、イーサリアムの開発者であるヴィタリック・ブテリン氏によって提唱された概念です。 ブロックチェーンネットワークの構成要素として上記の3つの概念が存在します。その中の2つの概念を重視すると、残りの概念が犠牲になる事象のことです。 スケーラビリティが低いとなぜ問題なのか BitcoinやEthereumは、セキュリティと分散性に優れたブロックチェーンです。そのため、スケーラビリティ

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          今だからこそ振り返る Terraショックから学べること(後編)

          (中編からの続きです。) 前編で大成功していたかつてのTerraというプロジェクトを解説して、中編でそのTerraがわずか数日で崩壊した「Terraショック」を振り返りました。 後編では、Terraというプロジェクトの栄枯盛衰を簡単に振り返りつつ、何が問題だったのかを検証してみようと思います。 Terraショックのおさらい ここでは前編と中編で説明した内容をポイントを絞ってまとめてみようと思います。 まず、TerraというプロジェクトはTerraUSD(以下UST)と

          今だからこそ振り返る Terraショックから学べること(後編)

          今だからこそ振り返る Terraショックから学べること(中編)

          (前編のつづきです) Terraショックは2022年の5月7日(土)に始まり、約4日間続きました。この間に起きたことは非常に複雑で、様々な思惑が複雑に絡み合ってます。今回、改めて1年前の記事やデータを確認して調べ直したのですが、メディアや人によって言ってる内容が微妙に違うため、細かい部分は各自で確認してください。この記事では、なるべく話をわかりやすくするために、細かな説明を省略して説明するようにします。また、一連の流れは同時多発的に起こっていることも多く、必ずしも下記の順番

          今だからこそ振り返る Terraショックから学べること(中編)