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コリン・ウィルソン「アウトサイダー」紀伊国屋書店


1957年発行セピア色の古書を県立図書館で借りて来た。
表題がいい!俺は「永遠のアウトサイダー」だと思っているから、読んでみようと思った。

この本は中学も出ていないコリン・ウィルソン青年が昼は大英図書館で独学、夜は皿洗いという生活をしていたところ、ある評論家にスカウトされ、出版したところ、大変なベストセラーに輝いたという作品らしい。基本的にここでいう「アウトサイダー」は「インサイダー」の秩序に対する批判精神をもった自己実現者として描かれている。

その「アウトサイダー」のモデルとしてヘッセ・サルトル・ゴッホ・ニジンスキー・ニーチェ・トルストイ・ドストエフスキーなどの人物と作品をひも解きながら、論をすすめていく。読んでいると「だから何なんだ?」と思ってしまう部分がかなりあるのだが、「解説あとがき」を読んですっきりした。

福田恆存氏の解説によると「アウトサイダー」を脱獄、あるいは破獄させる試みをしては諦めるといった、無謀な試みの記録といったことが書かれていたが、なるほど!確かにそういう印象を受けた。

それにしても筆者の広範な読書は半端ではない。何か永山則夫に似た「凄味」を感じてしまったのだ。「アウトサイダー」は俺にとっても永遠のテーマ!メモを通してまた振り返ってみよう。

それにしても・・著名な読書家の松岡正剛氏がこの「アウトサイダー」の書評をかいているのだが、あたかも自分の意見かのごとくに福田氏のあとがきを引用しているのを発見してしまって、ちょっとショック!!っつうか
「あ~、こんなことしてんだ」なんて思っちゃった^^!残念!!

<メモ1.本文より>
・アウトサイダーは混沌に気づいた人間である。
・アウトサイダーは信念によって生きない限り、宗教はまったく無用であると主張する。
・ニーチェの超人思想の出発点は「自己の偉大な部分に従うものは偉人であり、卑小な部分に従うものは小人である(孟子)」にある。
・アウトサイダーとは変装した預言者である。
・人間の背後には深淵が口を開け、虚無が控えている。「アウトサイダー」はそれを承知している。
・通常、人間の心というものは、現在の自分に直接必要な事物に対する意識のみで成り立っている。
・アウトサイダーを知るには中庸をすすめる善良なる市民よりも、徹底したお人よし、あるいは徹底した悪人の方が研究対象として好ましい。
・アウトサイダーは「すべての人は自己に不誠実で、感情の色眼鏡を通してしか世界を見ることができぬ」という事実を明敏な洞察で見抜いている。

<メモ2 あとがきより>
・アウトサイダーは内側からはじきだされたのではなく、自らの意思で内側を拒否し、「インサイダー」の秩序を虚偽とみなしている。
・アウトサイダーとは、自分のしたいことを、それと信じられぬ人間のことである。これこそ!と思ってなしてみると、それが自分のしたいことではなかったことを発見する。
・人間は、自分に最大限の自由を与えるために制度を設け、文明を築いてきた。けれども、文明生活という結果をあたかも本来の絶対条件であるかのように、当然のものとして受け入れる無批判な傾向が、文明が更けゆくにつれて早かれ遅かれ現われる。
・この作品はウイルソン自身の心理の生成過程に対応する告白書なのである。
・ウイルソンが一番いいたかったことは「自己実現」である。

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