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|映画チェック評|バブルの様に膨らみ破裂した東西冷戦と,ゴダール映画のメタファー………。

東西冷戦は、一九八〇年代末に破裂し終焉を迎えた。

今回はバブル、泡、風船のように膨らみ破裂した共産主義イデオロギーと資本主義の対立、様々な思想実験を繰り返した戦後のコールド・ウォー、冷戦。それらとフランスの革新的挑戦的な映画監督、ジャン・リュック・ゴダールをすずしく重ね合わせて批評を繰り返し、繰り返し、語っていきたいと想う……。

第二次世界大戦後の冷戦とは、ハッキリ言って裏で仕組まれた思想による分割統治であると。それ以前のヨーロッパの植民地支配に表れている分割統治の繰り返しでしかない。

創り上げられた共産主義イデオロギーに洗脳された東側、ロシアや、東欧、中国、北朝鮮
等と、資本主義の西側、日本、西欧等を対立させ、出てくる世界的規模の経済的利益を得る、世界を裏で操る秘密クラブ、フリー・メーソンによる世界支配のでっち上げだった。

そこで、泡風船のようにふくらむ、ゴダールの登場である。

ここでは、ゴダールの二重写し、冷戦での欧米各国が、やった膨張、ふくらんでいく風船のようなイデオロギー実験の上に乗っかった、ゴダール映画の様々な不可思議なシーン、冷戦下の水面下でうごめく、何か裏に有るものをそれとなく観るものに伝えるかのような登場人物たちが見せるメッセージをピックアップしてみたい。

先ずは|映画|  気狂いピエロ。からチェックしてみよう。ピエロがアダ名の主人公がフランスの首都圏から車で退屈な結婚生活から逃走し、女に裏切られ顔を黒く塗りつぶしダイナマイトを巻き付けて爆死する。地中海の美しい海を背景に……………。

映画の途中でミッキーマウスのピンク色のポスターを写し……意味不明な独り言、モノローグが流れ……。それは、何か隠されたものの例え、であり、映画のクライマックス!!主人公が美しい地中海を前にして頭にダイナマイトを巻いて爆死する最後に、フランスのランボーの詩、|永遠| が朗読される。

……何を見た?………永遠を………。それは海に溶ける、太陽………。

この映画の隠された本質は、特に何があるというものでもなく?気狂いピエロという映画を使って冷戦下の思想実験と我々の無意識や行動全てが重なっている。二重写しだと……。その始まりだということを告げている。

曰く古代から中世まで続く欧州の王侯貴族の
階級社会が、冷戦下では全世界へと拡がっていると、その下で我々は生きて行かねばならぬと、中立的にゴダールは告げているのだ。

ついで、|映画|中国女、ではベトナム戦争真っ最中にFRANCE・パリの思想的闘争を繰り返す学生運動家の大学生たちはアオザイを着て頭から血を流すベトナム女性を演じたり、プラモデルのオモチャの米軍爆撃機を空爆よろしく宙に旋回させたり………。ベトナム戦争で悲惨な目にあっているベトナム人民達の上に乗っかって戦争ごっこ遊びをやる、学生運動家。これもまた冷戦中の親のスネカジリの学生に演じさせている。

これもまた、冷戦イデオロギーごっこ遊びの
ベトナムの苦しむ人達の上に乗っかる欧州の
貴族のような…………。

ゴダールの意図的なメタファーの軽いお遊びは、なおも軽く膨らみ続ける冷戦の上に乗り
天を目指し高みを目指して……………。

映像が息を呑むほどに美しい映像美の|映画| ゴダールのリア王、では発音が美しい英国のキンクス・イングリッシュ発音の、シェイクスピア演劇のリア王の朗読………。海空を飛ぶ白いカモメの群れ、それを見ている白人の透き通るような青い瞳…………………。

それは、思想の泡のように拡大していく流れに対して……………。

ゴダールよりの退屈な美意識。

他のゴダール映画にも、特に80年代に、顕著に表れる何度も何度も車の窓を叩きに来る男。また、とある映画では映画のオープニングから、いきなり停車した車の窓から謎の言葉をつぶやき、立ち去る男の不思議。また、あるいは家の窓を走って来て窓ガラスを叩く、それも繰り返して……。それは、おそらく冷戦下のたくらみ、陰謀に気づけ!という警告、目覚ましとしてなのであろう………………。

特に意味もなく数多くのFRANCE人の大人や子供によるカンフーごっこ遊び。アジア人に
対する欧州の警戒の表れ……黄禍論というやつで……。

|映画|ゴダールのマリア では、キリスト教の聖母マリアの処女懐胎さながら、処女のまま妊娠してしまう少女マリーを通してキリスト教に対する皮肉を二重写しにフィルムに重ね、デザイン的にメタファーとしてまとめようとする…………。

とある批評家が評するがごとく、西洋の近代という実験が膨張していき、宇宙へと巨大なバルーンが飛翔を遂げ…………やがて、東西冷戦の終わりと共に大爆発をとげる!!ゴダール映画はそれを実に静かに淡々と静謐にフィルムにFilmに写し撮り、宇宙へと巨大な風船として舞い上げたのだ………。

ゴダールは言った………答えはコダック社のフィルム・Filmに聞いてくれ! と、……………。

カッコつけているわけでも、キザったらしく
言ったわけでもなく、そのままという事で……
…………。

ただ、ゴダール自身、東西冷戦自体が全ては
でっち上げ、造られたものだという事を、半分知って、半分知らなかった様に見えて来る、か、知りたくもなかったか……かもしれない……………。

だからこそ、自身の限界だったというのもあって、スイスで安楽死を選んだように想えてならない。病気、というのもあったけど………
…………。

ただ、ゴダール映画のデザイン性、独特のドキュメント・タッチの映像感覚は、やはり、
フランス的なオシャレがあり、美しいデスネ
……………。


          じゃあネ、Fine! 

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