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【球春到来】ヤクルト再生工場2024 #5 宮川哲という男(とヤクルトの中継ぎ陣の話)

皆さんこんにちは。ちゃそぴです。

本当にお久しぶりとなる更新となり申し訳ございません、、、いや更新しようとしていたんですよ。ですが身体が言うことを聞かず(ry

とまぁ怠惰な筆者が球春到来というタイミングでようやく重い腰を上げて更新しました。宮川選手本当にごめんなさい…。

という事で気を取り直して、今回も僕の贔屓球団である東京ヤクルトスワローズが戦力外やトレード、現役ドラフトから獲得した選手についての基本情報と、データや選手個々のエピソードにおいて面白い情報を共有していく「ヤクルト再生工場2024」を更新していきたいと思います。

2023年12月21日、ヤクルトは元山飛優選手との交換トレードで埼玉西武ライオンズの宮川哲選手を獲得しました。第五弾を迎えた今回は、19年ドラ1として西武の中継ぎ陣を支え、昨季には先発としても登板した宮川哲みやがわてつ選手について紹介したいと思います。なおデータはnf3 - Baseball Data House -データで楽しむプロ野球プロ野球データFreakを参考にしております。

基本情報と実績、役割

簡潔にまとめると
・1995年10月10日生まれ。奈良県生駒市出身
・上武大学時代は13勝で負けなし、防御率0.94を記録し10球団から注目を集める
・西武時代はパワーカーブを武器にルーキーイヤーから中継ぎで活躍
・23年シーズンには先発としてプロ初勝利を記録
・2軍では先発として最優秀防御率のタイトルを獲得
・まずは中継ぎ、ゆくゆくは先発を試してポジションの適性を確かめたい

宮川哲選手は右投右打の剛腕投手であり、大学時代は最速154km/hのフォーシームと大きく曲がるパワーカーブが武器としていました。右打者にはパワーカーブ、左打者にはフォークという決め球を持っており、左右問わず打ち取れるケースが多いのが特徴です。
そんな宮川選手は甲子園出場こそ無かったものの上武大学に進学すると、躍動感あるフォームから放たれるフォーシームを武器に4年時に9勝を果たした分を含めて4年間で27登板、13勝0敗、防御率0.94と非常に優秀な成績を残し10球団から注目を浴びていましたが、結果的には指名漏れとなり社会人野球へ進むこととなります。

宮川選手はその後名門東芝に入社しますが、球速こそ出ていたものの大学時代で無双していた自慢の速球を打たれるケースが多くなりました。そこでゆったりとしたフォームへの修正により課題だった制球力を改善させると、秋の日本選手権では新日鐵住金広畑戦で先発を任され、8回途中3失点に抑えて白星を飾りました。その後の都市対抗選手権では三菱日立パワーシステムズ戦で先発起用され自己最速タイとなる154km/hを記録。試合にこそ7回途中3失点で敗戦投手となりましたが、大学時代の功績もあってスカウトからの注目を浴び、その後19年のドラフト会議で奥川恭伸選手(ヤクルト)を逃した巨人と佐々木朗希選手(ロッテ)を外した西武が外れ1位として競合。抽選の結果、西武が交渉権を獲得し西武に入団する事となりました。また今回のトレードにより17年ドラ1(村上宗隆・近藤弘樹)と19年ドラ1(奥川恭伸・宮川哲)が揃って在籍する事となりました。

社会人No.1の底力こそ見せたが…

サムネに映ってはいけないものが…幽霊?

…ともかく、入団後宮川選手はルーキーイヤーから中継ぎとして49試合に登板。その後も中継ぎとして活躍し、22年には45試合に登板して防御率2.59、WHIP1.34とフル回転し平良海馬(61試合・防御率1.56)や水上由伸(60試合・防御率1.77)、森脇亮介(43試合・防御率1.72)や本田圭佑(45試合・防御率1.97)などと言った防御率1点台を残した選手が揃う鉄壁の中継ぎ陣を支えました。また23年には阪神戦で1軍初登板を果たし、5回1失点に抑えて試合を作り先発としてプロ初勝利をマークしました。しかしこの登板以降はパッとせず、4試合の出場に留まりました。

トレードへの経緯

ファームでは主に先発として起用され、2023年には20試合(うち17試合先発)に登板して103回を投げて防御率2.45を記録し、最優秀防御率のタイトルを獲得しました。一時期は中継ぎ事情を支えた実績を持つ投手が僅か1年のみの不調で何故西武はトレードに踏み切ったのでしょうか。

・西武先発陣の充実
西武はロン毛エースである髙橋光成選手を始め、平良海馬選手・今井達也選手・隅田知一郎選手・與座海人選手・松本航選手といった強力な先発陣が存在し、先発へ転向し2軍でも好成績を残した宮川選手が付け入る隙が無い背景があります。ローテの合間として起用される可能性もありますが、後述のドラフト戦略もあり先発登板の可能性が限りなく少なくなったと考えられます。

・ドラフトで投手を大量指名
昨年のドラフト会議ではヤクルト・ソフトバンクとの競合で見事獲得しルーキーイヤーから先発定着が期待される武内夏暉選手を始め、育成選手含め指名した13名中10名が投手(さらに1~5位は全て投手)であった背景があります。西武が若手を中心に投手陣全体の強化を図っていると考えられるため、宮川選手にチャンスがあるとすれば上記の柱となる投手が故障離脱した時の穴埋めぐらいと考えられます。

・若手中継ぎ陣の台頭
中継ぎ陣も豆田泰志選手(21)や佐藤隼輔選手(24)、青山美夏人選手(23)といった若手が台頭してきた事もあり、宮川選手が中継ぎに再転向しても年齢と彼らと比較してのパフォーマンスの関係で不利な状況に追い込まれている事が伺えます。

・ヤクルト先発陣の強化
ヤクルトファンならご存知の通り、慢性的な先発不足に陥っています。昨年も小川泰弘選手やサイスニード選手、ピーターズ選手(現FA)が先発の柱として活躍したものの、後半から先発に定着した小澤怜史選手や7月に支配下復帰した山野太一選手以外に突出した選手が見られぬままシーズンを終えました。また23年オフにFAとなった山崎福也さちや選手(日本ハム)や石田健大選手(DeNA)の獲得失敗ピーターズ選手の退団により先発事情がさらに厳しくなり、後述のやや余剰気味となった内野陣のバランスも踏まえて今回のトレードに至ったと考えられます。

一方で元山飛優選手の獲得に至ったのは以下の背景が想定されます。

・一部内野陣の外野コンバート
西武は23年オフに○○○○(名前を言ってはいけないあの人)や呉念庭ウーネンティン選手といった内野手の放出、松井監督の意向で元々内野手である平沼翔太選手や山村崇嘉たかよし選手が秋季キャンプで外野練習に励んでおり、外野レギュラー奪取に向けてノックを受けていました。恐らく彼らが今後外野守備の一員として務める背景もあって、基本内野専となる元山選手に白羽の矢が立ったと考えられます。今回のトレードは西武でなかなか外野の若手が台頭してこない事も考えられるでしょう。

・二遊間レギュラーの高齢化と3Bの守備要員
2019年から定着している"トノゲン"(外崎修汰選手・と源田壮亮選手)はいずれもGG賞を受賞している球界でも屈指の堅守な二遊間コンビですが、外崎選手は今年32歳、源田選手は31歳とベテランの域へと到達しています。世代交代を行うには適齢ですし、今後の二遊間候補としての獲得が考えられます。また真獅子の骨と牙と言われる中村剛也選手も40歳を迎え、23年から3Bを守る機会が増えてきた為に彼のバックアップ要員としての獲得が十分に考えられます。また西武の3Bは現状佐藤龍世選手が定着し始めていますが、彼の競争意識を高める為の獲得としても考えられるでしょう。

・ヤクルト内野陣のプロスペクト増加
ヤクルトはここ3年で遊撃手含め内野のプロスペクトが大いに増加しました。21年の日本一の際には西浦直亨選手(現DeNA)か元山選手とでファンの間で起用における論争が繰り広げられておりなかなか若手も伸びてこなかったのですが、22年から若手の台頭が顕著に見られています。レギュラーに定着した22年からいきなり球団最年少となる遊撃手部門のGG賞を獲得した長岡秀樹選手や広い守備範囲とシュアなバッティングが持ち味の武岡龍世選手、内外のユーティリティであり22年のフレッシュオールスターではMVPを獲得した赤羽由紘選手、長打力があり右の大砲として期待がかかる北村恵吾選手などが挙げられます。21年こそ遊撃手のレギュラーを勝ち取る寸前まで到達したものの、21年10月のクライマックスシリーズ前に右手首の死球を受けた事や中堅になりますが現役ドラフトで巨人から内野を一通り守れる北村拓己選手を獲得した事もあり、若手が台頭していく中で内野が余剰気味となり彼自身も二軍でもなかなか成果が出ない状況を踏まえて今回のトレードに至ったとも考えられるでしょう。

適性は先発?中継ぎ?

宮川選手は便利屋として使い勝手のある分、慢性的に不足する先発で起用するか、安定感のある中継ぎで起用するかは非常に悩ましいポイント。トレードが成立した当初、小川GMは彼を先発で起用すると明言していましたが、個人的にはまず中継ぎとして運用し彼らの粒が揃ってきたタイミングで先発に本格転向させるという算段だと思います。平良海馬選手のようにスムーズに調整できていけばベストですが、いくら昨季から先発起用されたとはいえ調整方法や新天地のクセのあるマウンド、投球ペースの配分に苦しむ現実に直面すると思います。そこでまずはリリーフとしてチームに馴染みつつ、ビハインド要員やロングリリーフとして結果を残して最終的に(来季以降?)スターターとして調整してもらうというステップアップ式で育成する流れになると想定しています。ケガ人続出という事もあり慢性的な先発不足が直らないヤクルトではありますが、奥川を始め22年ドラ1の山下・23年ドラ1の西舘を含め焦らずに今後先発候補が現れる事に期待したいですね…。

昨年の投球データを見てみましょう。

2023年の投球データ。昨年は一昨年の間違いで2022年を指しますごめんなさい

彼が武器としているフォーシームとパワーカーブの被打率がいずれも3割を超えており、特にパワーカーブは.467(15-7)と母数こそ少ないものの4割以上も打たれています。昨年の成績はプロ初となる4度の先発登板であった事を加味しても防御率7.16、WHIPも2.20とお世辞にも良いとは言えない内容です。まずは嘉弥真のスライダーと同様にまずは生命線となるフォーシームとパワーカーブの精度改善、左打者対策のフォークも兼ねて中継ぎで結果を残すのが最重要ではないかと思います。戸田で先発調整をするのもアリですが、先発陣に比べ比較的安定している中継ぎ陣も清水を始め勤続疲労が目立つ選手もいるのでそんな余裕がないのが現状なんですよね…。

またオープン戦の内容を確認すると、宮川選手は中継ぎタイプではないか?と思わせる投球を見せていました。ストレートは最速148km/hで回転数は2569(入団時2490)をマーク。ホップ成分も高いものと想定しており、制球面で自滅する事も少なく、出力も考えると個人的には一旦中継ぎで様子を見ておけば良いのではないかと感じました。

少し中継ぎ事情の話を

更新に時間掛かりすぎたので多少内容を盛り込んでもいいですよね
少し話は変わりますが、現状のヤクルト中継ぎ陣は8回清水、9回田口以外に固定されている投手がおらず、7回の男も現状ガラ空き状態です。勝ちパの候補としては、

※新戦力組(エスパーダ・嘉弥真新也)は候補に含めず

となります。指標的には総合的に悪くない木澤でもWHIPは1.28ですが制球が乱れるシーンが多く、中継ぎとしては比較的多い5与死球を記録しています。もちろん信頼できない訳ではないのですが、木澤はとにかく対左打者対策(23年は右被打率が.179に対し左は.269)やメインとなるシュートのコマンドを少しでも上げない事には中継ぎ陣の序列アップは難しいと判断していますが今年も中継ぎの柱として十分仕事を果たしてくれるでしょう。

また大西も55イニングを投げてWHIP1.18と安定していますが、得点圏時の被打率は.241とやや高く(上記トップは木澤の.210)、登板時には動揺を見せるなど一皮剥けられない一面もあります。オープン戦では今のところ好投を見せておりストレートにもキレが見られるので開幕一軍は間違い無さそうですが、彼は便利屋という立ち位置であり起用法が読めない部分があります。更にステップアップしていけば新しく7回の男を務める可能性が高いです。

星は23年オフのSSTCを通じて球速アップを試みたことで、昨年のオープン戦では平均152km/h、最速154km/hを投じてファンを大いに驚かせました。シーズンが進んでいくと次第に出力が弱まり、采配面における謎継投もあってか最終的に防御率3.38、WHIP1.25に落ち着きましたが、キャリアハイとなる47試合に登板し20ホールドをマークしました。フォーシームを改良した事により大きな武器を手に入れたので、今後は年間を通して球威が落ちないように投げ抜く体力を保ってもらいたいですね。ちなみに一昨年トレードでロッテに移籍し星とともにSSTCでトレーニングを積んだ坂本光士郎選手も自己最速となる153km/hをマークし、成績も51試合に登板して1勝0敗16ホールド、防御率3.21とキャリアハイを叩きロッテの中継ぎ陣を支えました。SSTCについてはNamikiさんが書かれている下記noteが一番詳しいかと思います。

丸山翔は主にビハインドで仕事を果たした若手で今後の成長次第では勝ちパも十分に有り得ます。石山もスライダーを中心にインコースの制球力が良化しており、阪口はフォーシームの被打率が高い傾向にありますが、新たにスイーパーを習得して決め球として改良を続けており、これが上手くハマれば一気に勝ちパに食い込める可能性を秘めています。上記以外にはサウスポー要員である嘉弥真や山本が安定感ある投球を続けています。教育リーグでは今野が150km/hをマークして好投を見せ、近藤も復帰登板し支配下復帰への道へ確実に歩を進めています!

ただ上記の通り期待要素も多いですが些か不安要素もあります。8回固定の清水は勤続疲労が心配されており、また救援陣はまだまだ盤石な体制とは言えず、マクガフの穴こそ埋められたものの火消し人の枠もいないので現状田口の穴は埋めきれていません。ちなみに23年ヤクルトの救援防御率は3.21(両リーグ10位、ちなみに21年と同成績)、超強力投手陣を用いて日本一となった阪神は2.39でした。本拠地の違いがあるとは言えど、ある程度改善が出来れば21年を超える救援防御率2点台後半が見えてくると思いますし、是非ともその中に宮川選手にも貢献してもらいたいものです。

春季キャンプ時にはウォーミングアップ中に宮川選手が熱唱する「酒と泪と男と女」が流れ、チームに少しずつ慣れてきています。オープン戦では打たれはしたものの、フォーシームに勢いがあって四球で崩れる事もなかったですし、決め球となるパワーカーブを持っているので修正次第では彼の持ち味が開花する可能性を秘めています。ヤクルトには珍しい回転数やホップ成分のあるフォーシームと決め球であるパワーカーブを持つ素材型投手の宮川哲選手。是非とも投手陣の中心的存在に立てると良いですね!


4ヶ月に渡って連載してきたこの「ヤクルト再生工場2024」ですが、改めて見てみると文章が下手くそだったりリサーチ不足と感じる所が随所に見られ、改めて構成力不足と知識不足を露見する結果になってしまったと感じています。もう少しリサーチ能力を向上させて上手く文章を書ける人になりたい。大してフォロワーが多くないのもあるかもですが。そんな駄文に塗れた私のnoteを読んでくださり、本当にありがとうございます!!

もうすぐ球春到来ですが、シーズン中にトレードがあればまたこちらを更新していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!

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出典

ヤクルト・元山飛優と西武・宮川哲で電撃トレード成立! 燕の背番号「6」と獅子の20年ドラ1右腕(サンケイスポーツ・2023年12月21日)
甲子園未出場、指名漏れ、社会人時代の挫折… 西武ドラフト1位・宮川哲が歩んだ野球人生(Full-Count・2019年12月24日)
東芝・宮川、自己最速154キロも敗れる(スポーツ報知・2019年5月27日)
2022年 シーズン振り返り(埼玉西武ライオンズオフィシャルサイト)
西武・実りの秋とするために――。指揮官が目論む若獅子個々のレベルアップ「この練習と高知に行ってのキャンプ、覚悟しといてください!」(松井監督)(週刊ベースボールONLINE・2023年11月22日)
右手首付近に死球を受け途中交代のヤクルト・元山について高津監督「今は何とも言えないです」(サンケイスポーツ・2021年10月21日)
ヤクルト・小川GM、西武からトレード加入の宮川哲に期待「勝つための戦力。先発としてやってもらいたい」(サンケイスポーツ・2023年12月21日)
ドラフト指名投手のストレートを徹底解剖!佐々木・奥川・宮川らの球質は??(Baseball Geeks・2020年2月21日)
リアルタイム速報 ソフトバンクvsヤクルト(日刊スポーツ・2024年3月5日)
ヤクルト・阪口皓亮、変化球のみの組み立てで打者を翻弄 開幕1軍入りアピール(サンケイスポーツ・2024年3月11日)
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