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馴れ初め編➃

こちら↓の続き


夫の答えは
少し迷って・・

「そうしようか」

私の滞在先のホテルに向かいながら、適当なコンビニに入ってビールを選んだ。

日本円で数百円だったのだが、この時二人の持っている小銭ぴったりで支払えてコインが見事ゼロになった。
これはコインが細かく、謎の記念硬貨の多いアメリカではなかなか珍しいことだと思う。

そんなわけで私たちは缶ビールを持って私の部屋へ上がった。

部屋のドアを開ける。

「結構広いね」

などと言いながら部屋へ入り、夫は躊躇なくベッドに腰かけた。

この辺が夫はとても無邪気で異性を感じさせない。

私は一応ベッドではなく応接セットの椅子に座った。


二人でビールを飲む。

また他愛のない会話をしながらだがレストランでの時より少し緊張感があったように思う。

結論から言うとこの夜は私たちの間には何もなかった。

もし何かしてくるような人なら私は付き合わなかったと思う。

唯一夫が私に触れたのは本当に最後そろそろ帰らなければという時少し私の頭を撫でたくらいだ。

部屋での会話で覚えているのは恋愛について。

特に私の前の彼氏について少し話した事と、今は恋愛はお休み中と言ったことだ。

別に元カレにひどい事をされたとかそういう話ではなく、当時私自身人生に迷っている時期だったからしばらくは恋愛はいいかなって思っていた。

夫はあいかわらず東京出張がしばしばある事、来月後輩の結婚式で東京に行くからその時また会えると言っていた。

そう、私は関東に住んでいるし、夫は関西に住んでいる。
NYから帰国してもそうそう簡単には会えない。

この時点でお互い恋愛感情があったのは確かだった。

深夜2時ころ

「さすがにそろそろ帰らないと。仕事関係の人と同室だから朝までは気まずいし・・」

私は翌日が帰国だった。
朝5時に起きて空港に向かわなくては。

「このまま少し寝て起きられるかな」
と言うと

「モーニングコールしてあげるよ」

と夫は笑った。

そしてお互いに名残惜しく感じながら、
エレベーターに乗るところまで見送りに行った

エレベーターに乗り込んだ彼に

「さっきは恋愛お休み中って言ったけど、再開してもいいかなって思ってます」
と言った。

夫は笑って「来月東京で会おう、また連絡する」と答えた。

エレベーターの扉が閉まり、静かな深夜のホテルに一人残った。

つづく

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