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岩淵秀樹「韓国のグローバル人材養成力」講談社現代新書


「そもそも国という仕組みは複雑である。それをわかりやすいシナリオで語ることは本来不可能であり、特に何か一つの要素に還元しようとするのは危険である。国を語る上では、一つの見方で断定せずに、多様な見方、色々な要素の組み合わせで捉える必要がある」(KAIST金甲秀教授)

ここ数年「韓国から学ぶことなど何もない」といった乱暴かつ幼稚な説を唱える方が多々いらっしゃるが、本当にそうだろうか?

確かに厳しい経済状況は事実としてあるが、人材育成の力は決して侮れないと俺は思うし、この状況を覆すことのできる底力を彼らは持っている。本著は数年前の著作だが、著者は在韓国日本大使館の初代の科学技術担当書記官としてソウルで赴任していた官僚だ。現在、九州大学韓国研究センター学術共同研究員、文部科学省 科学技術・学術政策局政策課課長補佐(総括担当)として活躍している。

韓国の大学でよく聞かれることばが「スペック積み上げ」である。つまり、就職するにあたってはTOEICスコアや弁術力を持っておかないといけないというわけだ。その為に、特に英語熱は異常と言えるくらいに高い。

日本でもやっと早稲田大学で始めたようだが、韓国の名門大学には「英語オンリー」のキャンパスも存在する。旧帝大である九州大学は、韓国の地方大学である釜山大学と日韓海峡圏カレッジ(現アジア太平洋カレッジ)というイベントに英語の優秀者を送ったが、韓国の大学生の英語討論能力に舌を巻いたという。

韓国は海外に出ている留学生が多く、大学教授の87%が最終学位を海外でとっており、特に英語圏において開かれる学会に論文を発表することが当然になっている(研究実績は世界標準)。

このあたりは日本では理系では素晴らしい成果があるが、人文系は非常に島国的な状況になっている。企業においても有名なサムソンの地域専門家制度(下記)で約5000人のグローバル人材を育成している。

もちろん短所もある。なんせ「早く早く!」なので、じっくりと時間をかけた基礎研究の層ができにくい。この点はやはり日本が数段上を行っているだろう。俺も長年過ごしてその辺は分かっている。

俺が敢えてこの本を手にしたのは昨今の「韓国批判」「韓国こけおとし」系のジャンク本の蔓延が人々の「溜飲を下げる」ことにつながっても、決して発展にはつながらないことがわかるし「隣国から学ぶことが厳然として存在する」ことを確認するためだ。

著者は簡潔に「韓国の人材育成から学ぶこと」をまとめている。<国際マインド・リーダーシップの力・柔軟な戦略性・団結力・課題への迅速な対応・「なせばなる」の信念・努力に報いる姿勢・勤勉さ>俺はここに<雑草魂>を加えたい。

確かに自殺率が増えているという悲しいデータもあるが、一般の日本人に比べてサバイバルできる雑草魂やチャレンジ精神は持っていると思う。俺は韓国でそれを学んだと思う。今回は国際性という点で学ぶべきことがあった。俺はまさにその土俵でこれから戦ってく。韓国に学ぼう!

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