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【読書日記】 「ままならないから私とあなた」 朝井リョウ 著

とても読みやすい小説でした。
そして、ふたつの話がおさめられているのですが、終始、若い人に囲まれている居心地の悪さを感じました。

その理由は、読み終わってからわかりました。

YouTubeは初心に帰りました

今回は先にYouTubeを作りました。


そもそも、私のこの長い読書感想を読む時間がもったいない人のために、また、他にもっと大事な用事があるからこんなところで時間を割いていられないんだよ、という人のために、それでも私が読んだ本の感想を伝えたくて始めた「読書Vlog」。

120秒程度に収めなくては!と思いつつ、なんせ私、おしゃべりなもんでなんでも長くなる傾向にありYouTubeもじわじわ長くなってしまっていました。

Final Cut Proまで購入してしまい、しかしコレ、iMovieの延長線上にあるのかな、と油断していたら意外と難しくて、まだまだ使いこなすのに時間がかかりそうです・・・。

こういう場合、初心に帰ることが大切。
今回のYouTubeはシンプルを心がけた結果、まずまずの出来ではないかと思っていますので、よかったら観てみてください。

平成生まれの作家

著者の朝井リョウさんは、平成生まれなんですね。

桐島、部活やめるってよ」という印象的なタイトルでデビューしたことはみなさんご存知でしょう。
このタイトルを見ただけでもう、「これは若いな」とピンと来ますよね。

「ままならないから・・・」の感想をひと言で述べるなら、
昭和生まれ、必読の書、
です。

居心地の悪さの正体

冒頭で、読書中ずっと居心地の悪さを感じていた、と書きましたが、その正体が私の「昭和体質」(いや、「バブル体質」か?)ではないかと思い至りました。

2編の小説のうち、最初のタイトルが「レンタル世界」。
私は後編の「ままならないから私とあなた」より、「レンタル世界」に胸を打たれました。

サラッとあらすじ


主人公の「俺」は、20代の会社員。
大学のラグビー部繋がりで、「先輩」と同じ会社に就職が決まった。
お互いに良いところ、悪いところ、恥ずかしいところ、全てを知り尽くしていると「俺」は思い込んでいたけれど、「先輩」の自宅を訪問した際に同伴した「レンタル彼女」から、思いも寄らない話を聞き、「先輩」に対して疑惑がわく。

平成的な内容


こんな大雑把に「平成的なストーリーでした」と言ってしまっていいものかどうか。

しかし、物心ついた時から携帯電話やパソコンがあり、好きなタレント、アーティストのライブをYouTubeで視聴するのが当たり前の世代が書いた小説は、私にはちょっとだけ違和感があります。

登場人物のひとりの「高松さん」が、

人生に何が起きるかなんて誰にもわからない。
その度に、世界の一部をレンタルしてどうにか生き延びている人のことをなぜ笑えるの?

「ままならないから私とあなた」朝井リョウ 著

と言う場面があるのですが、この部分にジェネレーションギャップを感じました。

私は1968年生まれで、就職してからもギリギリ、バブル経済を享受できた世代。
また、私の親世代も高度成長期に就職、結婚して私たちきょうだいを育てて来たので、毎月のお給料が潤沢ではなくても毎年増えていくのが当たり前だし、何より、終身雇用が揺らぐことのない時代だったので、生活に何の不安もない状態でした。

1992年(平成4年)にはそれまで高騰の一途を辿っていた土地の値段や株価が下がり、「この5〜6年の超好景気はバブルだったんだ」と日本中のテンションが一気に下がりました。
本来、「再構築」を意味するrestracturingがその頃から日本では企業の人員整理=リストラとして使われ出しましたね。


そこから長い就職氷河期に入り、高松さんが言うように「人生に何が起きるかなんて誰にもわからない」日々がやって来ました。
今日があまり良くない日だったとしても、失業することはないしお給料日になればまたお金も入ってくる、そういう時代ではなくなってきたんですね。

私たちの世代は、上でも書いたように親もまた日本経済が緩やかであっても右肩上がりの時期に家庭を築き、生まれた子供たちはほとんどみんなが似たような中流家庭で育ち、学生が売り手市場の時に就職、経済成長は続くと親子共々思い込んでいたわけです。
だから、未だにどこか楽観的なところがあり、仲間とわいわい過ごすのが好き。

逆に、「レンタル家族」を読んで、この世代のみんなはドライで孤独を好むように見え、自立しているなと、感じました。
バブル世代のように、群れていて安心するタイプとはまた違っているようです。

あなたはどんなふうに感じるでしょうか

年齢が40歳overの方々は、この小説に私が抱いたのと同じ違和感を感じるかもしれませんが、それを楽しむのも良しだし、いや、若い頃は時代にかかわらずみんな同じだ、と思いながら読むも良し。

私は周りを、若いのに地に足が着いている20代に囲まれた、時代錯誤な50代、の居心地の悪さを感じましたが、みなさんはどんなふうに感じるでしょうか。

どうも若い世代の考えていること、習性がわかりにくい、と感じているアラフィフ世代はぜひこれを読んでみてください。






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