オガナリヨ

長崎市在住のライター&エディター。主に出版物・冊子の原稿執筆や編集、舞台やイベ…

オガナリヨ

長崎市在住のライター&エディター。主に出版物・冊子の原稿執筆や編集、舞台やイベントの脚本・シナリオなどを手がける。主な著作、『赤い花の記憶 天主堂物語 舞台裏』、『長崎偉人伝 永井隆』。主な脚本、市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』。

最近の記事

長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 9

終 お別れのときの巻 やがて、あそびんぼ太郎や妖怪達が順番に大切に持って守っていた2本の長い線香花火の赤い火玉が燃えつきて落ちてしまうときがやって来ました。「こいで気のすんだね? そろそろ帰る時間ばい」とあそびんぼ太郎はおじいちゃんとおばあちゃんに向かって語りかけました。 「はい。よか思い出のできました。初めて孫達と遊ぶことのできて、妖怪のみなさんにお礼ばいわんばできん。ありがとうございました」おじいちゃんは頭を下げました。「うちはいっぺんでよかけんミサキと一緒に遊びたか

    • 長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 8

      うろんちょろんと鬼ごっこの巻 最後にミサキが選んだ花火に、おじいちゃんとおばあちゃんも加わってみんなで、「なんでん いっちょん かんでん いっちょん こんこんこんね!」と呪文を唱えながら火打石を3回こすって火をつけました。 すると、胴長で尻尾の長いかわいい小動物のようなうろんちょろんが現われました。うろんちょろんは、全身が白っぽい毛の、昔諏訪神社の杜に棲んでいたいたずら神の化身です。 「さあ、おいば捕まえきるね? 自分(あなた)達2人が鬼ばい。おいは逃げるけんね」そう言

      • 長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 7

        ときもどしの不思議な術の巻 こうして、妖怪達やおじいちゃんやおばあちゃんとの楽しい遊びの時間は、あっという間に過ぎていきました。でも、何時間経っても外は夕暮れどきのままです。不思議なことにいつまでも暗い夜にはならなかったのです。 「今何時?」ミサキはたずねました。 「そろそろ帰らんばね。おかあさんの心配するけん」ミナトも不安顔です。 「えっ、まじで? でもまだ、ぜんぜん大丈夫っしょ」あそびんぼ太郎はニヤリとして、なぜか都会風の言葉で答えました。他の妖怪達も笑っています。

        • 長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 6

          コンコン婆さんとわらべ唄の巻 次にミナトが選んだ花火に、みんなが「なんでん いっちょん かんでん いっちょん こんこんこんね!」と呪文を唱えながら火をつけると、今度は閻魔大王の使いで三途の川の番人であるコンコン婆さんが現われました。 この妖怪は昔寺町のあるお寺に棲んでいました。コンコン婆さんは白髪でねずみ色のよれよれの薄い着物を着てしわくちゃ顔のしわがれ声で、「うちはわらべ唄ば教えるけ〜ん。上手に歌わんば2人とも閻魔大王様のおんなるところに連れて行くば〜い」と言って、長崎

        長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 9

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 5

          ぽこりんとあやとりの巻 ハタ揚げ遊びを終えて、ミナトとミサキとあそびんぼ太郎は、再び大稲佐天狗につかまりひとっ飛びして中島川のもとの場所まで送り届けてもらいました。あとからおじいちゃんとおばあちゃんも到着しました。それからミサキが次の花火を選び、みんなでまた「なんでん いっちょん かんでん いっちょん こんこんこんね!」と呪文を唱えながら火をつけました。 今度白い煙の中から現れたのは、金比羅山に昔から棲む子だぬき妖怪のぽこりんでした。 「うちはあやとりば教えると」ぽこり

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 5

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 4

          大稲佐天狗とハタ揚げの巻 ミナトが箱の中から次の花火を選び、妖怪達もみんな一緒になって例の呪文「なんでん いっちょん かんでん いっちょん こんこんこんね!」を唱え火打石で火をつけました。 すると、今度は白い煙の中から背の高い大きな天狗が高ゲタをはいて現われました。この天狗は昔薩摩の桜島から長崎の稲佐山に移り棲み大稲佐天狗と呼ばれるようになりました。 「おいどんはハタ揚げば教しえるとでごわす。さあ、おはんらば唐八景に連れて行きもんそ!」大稲佐天狗はいばってそう言うやいな

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 4

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 3

          カナカナ・キンキンと中国伝来の遊びの巻 次にミサキの選んだ花火に、あそびんぼ太郎がさっきと同じ呪文「なんでん いっちょん かんでん いっちょん こんこんこんね!」を唱えながら火をつけました。ミナトとミサキもおもしろがって一緒に呪文を唱えました。すると、今度は白い煙の中からチャルメラ吹きの双子のカナカナとキンキンが現われました。双子の妖怪はチャイナ帽をかぶりチャイナ服を着た中国人の姿で、「♪ぴゅるるーるる るるるるるるー」チャルメラをひと吹きしました。この双子の中国妖怪は不思

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 3

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 2

          しおふきんとセーラエンの巻 そのときです。ポッペンの音につられるように、突然、昔南蛮船に積んであった宝箱が、白い煙とともに空中にポンと現われたのでした。実は河童ははるか昔南蛮船に載せられてはるばる長崎にやって来ましたが、いつの間にか船から逃げ出して、中島川に棲みついた生き物でした。その宝箱をあそびんぼ太郎がキャッチし、地面に置いてふたを開くと、中から線香花火などの手持ち花火、矢火矢などの打ち上げ花火、爆竹、ドラゴン、ロケット花火、ねずみ花火など、いろんな種類の花火が出てきま

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 2

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 1

          中島川のあそびんぼ太郎 作:大串眞貴子 小川内清孝 小武家雄康 林田志帆 絵:林田志帆   長崎伝習所「ながさきで物語をつくろう塾」遊び班 序 あそびんぼ太郎とポッペンの巻 ある夏の日の夕暮れどきのことです。男の子と女の子が2人で中島川沿いの道を歩いていました。男の子の名はミナトといって七つ、女の子は五つになるミサキ、2人は仲良しの兄妹でした。 2人が眼鏡橋のたもとを通りかかったときのこと。石段の下の川岸で、何やら底の部分が丸く薄く、先が細長いたての管になった、キラキラ

          長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 1

          年賀状の最後に「年賀状じまいの方は返信不要です。」と書いてみたら

          年賀状の最後に「年賀状じまいの方は返信不要です。」と書いてみたら 最近、私の周囲で「年賀状じまい」が増えています。昨年は「今年で年賀状じまいにします」と記された年賀状が複数枚届きました。 そこで、もしからしたら「年賀状はもう出したくないのだけれど、先方から届くからしかたなしに返信している」人もいらっしゃるかと思い、今年の年賀状の最後に「年賀状じまいの方は返信不要です。」との一文を入れてみた。 すると効果覿(てき)面で、咋年に比べて約20枚届いた年賀状が減った。先方もこれ

          年賀状の最後に「年賀状じまいの方は返信不要です。」と書いてみたら

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その10

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その10 【この物語は、演劇未経験の中年男が、2015〜2018年に長崎ブリックホール・大ホール(2000席)で上演された市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』脚本を書くまでの実話である。】 『赤い花の記憶 天主堂物語』誕生 ミュージカル『OMURAグラフィティー』の公演が終わってから『光る海ハイライト公演』の構成台本を書くことになった。これは戯曲講座講師で演出家の先生から「誰か書く人い

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その10

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その9

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その9 【この物語は、演劇未経験の中年男が、2015〜2018年に長崎ブリックホール・大ホール(2000席)で上演された市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』脚本を書くまでの実話である。】 ついにチャンスが! 私が受けた戯曲講座の内容は、最初に講師の先生の体験に基づく講話があった。養成所やプロの劇団員の話はおもしろかったし、「戯曲は人間を描かなければいけない」などの言葉が記憶に残った。次

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その9

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その8

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その8 【この物語は、演劇未経験の中年男が、2015〜2018年に長崎ブリックホール・大ホール(2000席)で上演された市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』脚本を書くまでの実話である。】 心境の変化とういか、人生観の変化 その頃、私の落選は恒例行事のようになってしまった。落選を知ったときは毎回もうこれでやめようかと思うのだが、しばらくして関係者に誘われると、何となくまた次回に向けて戯曲

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その8

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その7

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その7 落選は続くよこまでも 【この物語は、演劇未経験の中年男が、2015〜2018年に長崎ブリックホール・大ホール(2000席)で上演された市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』脚本を書くまでの実話である。】 シーハットおおむらの戯曲講座は、東京の演出家の先生が講師となり、月に2日(土・日続けて)行われた。参加する人たちは市民ミュージカルのスタッフや出演者や舞台の脚本を書いてみたい人な

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その7

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その6

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その6 【この物語は、演劇未経験の中年男が、2015〜2018年に長崎ブリックホール・大ホール(2000席)で上演された市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』脚本を書くまでの実話である。】 スタッフとして市民ミュージカルに参加することに シーハットおおむらが募集したミュージカル原作に応募し、見事落選したので、シーハットおおむらとの縁は切れるはずだった。しかし、戯曲講座は続けられるというこ

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その6

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その5

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その5 【この物語は、演劇未経験の中年男が、2015〜2018年に長崎ブリックホール・大ホール(2000席)で上演された市民ミュージカル『赤い花の記憶 天主堂物語』脚本を書くまでの実話である。】 最初の落選 それから、市民ミュージカルの原作案を書き、私は応募した。内容は簡単に言うと「小学生が地域の食文化や特産品を調べ紹介していく」というものだった。約1か月後、シーハットおおむらの事務局から郵送

          落ちて、落ちて、また落ちて 演劇未経験・小脳梗塞発症・中年男の戯曲講座挑戦記 その5