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囲碁史記 第15回 日本初の打碁集『碁傳記』

 慶安五年(一六五二)に日本囲碁界において画期的な碁経が版本として刊行された。その版本とは『碁傳記』、日本初の打碁集である。
 
 慶安五年(一六五二)九月上旬
 加ラス丸通七□□町 (烏丸通七観音町)
 久須見九左衛門 開板

 
 上記は奥附に明記されたもので初版本である。
 この『碁傳記』が刊行されたことにより日本囲碁界が発展していったといっても過言ではない。
 平成八年五月に日本棋院は『江戸時代の囲碁の本』という書籍を出版した。その題名の通り江戸時代に発行された版本を、写真を撮り分かりやすく説明したものである。この中で版本は八十一種類掲載されているが、囲碁史研究家南雄司氏が後に最近調べたところ、未掲載のものがまだあり、把握できたもので百二十三種存在していることが確認された。
 江戸時代の碁経版本が四十二種類も増えているのである。この中で碁傳記として同内容の碁経版本が八回も繰返し刊行されている。いかに『碁傳記』が重要視されたかわかる。版本が擦切れてくると埋め木で修正して擦っていたことが分かる。明治に入り一回刊行され、以後この版木は行方不明になってしまい、それ以後碁傳記が発行された形跡は今のところない。

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