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東洋文庫ミュージアム 企画展「キリスト教交流史ー宣教師のみた日本、アジアー」をもっと楽しめる!おすすめ本5選

東洋文庫ミュージアムで開催される企画展「キリスト教交流史ー宣教師のみた日本、アジアー」(1/27~5/12)をもっと楽しめる!

誰もが知る世界的宗教、キリスト教。
西洋と東洋の文化交流の歴史に、その布教への熱意は大きな役割を担いました。

はじめは陸路で、大航海時代には海路を使って。
多くの宣教師たちがアジア諸地域を訪れましたが、キリスト教に対する反応や受容のあり方は、地域ごとに異なるものでした。
今回紹介する企画展は、キリスト教交流史の視点からアジアを眺め、アジア各地の多様性や特徴を浮き彫りにします。

会場では国指定重要文化財「ドチリーナ・キリシタン」をはじめ、多くの貴重な資料を見ることができます!

「ドチリーナ・キリシタン」 東洋文庫ミュージアムオフィシャルXより。
ラテン語と思いきやじつはローマ字。
頑張ればちょっと読める。

せっかくなので、この「ドチリーナ・キリシタン」のすごさをすこし紹介します。
正式名称は「ドチリーナ・キリシタン〈吉利支丹版天草刊/西暦一五九二年〉」
キリスト教布教のために、カトリックの教えをわかりやすくまとめた1冊です。
刊行は1592年……つまり天正20年、文禄元年。
天下人・豊臣秀吉が、まさに唐入りをはじめようという年に刷られた本です。
文化の交流と軋轢。歴史好きにはたまりません。
「吉利支丹版(キリシタン版)」とは、イエズス会の宣教師が、ヨーロッパから輸入した活版印刷機を使って印刷した書籍のこと。
また「天草刊」は、この本が天草のコレジオ(神学校)で作られたことを表しています。
江戸時代のキリシタン弾圧を経て、現存するキリシタン版はわずか30点ほど。
この「ドチリーナ・キリシタン(吉利支丹版天草刊)」に至っては、現存するのは本展で展示されるこの1冊だけ!
非常に貴重な資料なのです。

設立時からキリスト教関係の貴重書を豊富に所蔵している東洋文庫。
関連する資料は、質・量ともに国内有数です。

キリスト教を軸とした東西交流の歴史をひもとく数々の貴重資料が展示される企画展を、もっと楽しめる!
見たけどよくわかんなかった、そんな人にもおすすめしたい!
そんな5冊をご紹介します。

本日ご紹介するのは、こちらの5冊です!

①東方見聞録 (角川ソフィア文庫)マルコ・ポーロ (著), 長澤 和俊 (翻訳, 解説)
② 宣教のヨーロッパ-大航海時代のイエズス会と托鉢修道会 (中公新書 2516)佐藤 彰一 (著)
③ クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫 上・下)若桑みどり(著)

④ 描かれたザビエルと戦国日本(勉誠出版)鹿毛敏夫 (編集)
⑤ 長崎キリシタン史(雄山閣)山崎 信二 (著)

①東方見聞録 (角川ソフィア文庫)マルコ・ポーロ (著), 長澤 和俊 (翻訳, 解説)

ホームページから試し読み可能です。

https://www.kadokawa.co.jp/product/322006000597/
著者名:マルコ・ポーロ (著), 長澤 和俊 (翻訳, 解説)
出版社名:KADOKAWA(角川ソフィア文庫)
定価:1,188円 (本体1,080円+税)
文庫判:336ページ

【現地を踏査したシルクロード史家が「旅人の眼」で訳し読み解く不朽の名著】

ヴェネツィア商人の息子マルコは中国へ陸路で渡り、13世紀のアジア世界を支配するフビライ・ハーンの絢爛たる宮廷へと辿り着く。元朝の使者として見聞した各地の暮らしや奇妙な風習、宗教、貨幣や通信制度、そして財宝の島ジパングと元寇の顛末。ヨーロッパ人の驚異を集めたその冒険譚は、コロンブスを突き動かし、大航海時代の原動力となった。生涯を中央アジアの踏査にささげたシルクロード史家が、旅人の眼で訳し読み解く。
(KADOKAWA HPより)

大航海時代の男たちをアジアへと駆り立てた、マルコ・ポーロの東方見聞録。
平凡社ライブラリーの「完訳版(愛后松男 訳)」もありますが、こちらは2冊合わせて950ページ近い大ボリューム。
どんな事が書いてあるのかちょっと読んでみたい!という時には、
まずはこちらの長澤版のほうがとっつきやすく、おすすめです。

② 宣教のヨーロッパ-大航海時代のイエズス会と托鉢修道会 (中公新書 2516)佐藤 彰一 (著)

https://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/11/102516.html
著者名:佐藤彰一 (著)
出版社名:中央公論新社(中公新書)
定価:968円 (本体880円+税)
新書判:288ページ

【大海原を超え、異郷へ赴いた修道士たちの思想と足跡】

ルターに端を発する十六世紀ヨーロッパの宗教的動揺は、イエズス会というまったく新しい組織を生んだ。霊操と教育を重視し、異教徒への宣教を実践するイエズス会は、ポルトガル・スペインの植民地開拓と軌を一にして、新大陸やアジアへと進出した。かれらの思想や布教方法はどのようなものだったか。いかなる経済的基盤に支えられていたのか。現地社会に与えた影響や「キリスト教の世界化」のプロセスを詳細に検証する。
(中央公論新社HPより)

中央公論新社のホームページには、著者のインタビューが掲載されています。博物館に向かう電車のなかで、さっと目を通していくのもいいかも。

③ クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫 上・下)若桑みどり(著)

https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-746274-6
著者名:若桑みどり (著)
出版社名:集英社(集英社文庫)
定価:上・下各1,155円 (本体1,050円+税)
文庫判:上・576ページ/下・504ページ

【歴史の荒波を生きた四人の少年(クアトロ・ラガッツィ)の軌跡】

世界経済とカトリック教会の世界布教という二つの大きな波が押し寄せた信長・秀吉の時代の日本。怒濤の世界へ船出し、初めてローマを見た天正少年使節とは何だったのか。
ローマへ到着し、その凛々しさで多くの人々に感銘を与えた少年たち。だが彼らを祖国で待っていたのは、禁教の弾圧と虐殺だった。ローマ、ヴァチカン、ゴア、マカオに取材した大仏次郎賞受賞作。
(集英社HPより)

単行本の初版は平成15年。20年にわたって読みつがれている、根強いファンを持つ名著です。
上・下あわせて1000ページ超。じっくり腰をすえて読みたい大ボリュームですが、中には「徹夜で一気読みした」というすごい意見も。

そんな長編はさすがにちょっと……という人にはこちら!
この「クアトロ・ラガッツィ」を原案とした全10話の歴史ドラマ、
「MAGI 天正遣欧少年使節団」がAmazon Primeで配信されています。

天正遣欧少年使節団の正使・伊東マンショ役は野村周平さん。

④ 描かれたザビエルと戦国日本(勉誠出版)鹿毛敏夫 (編集)

https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100682
著者名:鹿毛敏夫 (編)
出版社名:勉誠社(勉誠出版)
定価:3,080円 (本体2,800円+税)
B5判:160ページ

【ザビエルがつなぐ日本と欧州】


ザビエルのアジア宣教活動と戦国日本の様相を如実に語る貴重史料、ポルトガル、サン・ロケ教会所蔵「ザビエルの生涯」連作油彩画全20点をフルカラーで公開し、詳細に解説。
アジア各地や日本における布教活動の実態、大内氏・大友氏ら大名への影響を考察した論考を収める。
(勉誠社HPより)

論考部分も読み応えがあるのですが、「ザビエルの生涯」をはじめ多くの油彩画がフルカラーで紹介されており、絵画部分だけでもかなり楽しめる1冊です。
日本でのザビエルの活躍が描かれていますが、ファンタジーで面白い!
宣教師たちからの伝聞と画家の想像で描かれた戦国日本はとてもエキゾチック。
日本を描いた絵だなんて、キャプションなしにはわかりません。
ぜひページをめくって、この面白さを体験してください。

⑤ 長崎キリシタン史(雄山閣)山崎 信二 (著)

https://www.yuzankaku.co.jp/products/detail.php?product_id=8262
著者名:山崎 信二 (著)
出版社名:雄山閣
定価:3,080円 (本体2,800円+税)
A5判:268ページ

【近世長崎キリシタン、六十年の歴史が1冊に】


全員キリシタンから全員仏教徒へ――
近世長崎キリシタンの栄光と悲劇の60年の歴史を余すことなく描き出す。
附考で長崎出土の花形十字文軒丸瓦の分類・出土地などから、その使用年代、キリスト教各会派による使用瓦の違い等を考察する。
(雄山閣HPより)

キリシタン史のひとつのヤマ場、殉教。
それだけでなく、その後の棄教、転びにいたるまでの過程までも描いた1冊です。
イエズス会・ドミニコ会・フランシスコ会の動きと、長崎奉行や在地代官、町年寄といった統治機構の動きの双方から、長崎キリシタンの歴史を資料をもとに丁寧に解説。
引用・参考文献も非常に充実しており、この分野でレポートや卒論を書く学生さんには、まずこの本をオススメしたい!

また、著者の山崎信二先生は、奈良文化財研究所に長年勤めた瓦研究の第一人者。
第Ⅱ部の「附考 キリスト教会の瓦― 長崎と鹿児島の花形十字文軒丸瓦を中心として ―」では、その知見を活かし、出土した瓦の分析から当時のキリスト教会の姿に迫っていきます。

東洋文庫ミュージアム 企画展「キリスト教交流史ー宣教師のみた日本、アジアー」をもっと楽しめる!
おすすめ本5選。いかがでしたか?

東洋文庫ミュージアムは、クマグス公式noteで連載中のマガジン「明大生の推しミュージアム」でも紹介しています。
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東洋文庫ミュージアムの目の前にある都立庭園「六義園(りくぎえん)」では、3月下旬ごろから枝垂れ桜が見頃を迎えます。
都内でお花見と博物館を一緒に楽しめる場所、といえばまずは上野のお山が思い浮かびますが、ここ東洋文庫ミュージアムも穴場のひとつ。
これからの季節のお出かけにオススメです!

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