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香港 :なぜ人はパニック買いをするのか

感染者3万人・死者数SARS越えのコロナウイルスとの戦いが、世界各国で新たな日常になってきた今日この頃。香港では、街のおじちゃんおばちゃん達が気勢をあげて、食品や日用品の争奪戦を繰り広げている。

(むかしむかしあるところに・・・)おじいさんは山狩りじゃなくてマスクを狩りに、深夜から薬局の前にキャンプを張って並ぶ。おばあさんは洗濯なんて後回し。トイレットペーパー3パックを背中に括り付け、お米を両手に持ち、スーパーを数軒走り回る・・・。童話負けのタフな老人が、香港やシンガポールで大活躍している。出遅れてガラガラの棚を前に、スーパーで呆然と立ち腐る若者をテレビでみながら嘲笑うのが、彼らの人生の醍醐味なのかもしれない(ただの想像です)。

そんな勝手な想像は置いておいて、なんでパニック買いが起こるのか考えてみた。よく理由として挙げられるのは、社会心理学で知られる「集団思考/集団浅慮」(グループシンク)。「集団の悪いところが出て、意思決定が考えの浅い「愚かな」結論に至る」という現象らしい。

この研究を元に「集団浅慮の症状の一環、同調圧力のせいでパニック買いなど、人々は不毛な行動に走っている」と考えるのは一理あると思う。周りの人がヒステリックにトイレットペーパーを買っているのを見ると、自分の取り分がなくなる。需要が高まる中でトイレットペーパーが、いつも以上に生活をするにあたって、必要不可欠なものに見えてくる。実際にないととっても惨めだ・・・と同調圧力が人々の頭の中で、いい仕事をしているのであろう。

私にはこのパニック買いがstress eatingのような、ストレス買いに見える。コロナウイルスに悩まされる人々は、精神的ストレスの反動で買い物に走っているのではないだろうか。実際にいつもより多く食料を買ったり、大枚を叩くでも、常備用のお米が手に入るといい気分がする。不安やストレスが一旦和らぐ。買い物欲を満たした結果の、アドレナリン効果だとも思えるし、充分な備ができたことに対する満足感と安心感がとても大きい。冒頭のおじいさんやおばあさんの心境(注:私の勝手な想像)みたいに、人と自分を比べた上での優越感もあるのかもしれない。スーパーでもう売り切れているものが家に常備してあると、自分えらい!先に買っておいてえらい!なんてほくそ笑んでしまう。

他人のこともお構いなしに、必要以上に日用品を買い占めることは野暮だし、ましては買い占めて高額で売るようなことは卑劣だと思う。じゃあ、担任の先生じゃなくて、政府に注意してもらおう!と権力者の助けを求める小学生並の論理が、簡単に思いつく、浅はかな解決策なのかもしれない。しかし人々の信頼を一切失った香港政府が、この様な行動を注意する、ましては国民を言葉だけでなだめる様なことをしたとしても、誰も耳を貸すものはいないであろう。


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