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057.山手80番館遺構(ブラフ80番メモリアルテラス)

 ■関東大震災で壊滅した石造り洋館
 元町商店街をウチキパンの方に入って、そのまままっすぐ行くと、ジェラールが作った地下水槽の遺構がある、その前を通り、かつての元町プールの横を上っていくと、坂道の途中、山手本通りに出る手前に石の建物の遺構が見える。これが山手80番遺構である。すぐ上にエリスマン邸がある。
 桜やカシ、ナラ、イチョウなどの木々が茂る元町公園のなか、山手のブラフと呼ばれた斜面(崖)の上部にせり出すように建てられていたマクガワン夫妻の邸宅は大正12(1923)年9月1日のマグニチュード7.9の関東大震災で壊滅状態になってしまった。
関東大震災の震源地は相模灘、横浜市内にあった石造りの洋館をほぼ全壊させてしまう状態で、揺れがいかに大きいものだったかを物語っている。
この日、マクガワン氏は商用で神戸に出ていたために一命をとりとめたが、この家に滞在していた夫人とメイドは、倒壊する建物とともに亡くなってしまった。

■鳥のなき声と葉の音-静かな公園を庭にした家
建物そのものは、明治末から大正初めに建てられたレンガ造りの3階建てで床面積180平方メートル、地震対策と斜面での強度をますために鉄柱の補強がされていたという(『古き横浜の壊滅』O・M・プール著、有隣堂)。
その土台部分が被災した当時のまま残されている珍しい遺構で、今はブラフ80番メモリアルテラスとして整備されている。
当時使われていた建物の間取りがあり、残されている外壁や水場のタイルなどからも家の様子が一部うかがえる。非前面の景色を生かすように機能的に作られた家のようで、自慢の家がこうして崩れ、ご夫人をなくしてしまったマクガワン氏の思いはいかばかりだったようか。神戸から戻って、眺めて愕然としたに違いない。
 鳥のなき声と風にゆれる葉の音を聞きながら、しばし往時の姿をしのんでみるのも悪くないかもしれない。

元町公園にある鳥のなき声と風にゆれる葉の音に囲まれた洋館の遺構

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