るにぽぬた

合唱団に入っています。ピアノを少しだけ弾きます。 写真は自分で撮影したものです。日の丸…

るにぽぬた

合唱団に入っています。ピアノを少しだけ弾きます。 写真は自分で撮影したものです。日の丸写真で申し訳ないです。 能登半島地震で被災した経験をもとに小説を書くことにしました。 合唱団の再開の見込みはたっていません。

最近の記事

小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第15話

1月15日 熱は37度台になり、体は少し楽になった。 起き上がる途中の姿勢が喉に絡みやすいこと、そして痰を出すにはうつ伏せの姿勢がいいとわかった。 そのため、ずっとうつ伏せで痰を出し続けた。 点滴のおかげか、昨日よりも痰が切れやすい。どんどん出てくる。 ただ、何を食べても飲んでもむせるのは同じだった。 なめるだけならむせないことにも気づいたので、はちみつ湯も箸につけてなめるだけにする。 ひたすら箸をなめる。 虫になったような気分だ。 薬もむせてしまって何度も失敗するので、

    • 小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第14話

      1月14日 朝、何気なく起き上がるとヒューっという変な音がして、痰がからんで息ができなくなった。 慌ててシンクにいって、痰をはいた。 粘っこい黄色いものが出てきて、息ができるようになった。 父が背中をさすってくれた。 これがコロナの怖さなのだろうか。 Kさんが、赤十字の人を呼んで処理してもらったほうがいいといって、 電話をかけてくれた。 隔離部屋には何かあった場合にかける電話番号が貼ってあった。 例えば、ラップポンの袋がなくなった場合もそこに電話することになっていた。 電話

      • 小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第13話

        1月13日 朝、8時ごろ父がやってきて、38度の熱があると言った。 医師が保健室にくるのは9時からなので、それまで待たなくてはいけなかった。 昨日の夜、父のところに母から連絡があり、7時間かかって、スポーツセンターについたそうだ。 今でも7時間かかるとは思わなかった。 でも無事についてよかった。 放送で食料事情が悪くなっていると説明があった。 朝ご飯は長期保存のお菓子と水だった。 お菓子は乳酸菌の入ったクリームをサンドしてあるビスケットだ。 ちょっと酸っぱいのであまり好き

        • 小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第12話

          1月12日 朝は賞味期限切れの菓子パンだった。白湯と一緒に食べた。 母と祖母のシャワーの順番は9時からで、一番最初だった。 スタッフの人からシャワーの使い方の説明を受けた。 一人15分だが、二人同時なので、30分で大丈夫と言われた。 昨日の予定通りにシャワーを行い、祖母をバスタオルで拭いて、服を着せた。 ドライヤーが手洗い場に置いてあると聞いたので、かけてあげた。 しばらくしてから母がきて、さっぱりしたと言っていた。 私も生理が終わればシャワーを浴びたい。 普段冬にシャワ

        小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第15話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第11話

          1月11日 朝ご飯はいわし缶、水、おかきだった。 おかきはお米だし、朝でも食べやすい。 いわし缶は昨日と同じく、食べた後の缶の汁のにおいが気になるから食べない。 1.5次避難が今日ではなく、明日の12時に変更になったという連絡がきた。 義父母にも連絡をした。 今日出れると思っていたので、ちょっとがっかりしたようだった。 地震になってから時間などが変更になることはよくあった。 振り回されている感じはしなくもないが、それだけどこも混乱しているのだろう。 給水タンクが駐車場に

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第11話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第10話

          1月10日 今日は朝から気が重かった。 朝は缶入りビスケットだったが、おやつレベルの甘さだった。 こんなものを朝から食べられない。 少し食べてやめた。 これなら乾パンのほうがましだ。 放送でトイレ掃除のボランティア募集があった。 今いる人たちだけではとても手が回らないという。 できる時だけでいいというので、登録しに行った。 今だって、祖母の付き添いで簡易トイレの処理をしているのだから、同じようなものだ。 1.5次避難が明日の10時になったという連絡があった。 手荷物は

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第10話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第9話

          1月9日 朝、本部のSさんがランチルームに私を訪ねてきてくれて、2次避難は認知症でも大丈夫だと教えてくれた。 朝食の期限切れおにぎりを食べた後、 夫と二人で義父母の家に歩いて行った。 義父母に1.5次、2次避難のことを説明した。 停電も断水もいつ解消するかわからないし、 食べ物だってまともなものはないのだから しばらくの間、金沢に避難するほうがいいと勧めた。 義父には、家にいてもお風呂に入れませんから、入れるところに行きましょうと言った。 義父はお風呂に入りたいねぇと乗り

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第9話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第8話

          日本国憲法 25条1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する 1月8日 朝は寒くて、みんな動き出すのが遅かった。 横になったまま、ふと、今の生活は生活保護の人と比べてどうだろうと考えた。 さすがに生活保護の人だって、一人分のスペースはもう少しあるだろう。 着替えができないこともないだろう。 お風呂だって、一週間も入れないことはないはずだ。 今の日本でお風呂が一週間に一度では、間違いなくいじめにあう。 (私はそんな社会でいいとは思っているわけではな

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第8話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第7話

          1月7日 朝、放送があった。 「おはようございます、本部です。 えーと、みなさん、慣れない生活でいろいろとストレスがたまっている ことと思います。 ぶつかることもあるかもしれません。 でも、ここで一緒に暮らしていくのだから、家族のように思って、 みなさん仲良くしていきましょう。」 家族のように、という言葉が胸に響いた。 朝ご飯は8時に保存食の缶入りのパンとリンゴが配られた。 缶入りのパンは防災関係のイベントでもらって、一度食べたことがあった。 柔らかくて大きい。 今日

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第7話

          能登の方言(少し)と支援のお礼

          能登地方の方言は同じところもあれば、違うところもあるので ちょっとわからないのですが 私が住んでいるところでは、ご苦労様というのを、挨拶によく使います。 畑など作業している人にあったら、ご苦労様、と声をかけます。 全国的なマナーからいうと、正しくないと思うので 支援に来られた方には違和感があるかもしれません。 方言ですので、そう思って気にしないでください。 あと、輪島朝市のおばちゃんは「おおきに」、「おおきにえ」と いいます。 イントネーションは関西とは全然違うのですが

          能登の方言(少し)と支援のお礼

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第6話

          1月6日 朝5時に大きな揺れでみんな起きて騒ぐ。 それからしばらくして女の人が「〇〇ちゃんが死んだって...。」と隣の人に言って泣き始めた。 地震発生後は連絡がつかないことが多かったから、やっと安否がわかったのだろう。 一人暮らしと思われるおばあちゃんのところに娘さんが来て話していた。 K市にアパートが見つかったからそこに入ろう、こんな場所にいたら病気になってしまう、と。 私もそう思った。 水はろくに使えず、コップも再使用するような不衛生な状況の上に、 食べ物はいつもの量

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第6話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第5話

          1月5日 朝6時ごろから話す人がいたので、目が覚める。 ラジオから合唱の「にじ」が流れる。 息子も小学校の時に歌った。 今の状況から遠いところにあるように感じて、泣きそうになる。 朝8時にヤクルトとラップおにぎりがくる。 プールのトイレの流れが悪くなってきたとかで 工事現場でよく見るタイプの仮設トイレが設置された。 大便はこちらでするようにと連絡がくる。 しかし、そんなことを言われて、特に若い子が 仮設トイレに入れるだろうか。 仮設トイレに行く、イコール、大便、では抵抗が

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第5話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第4話

          1月4日 朝は6時くらいに起きた。 眠れていないが、緊張で起きてしまう。 7時くらいに保健師さんがきて、みんなの体調を聞いてまわった。 母が吐き気と腹痛がするといったら、後で薬をもらえた。 保健室には午前中、医師が滞在するとのことだった。 放送があって、8時に停電をすると言われた。 弟の家に泊まっていた父がランチルームに来た。 母が歯ブラシを持ってきたいと言うと 父はそんなことはどうでもいいと言う。 父が仮設住宅を建てる場所がないと聞いたと言うと 母はそんなことを悩んで

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第4話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第3話

          1月3日 私は夜にとっておいたおにぎりを朝に食べた。 ラップおにぎりが配られ、一人一つだったが、これはとっておいた。 祖母に薬を渡して飲んでもらう。 停電のため、各家庭で持っている石油ストーブと灯油を持ってきてほしいとの放送が入る。 我が家には石油ストーブはないし、実家はつぶれて持ち出せない。 ランチルームの隣と向かいは実家と同じ町内の人だった。 どちらも私の一つ上に子供がいる、Dさん夫婦とSさん夫婦だった。 長い間、あったことがなかったので、わからなかった。 Dさん夫

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第3話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第2話

          1月1日深夜~2日 体育館は寒かった。 入口の温度計では10度ほどしかなく、コートを着ていても眠れるような 暖かさではなかった。 歯がカチカチとなりだした。 ランチルームにはエアコンがあり、横にはなれないが椅子とテーブルで 座って過ごすことはできるというので、私だけ移動することにした。 この小学校は全校生徒がランチルームで給食を食べる。 私も給食を食べた懐かしい場所だ。 首が痛くなるから普段はやらないようにしているのだが テーブルに肘をついて、頭を支えて目をつぶる。 携帯

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第2話

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第1話

          1月1日 それは普通のお正月だった。 朝はゆっくりと起き、朝ご飯を食べた後、家族3人で初詣に行った。 おみくじを引いて見せ合った。 そのあと夫の実家に行って義母の用意した(買ったものと手作りしたものが入っている)おせちを食べた。 義父母とはいつも話をしながらおせちを食べるのだが 義父はテレビ番組ばかり気にして 誘っても私たちとはおせちを一緒に食べようとしなかった。 義父には最近、昼夜逆転や場所が分からないなどの認知症の症状が現れていた。 帰ってからはそれぞれのんびりと過ごし

          小説 (仮)被災者になるということ~能登半島地震より 第1話