見出し画像

文化祭#シロクマ文芸部

文化祭の終わりには後夜祭があり、夕暮れの校庭に大掛かりな舞台装置がセッテイングされ、司会者の進行とともに文化祭の閉会式が進んでいく。
後夜祭の大トリは、演劇部の先輩でアイドルさながらのパフォーマンスに、黄色い声援が飛ぶ。

余韻に浸りいつまでも終わらない会話、ゆっくりと流れる時間、明日を迎えたくないほどの興奮と花のある人と人。

ジャージに着替えて片付け始める裏方達、ステージをバラしていく作業、
セットの擦れる音、地下倉庫の湿った匂い。
「無事に終わってよかったね」とやっと声を掛け合う黒子と黒子。

花のある人には花であり続ける努力があり、それを間近に見させてもらった。演劇部の公演に出演する先輩は、台本を読み込み覚えて来るのは勿論のこと、与えられた役によって、役の個性も台本から読み取り自分で着る衣装までも考えて決めてくる。

「リュード・リッヒは、左右違う色の靴下を履いているに違いない」なんて
台本にも原書にもどこにも書いてない。癖は腕を組んで右手で顎を摩ること。劇中ではリーダーシップを取ってみんなを引っ張っているけれど、育ちは3人兄弟の末っ子で本当は甘えん坊でポケットにキャンディーをいつも忍ばせて好きな子にはこっそりお裾分けして株を上げていることも。実は健康に気を遣い、コーヒーは1日2杯までと決めている習慣も。それ故にリュード・リッヒがイライラする場面では「すまないカフェインが切れたコーヒー飲んでくる」とアドリブをいきなり入れて共演者を驚かせつつも客席からは笑いを取る。月夜の場面では、片腕がほつれている薄茶色のテディーベアーと一緒に踊り出す道化も演じる。先輩はリュード・リッヒの甘えん坊を表現するために縫いぐるみを自ら用意して来た。淋しくなると窓枠に腰をかけ身を乗り出し月夜を眺める、そしてリュード・リッヒはテディーベアーに秘密の打ち明け話をしているらしい…しかしそんな場面はどこにも出てこない。そこまで考えて創り込むから、役にも人柄が滲み出るし、アドリブも自然で嫌味がない。

先輩のコツコツと積み重ねる努力と泥臭い作業を目の当たりに見せてもらった、だからこそ先輩は輝いているし、黒子も大道具・小道具・音響・照明を使って輝かせたいと思っている。



黒子で裏方だったわたしはこの歳になって書く世界に憧れた。

作品を書き始め、そして書き続け、書き終わらせる。
自分を見つめ、人を知り、社会を観察していく。
コツコツと積み重ねる作業は時に地味で泥臭い。
書けない時も、書きたいアイデアを見つけた時の喜びも、そこから物語を広げる楽しさと同時に、拳を握りしめて滴を垂らす様な感覚も。


書き始めた世界がnoteでよかった、わたしは心からそう想っている。
温かい街からはじまる世界、色とりどりの文章、個性豊かな表現。
喜び合う声、築き合う絆、支え合う心と心、これこそが文芸。

これこそがまさにnoteの文化祭







最後までお読みいただきありがとうとございました。
こちらの作品は、
小牧幸助 様 のサイト
シロクマ文芸部の今週のお題に参加させていただきました。
素敵な企画、素敵な出会いをありがとうございます。


最後まで読んでくださりありがとうございます。 もしよろしければ、サポートして頂けると嬉しいです。 記事を書くための書籍購入に使わせていただきます。