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外国人から見た名前入力に関するBADなUIデザイン

こんにちは!ゲストライターのトゥクです。
前回は、連載最初の記事として私の大学の学部卒業制作研究をもとにデザインとの向き合い方について、ご紹介いただきました。

私の紹介記事に関してはこちらをご覧ください。

そして今回からは私自身や家族、友人が外国人として日本に住む中で感じていることや、出来事についてご紹介していきます。

この連載では、外国人視点から日本に住む上で感じたこと、気づき、出来事を通して、読者の皆さんに新たな視点や発見を届けたいと思います。そして社会におけるマジョリティやマイノリティに関係なく、全ての人にとって良いデザインについて共に議論できると嬉しいです。

外国語名を日本語名のフォーマットに当てはめるって難しい!

今回私が紹介するのは「外国語名を日本語名のフォーマットに当てはめること」の難しさと、具体的に私が出会ったBADなUIデザインについてです。
役所や病院、インターネットの個人情報入力欄、あらゆる場面で自身の名前を聞かれます。そしてほとんどのフォーマットにおいて「姓」「名」と「ひらがなorカタカナ」の記入が求められます。
対面では窓口の担当者が手続きのサポートをしてくださいますが、デジタルにおける名前入力では、なぜか入力結果が名前入力のフォーマットにそぐわない場合にエラーが発生し、次の場面に進めないなどの体験が多々ありました。
この様な経験から、外国語名がそのようなフォーマットに沿うことは、小さな障壁があったりするのではないかと感じています。
以下に3つほど、私自身が障壁を感じた体験を紹介いたします。

①ミドルネームがある場合

外国語名ではミドルネームがある場合があります。例として私のフルネームは、LA THANH TRUC(ラ・タン・トゥク)と書きます。THANH(タン)にあたる部分がミドルネームになりますが、日本におけるほどんとのフォーマットでは「姓」「名」と名前を2つに分けないといけないので、ミドルネームの位置に困ることが多々あります。分け方としてラタン・トゥクまたは、ラ・タントゥクなのかは担当者によく聞かれています。結果的にどちらの分け方で書類を作ってもらったのか忘れて、ログインなどができなくなったこともあったりしました...。

②ふりがなの難しさ

みなさんは外国語名が読めないことがありますか?そもそも外国語と日本語は、大きく異なっており発音も難しいですよね。なので、外国語名を日本人が読むことはとても難しく、外国人からしても自分自身の名前に”ふりがな”をふることがとても難しいのです。
例えば、私の家族で”NGAN”というベトナム語の名前の方がいます。この綴りを「グァン」または「ガン」と表記するべきなのか明確でないため、市役所と病院で間違えて登録してしまったことがあります。その表記の揺れを覚えておらずどちらかで後から問い合わせした際に、「名前がありません」と言われてしまうこともありました。
ちなみに外国人が日本に滞在する上で携帯する必要がある在留カードや関連する手続き書類のフォーマットでは、基本的にローマ字で名前が書かれており振り仮名欄がありません。入国管理局の窓口では、スタッフさんがなんとか頑張って呼んでいました(笑)

③文字数の制限がされることも

オンライン上で困るようなUIに遭遇することがあります。名前の入力フォームに文字数制限が設定されている場合です。日本語名をローマ字に変換しても基本的には文字数が長くなることはありませんが、外国語名は元から長い場合があります。そのため、日本語名の平均的な文字数に合わせて、文字数制限が設定されている場合には、ひたすらエラーが出てしまい次に進めないことがあります。ただ、このデザインは長い名前の日本語名にも配慮が出来ていないですね。

私が出会った、外国人から見たらBADなUI

上記のようなことに加えて、最近私が遭遇してびっくりしたUIも紹介します。
とある航空チケット購入サイト(そして外国人観光客の利用も考えられる)にて購入手続きをした際に、入力したカタカナ名が自動的にローマ字変換してくれる入力フォームがありました。
例えば、「山田 花子」と入力すれば自動的に振り仮名として「YAMADA HANAKO」と日本語ローマ字に反映してくれるものです。
この機能は、振り仮名入力の手間を省いてくれるので、日本人にとっては大変便利な機能です。
ただ、私の名前を入力すると「RATAN TUKU」(ラタンツク...?)と反映されてしまったのです。もちろん公的身分証明書の表記と異なる表記です。そして、サイト内の注意事項には「搭乗時に身分証明書確認をお願いする場合があります」という記載があり、身分証明書の仮名表記と一致させる必要がありました。しかしながら、一致させたくても自動的に生成された振り仮名を再編集する機能が見当たりませんでした。(私の探すスキルがなかったのだろうか)
結局そのまま再編集できずにチケットを購入しましたが、心配になったのでお問い合わせ(メールのみ)で名前を変更してもらいました。
この様なUI/UXにならざるを得なかった理由もあるかとは思いますが、メインの利用者(日本人)にはとても親切な設計に感じた反面、外国人の私にとっては、大変BADなUI/UXだったなあという体験です。

誰もが使いやすくするためには「余白」が必要なのかもしれない。

では、あらゆる人にとってスムーズな名前入力フォームはどうすればいいのでしょうか?私自身も未だにこれだ!というデザインに出会っていないので、読者の中で「こういうデザインはどうですか?」とご意見がありましたら、ぜひ教えてください。

どんな場合にも対応できる完璧なデザインに出会ったことはまだ無いですが、自分自身がデザイン・設計を行う際には、このような当事者の視点を理解し配慮する姿勢をもつことがとても大事だと思っています。私個人の感想としては、今回の事例において下記の二つの思想を持ってデザインをすることが大切だと思いました。

①あらゆる場合を考慮して余白を残す

名前の入力フォームはさまざまな要件から設計をする必要があります。文字数制限もその一例だと思います。しかしながら制限を多く設定しても、かえってエラーが発生する確率を高めてしまいます。
それに加えて、今回の事例のような「ユーザーが使い始める入り口である登録体験」と言う段階では、特段ユーザーにとって心地の悪い体験にならないよう気をつける必要があると思います。そのため、文字数やカタカナ表記の指定、全角文字入力などの指定など完全に制限をかけるのではなく、ユーザーに選択や決定を委ねる余白部分を残しながらデザインしても良いかもしれません。またはプロダクトの成長に応じて、そのような改修を行っていく必要があるかと思います。

②利用側ユーザーに頼りすぎない

ユーザー情報を管理する上で名前入力フォームの設計はとても大事です。そしてそれが管理効率の向上に繋がります。ですが、管理のしやすさを優先し、均一化された入力フォームなどを設計してしまう事は、多様なユーザーの存在を無視することに繋がります。
その事を踏まえ、私は管理者側UIやDB(データベース)の設計、オペレーションフロー、などで配慮できることがあるのではないかと思っています。
例えば電話などでユーザーからのお問合せがあった際、人によっては聞き取りにくい場合のある名前から聞くのではなく、あまり変化しない情報(例えば数字で表現する電話番号、住所など)から聞くことで顧客情報を絞りやすくなるのではないかと思います。その前提で、UI画面設計の配慮をする必要がありますし、できるはずです。その配慮は外国人だけでなく、同姓同名が多い日本人にとっても良い体験につながる可能性があります。
このようにユーザーに頼りすぎず、企業側でカバーできることもあると私は考えています。

おわりに

ここまで「名前」と言うトピックに関して、外国人である私の視点から見たUIデザインに関連する出来事を紹介してきました。いかがだったでしょうか?
私自身、日本に長く住んできたのでだんだん慣れてきましたが、日本語名で生活してきた日本の方々では気づくことが難しい視点を提供できたのでは無いかと思います。
この記事を通して、「確かに」「なるほど」と言う発見を提供すると共に、何気ない日常生活で出会う種々の事柄を、多様な視点で見つめ直してもらえたら嬉しいです。
次回も、今回とはまた違ったトピックに関して外国人としての視点からの感想をお届けしようと思っています。毎月更新していく予定ですので、また来月の記事も楽しみにしていてください!
ここまでご愛読くださり誠にありがとうございました!


とぅく / Lathanh Truc:DeNAデザイナー
ベトナムホーチミン市出身。
多摩美術大学情報デザインコース卒。Takram UIデザインインターン生。
「UX/UIデザイン」「デザインマネジメント」「対話する場づくり」「ひとりひとりの背中を押して、人生を応援するデザイン」
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