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1_2ハラスメントはなぜ起きるのか?


1980年代に「セクハラ」という言葉が日本で使われ始め、いまでは「ハラスメント」として広く知られるようになりました。そして「不用意に触らない」や「暴力を振るわない」等、単純なハラスメント防止対策についても意識が高まってきています。しかし、以前としてハラスメントの被害はあり、より注意しなければなりません。

そこで、今回は「そもそもなぜハラスメントが起きてしまうのか」原因について考えてみたいと思います。


1.ハラスメントの原因について

(1) 個人の意識差、無知

(2) 職場環境の変化

(3) 他者に対する思いやりの心や配慮の不足・欠如

(4) 職場内コミュニケーションの不足・欠如

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(1) 個人の意識差、無知

 そもそも「どんな行為がハラスメントにつながるのか」把握していないことがあります。

昨今特に多いのが、「このぐらいは大丈夫だろう」と思い込んでいたことが、相手にとっては「暴言・暴力」と受け止められていたなど、認識の違いに起因するものです。


例えば

・相手と信頼関係ができていると思い込み、わざとストレスを掛ける厳しい指導を行っていた。

・コミュニケーションの一環であると勝手に思い込み、親しげに身体に触っていた。

・冗談で相手のコンプレックスを馬鹿にし、周囲から笑いを取ろうとしていた。


 これらの場合、ハラスメントを行った本人が問題に気が付いていないことが多いです。実際に、ハラスメントを行った方にヒアリングを行うと、「何が原因なのか分からない」や「あれがハラスメントなんて知らなかった」等、ハラスメントが発覚しても自覚できていない方がいます。

 知らずに相手を傷つけてしまうことは、どんなに対策をとっても起こり得ることですが、「知らなかった」では済まされません。ハラスメントについては、年々考え方、捉え方も変わりますので、定期的に知識や情報のアップデートをしていく必要があります。


(2) 職場環境の変化

 昨今の働き方改革の進展により、仕事の在り方は以前と比べて大きく変わっています。育児・介護休業、DX化によるテレワーク等、例を挙げれば数多くの変化があり、これからも変化していくことが考えられます。

 しかし、これらの変化を把握できておらず、知らないうちにハラスメントを行ってしまっている場合があります。


例えば

・重要な決定は男性が独占するべき、お茶くみなど補助的な業務は女性が中心にやるのがよい、などといった旧態依然とした考え方

・育児、介護による時短勤務は、致し方無いとはいえ、仕事量を減らさないといけないため役職や重要な仕事を任せない

・テレワークのサボり防止のため、常にWebカメラで顔を写させるべきだ  など


 従来は、性差におけるハラスメントが目立っていましたが、昨今は新たな働き方に対する認識の齟齬から起こるハラスメントが増えてきています。昔は良くても、今は問題になることがあり、認識のアップデートが求められます。


(3) 他者に対する思いやりの心や配慮の不足・欠如

 ハラスメントは、どんな相手でも信頼関係が築けていれば起きにくい事柄です。しかし、人は感情を持つ生き物のため、どうしても「好き」や「嫌い」で物事を判断してしまいがちです。特に「嫌い」や「苦手」、「気に食わない」などマイナスに捉えてしまった相手に対しては、配慮や思いやりを忘れてしまうことが多々あります。


例えば、

・相手の人格を考えず、駒のように(モノのように)扱っていた。

・気にいらないと感じた相手に「怒鳴りつける」「意地悪をする」「無視する」「悪口を広める」などの嫌がらせをしていた。

・特定の相手に対して挨拶をしない、または適当にあしらう など


これらは、「言葉遣い(言葉を選び、タイミングを図る)」や「相手の顔を見て話しをする」など少しの配慮で大きく改善することが可能です。しかし思いやりや配慮は時に相手の受け取り方によって、傷つけることもあります。よくあるのが、指導や指示、命令といった業務上しなければならない場面です。「指導のつもりがハラスメントになってしまった」「仕事上必要な指示を出しただけなのに、ハラスメントとして問題にされてしまった」など、話し手は気を付けたつもりでも、受け手がハラスメントとして捉えてしまうことが起こり得ます。この場合、単純な配慮や言葉遣いだけでなく、相手に合わせた対応が求められます。

これらは、ハラスメントを方法・法則といった「決まった対応策」で捉える杓子定規な考え方で起きてしまいます。思いやりや配慮といった柔軟な対応力が重要になります。


(4) 職場内コミュニケーションの不足・欠如

 ハラスメントでは信頼関係の構築が重要であり、コミュニケーションが重要であることを認識されている方は多いです。そのため、「業務指示は明確にしている」「常に連絡を取り合っている」など報告・連絡・相談を徹底している企業が多いです。

しかし、報告・連絡・相談を頻繁に行っていても、コミュニケーション不足に感じている方もいます。それは「コミュニケーションをどのように取っているか」によって変わってくるからです。


例えば

・メンバー間の連絡は、チャットなどで頻繁に行っていたが、短文で済ませており相手の意図が見えなかった。

・上司に相談することはあるが、一方的な指示でこちらの意図を聞いてくれなかった。

・効率化のためにやり取りを全てメールやチャットに移行したが、相手の返事が怒っているように見えて、連絡を取るのにストレスを感じる  など


 コミュニケーションを単純な報告・連絡・相談と捉えるならば、「問題なくできている」と答える企業は多くあります。しかしながら、「自身の意図を伝えられているか」「コミュニケーションをとる際にストレスを感じていないか」と別の視点で確認すると、「あまりできていない」と答える企業も多いです。ハラスメントでは、やり取り自体も重要ですが、「どのようにコミュニケーションを取っているか」も大切な要素です。連絡の仕方に、問題が無いか、一度振り返りを行ってみると良いですね。


(5)まとめ

いかがでしょうか。今回は、ハラスメントは対策ではなく、ハラスメントがなぜ起きるのか、よくある原因について見てきました。実際にハラスメントが起きる原因は、今回取り上げたものだけでなく多岐にわたります。ここのところ、多いケースでは「すでに出来上がっているコミュニティの中に新たに入ってきた人が感じる違和感」をハラスメントと感じてしまう場合が増えています。例えば中小のクリニック様(すでに出来上がっているコミュニティ)に新たに入ってきた人(研修医、実習生、インターンシップ生など)がDr.からの指示や依頼に対して圧を感じ、ハラスメントではないかと受け止めてしまうケースです。この場合、そのコミュニティでは通常業務として普通にやり取りされている言葉も、よそから来た人には強く感じてしまうことがあるということなのです。

ハラスメントの対策が難しいと感じてしまいがちですが、対応策としては、ハラスメントの知識に加え、それぞれ言動や対応について見つめ直していくことです。そして、研修やカウンセリングなどを通して、定期的なハラスメントに対する意識づけと防止の意識を根付かせることが有効です。

ハラスメントに悩まれている経営者様・人事ご担当者様は、是非一度ご相談ください。

文責:善福大(ぜんぷく・だい) 中小企業診断士、奈良コンサルティング代表

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