結婚と改姓

 結婚、とりわけ改姓について考えてみた。

 これまで私は、自分の姓にこだわりがなかった。
下の名前に由来するあだ名にこそアイデンティティを感じていたものの、
名前全体にはそこまで愛着がない。
 現状の日本では、結婚(法律婚)をする場合、どちらかの姓に統一しなければならない。だから私は、相手の名字を名乗ろうと思っていた。
こだわりがないというのもそうだし、自分の名字がつまらないと感じていたのもある。さらには、男性で苗字を変えるという希少性も欲しかった。
 以上は、ぼんやりと考えていた改姓に対する私のスタンスだ。
いや「かつての」というのが正しいか。

 最近、少し別の要素が頭をかすめるようになったのである。
 妄想で自分がお金持ちの家に養子にもらわれたら、と考えたことがあった。
 子どもの頃に里子に出される的な話ではなく、私のことを気に入ってくれた誰かが、私に財産を譲りたいがために提案するというもの。
決して、アラサーの人間が考えることではない。だが、おかげでおもしろい発見をした。
 お金は大事だし、欲しい。だがしかし、苗字が変わることで、家族との関係がひとつ減ってしまう。これがどうにも受け入れられなかった。書面上のことだけであったとしてもだ。それによって思い出がなくなってしまうとか、精神的に頼れなくなってしまうとか、そういうことはないと頭ではわかっているけれど、考えただけで寂しくなってしまう。結束感とかそういうことではなく、何かを失う気がしてならなかったのだ。まぁ、妄想だから何もならないのだけど。
 その妄想を経て、改姓を考えたとき、ちょっと厳しいなと思ってしまった。
 一緒に暮らしておらず、これで苗字も変わってしまうと、いよいよ一つの区切りとなってしまう。帰る場所が無くなってしまう感じ。本当はそんなことないのも知っている。

 そうか、私は苗字に家族の繋がりを感じていたのか。
 もしも家族も一緒に改姓するというのであれば、きっと違っただろう。
それはそれで今度は、長年使ってきた苗字を変えさせることに罪悪感を抱きそうだが。
 だったら自分の名字を変えずに、相手の名字を変えればいいとなりそうなものだが、それも絶対にヤダ。よく話し合った結果だったとしても、男性の姓を名乗るというところに、傲慢さや上下関係みたいなものを感じてしまう厄介な性格なのだ(あくまでも私の感覚です)。
 そうして考え出した結論は、夫婦別姓にすればいいや、ということだった。

 冒頭に書いた通り、現在の日本ではそれはできないが、できるように政治に働きかければいいだけの話だ。時間はかかるかもしれないけど、気持ちよく生活できるのなら、全然受け入れる。


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