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酒イさんの本日もしんどい①

酒イさんなのだ。
noteを書きはじめて間もないのだ。
すこし自分のことも書いていこうと思い立ったのだ。

失敗エピソードから学びを得たお話を、シリーズでちょっとずつ書いていこうと思うのだ。

ほろ酔いの酒イさんへの突然の刺客

流しのギターの押し売りにNOと言えなかったエピソードなのだ。

とある休日の昼下がり。
日差しも暖かく風も心地よい絶好のお出かけ日よりだったのだ。

もともと買い物に出かける予定だった酒イさんは思い立った。
「今日は昼飲みするに最適な日だ」

お出かけコースに、お昼から営業している居酒屋も入れることにしたのだ。

お昼過ぎ。
いそいそと買い物を済ませた酒イさんは、お目当ての居酒屋へと向かうのだ
その居酒屋は繁華街の中心にある、こじんまりした和風居酒屋なのだ。
焼き鳥がおいしくて、ひとりでも気軽に入れるお店なのだ。

入り口から覗くと、先客は2人くらい。
酒イさんは居酒屋のカウンターの入り口に近い席に座ったのだ。

換気のために開け放っている入り口から、外の通りを行き交う人々の姿が見える。
酒イさんは外の景色を眺めながらお酒を飲むのが好きなのだ。

カチコチに凍らせたジョッキに注がれたビールをいただく。

うん!とっても美味しい!
注ぎたてのビールがおいしくないわけがないのだ。

気分をよくした酒イさんは追加のお酒をたのみつつ、お店の名物であるつくね串を注文したのだ。

このお店のつくねは軟骨入りで、炭火で表面が香ばしく焼かれていて
酒イさんの好みのタイプなのだ。

「おまたせ。はい、つくね串ね〜」
店員さんがつくね串を運んできてくれたときに事件は起こったのだ。

「こんにちは!流しのギターです。このリストの中から曲を選んで!」

え・・・え?

振り向くと、目の前にアコースティックギターを持った男性がいたのだ。
長い髪にニット帽をかぶった男性が、優しそうな表情を浮かべながら酒イさんの前に立ってたのだ。
よく路上で弾き語りをしていそうなタイプの人だったのだ。

とつぜんの来訪者にあっけにとられてしまった・・・。

「はい、これが曲のリストです!」

まだ事態を飲み込めていない酒イさんに、流しのギターさんは曲名が書かれた紙を手渡したのだ。

A4の用紙には手書きで曲のタイトルが20曲くらい。
どれも定番で最近のJ-POPの曲名が並んでいたのだ。

う、う〜ん・・・。
知ってる曲は多いけど、べつにいま聴きたい曲があるわけじゃないし・・・。

流しのギターさんは目を輝かせながら酒イさんが曲を選ぶのを待っている。

なにか1曲選んだほうがいいのかな・・・。
酒イさんはリストの中から最初に目についた曲を選ぶことにしたのだ。

「じゃ、じゃあ、髭ダンのプリテンダーで・・・」

「はい!プリテンダーですね!じゃあ歌わせてもらいます!」

流しのギターさんは、勢い良くギターをかき鳴らしながら唐突に歌い始めた。

歌い出したのはいいんだけど、
ち、ちかい・・・!やたらめったら近くで歌い出したのだ。
こんなに近くで歌うものなのだ・・・?
ギターさんはパーソナルスペースにぐいぐい入ってくるのだ。

そして、肝心の歌もあんまりうまくない・・・。

一生懸命歌うギターさんをよそに、早く終わらないかな〜って
気持ちでいっぱいになっていたのだ。

ひとしきり歌って満足した表情のギターさんは明るい表情で「ありがとうございます!よかったら・・・」
そう言ながら、バッグからごそごそと千円札やら500円玉が入った透明なビニール袋を取り出した。

(あ、ああ・・・チップね。
流しのギターだからチップだよね。)

酒イさんはお財布からお金を取り出して、その透明なビニール袋にチップを入れたのだ。
ギターさんはニッコリしながら「ありがとうございます!」
まっすぐこちらを見て礼儀正しくおじぎしたのだ。

酒イさんも会釈をしながら、

ふぅ・・・おわった・・・。

なんだか開放された気持ちになったのだ。

酒イさんの元を去ったギターさんは
店内にいた他のお客さんにも近づいて「曲、リクエストどうですか?」
と聞いて回っていたのだ。

ほかのお客さんは、
「いえ、結構です」
「ごめんなさい、大丈夫です」
と、みんな丁寧に断っていたのだ。

そこで酒イさんは、ハタと気づいたのだ。

(あ…そうか!べつに断ってもよかったんだ!)

あたり前といえばあたり前のことに、他のお客さんの反応を見て気づいたのだ。

沸き上がってきた感情は、なんで酒イさんは断れなかったんだろう。
べつに聴きたくもない曲を歌って欲しかったわけでもないのに・・・。

気づくと、お店ご自慢のつくねはすっかり冷めていたのだ・・・。

ギターさんへの恨みの気持ちではなく、ちゃんと断れなかった
自分自身への嫌悪感でいっぱいになってしまったのだ。

冷えたつくねを急いで食べながら、しみじみと自分への嫌悪感を噛み締めた。
残ったお酒をいっきに飲み干し、お会計をしてお店を出たのだ。

ほろ酔い気分はすっかり冷めていて、外の空気が肌寒く感じたのだ。
今日はもう帰ろう・・・。

楽しいはずの昼飲みは、みじめな気持ちになってしまったのだ。
とぼとぼとお家にむかったのだ。

まとめ

このエピソードを読んで、人によっては
「そんなんで大丈夫?ちゃんと断りなよ・・・」と思った人もたくさんいると思うのだ。

酒イさんも冷静に判断できるときは、きちんと断ることができるのだ。
でも、誰に強制されたわけでのないのにそのときは断れなかった。
なぜだろう…家に帰ってからいろいろと考えたのだ。

そこで、今回学んだ教訓なのだ。

教訓

流しのギターさんは押し売りのプロなのだ。
その気のない人にもリクエストしてもらって、チップをもらうのが仕事なのだ。

分析して分かった彼の手法は、

・相手が冷静に判断する前に自分の提案を通す
・冷静に判断される前に自分の選択肢の中から選ばせる
・先に恩を売ることで、後から自分の頼みを断りずらい状況に追い込む
・チップが入っている袋を見せることで、同様の金額を入金するものだという同調圧力を与える

冷静な判断をされる前に一気に畳み掛ける瞬発力の勝負なのだ。
それにすっかり酒イさんは巻き込まれてしまったのだ。

そこで学んだ教訓なのだ。

・迷ったときは相手のペースに巻き込まれない
・知らない人や名前もおぼろげな人の頼みやお願いごとは100%断っても大丈夫
・その頼みごと、自分じゃないといけない理由ってなに?と考える

知らない人やお互いに名前もよく覚えていないような人からの頼みごとは、
自分でなければいけない理由はないのだ。
たまたま頼みやすいタイミングと場所にそこにいただけなのだ。

なので、断ったとしてもまったく問題がないのだ。
「困ってそうだから」「助けてあげたい」と思ったときは自分から
動けばいいだけであって、相手から頼まれたから動くときは
ひと呼吸おいたほうがよいのだ。

自分のペースで自分の意志でしたことであれば、たとえそれが思い通りにいかなかったとしても納得できるはずなのだ。

おしまいなのだ。


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