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【読書日記】 太陽の棘 原田マハ著

第二次世界大戦後、アメリカ占領下にあった沖縄に従軍精神科医として赴任したエド・ウィルソンと、地元首里の画家たちとの出会い、交流の物語。

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日本人作家が、アメリカ人を主人公に書いている話はあまりない気がします。
エドがサンフランシスコ出身で、スタンフォード大学の医学生だったという設定は、私がかつて住んでいたエリアと重なり親しみがあったので懐かしい気分で読めました。

<あらすじ>

沖縄に赴任してきた若い医者エドは、沖縄戦での死闘をくぐり抜け、精神を病んでいる兵士たちと日々向かい合う。
同じ精神科医の若い同僚たちとエドは、休日にキャンプの外へドライブした。
首里の丘の上に偶然見つけたのが「ニシムイ アートビレッジ」。
ここには、セイキチ・タイラとその妻メグミ、幼い娘ミサオ、そして数人の男性がそれぞれに絵を描き、協力し合って暮らしていた。

戦前、サンフランシスコのアートスクールで学んでいたタイラは、故郷沖縄の風景を力強い色彩で描き、その個性的な画風にエドは魅せられる。
エド自身もかつて画家を目指していた時期があった。
医者になるために絵からは遠ざかっていたが、ニシムイの画家たちに出会いエドは再び休日に絵筆をとるようになる。

台風に見舞われ、ニシムイのコロニーが壊滅的被害を受けたり、沖縄人とアメリカ兵の暴力事件があったり、エド自身が傷害事件を起こしたりと、いくつかの波風があり1年半の任務を終えてエドはアメリカへ帰任した。
エドが起こした傷害事件のせいで、彼は基地から出られずタイラたちに別れの挨拶はできなかった。

後年、エドはサンフランシスコにクリニックを持つ。
オフィスの壁にはニシムイの画家たちが描いた絵を掛けていた。

<感想>

冒頭、84歳のエドが60年前に赴任していた沖縄に思いを馳せる場面があったので、終わりにはニシムイの画家たちの現在が書かれているのかな?と思っていたら、それはありませんでした。

ニシムイの画家たちは実在したそうですが、wikiってみてもいまいち具体的なことはわかりませんでした。
しかし、本の終わりに作者が、
「本作は、サンフランシスコ在住の精神科医、スタンレー・スタインバーグ博士との出会いなくしては生まれ得なかった」と記しているので、スタインバーグ医師は60年前、若い精神科医として赴任した沖縄で確かにニシムイの画家たちと出会い、現在も彼らの作品を所有しているのでしょう。

後半、著者らしい人情がにじみ出るエピソードがあり、この人の作品はどれも映画のようだと思いました。

キュレーターらしい原田マハ作品です。

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