出張や観光で海外にいるとき、意識が開放的になったり、考えが前向きになったりしている...と、ふと気づくことがある。なんかいつもと違うな、と。気分が良いというのもあるが、日本にいるときより作業能率が良かったり、集中力が格段に向上...と色々捗るのである。

一体なぜなのか？

以下のような点がヒントになる気がした。
一つずつ検討していってみることにする。

・状況の違い
・気候条件の違い
・言語の違い

状況が違うということ

つまり、非日常的な体験をして刺激を受けているから、脳が活性化されているという話。これはありそうである。普段と違うコンテクストに置かれることで、意識がいつもと異なったモードになる。
たとえば日本において、オフィスで作業するのとカフェで作業するのでは、だいぶ違う。オフィスだと息苦しいけど、カフェだとリラックスして作業がはかどった、なんて経験がある。
「私は今海外にいる」というその体験自体が大きく刺激を与えているという説は、たしかにありそうだ。
スリに遭うかもしれないとか、テロに遭うかもしれないとか、そういう身の危険を無意識に感じることもある。それは場合によってはストレスなのだが、こういうのも良い緊張感になっているのかもしれない。
これは日本では味わえないものだ。私が住んでいるエリアはとても平和な空気が流れているから、身の危険を感じることは皆無と言っていい。それは居心地が良く本来良いことであるのだが、どこかぼーっとして春眠暁を覚えずのような状態になってしまう。

刺激と緊張、これはありそうだ。

もしその国にずっと住むことになればまた話も変わってくるだろう。私は滞在したことはあるが、移住したことはない。どこか旅行気分、「どうせ帰るしな」...という心の余白のようなものがある。

気候条件の違い

私が好んで赴くのは湿度が比較的低く、暑さや寒さの厳しくない場所である。私は東京都に住んでいるが、東京の夏と冬は厳しすぎる。梅雨のジメジメしたのも本当に苦手で、頭が痛くなったり色々弊害が出る。
毎年梅雨〜夏と真冬は本当にしんどくて、運良くこの厳しい時期を他の国や都道府県で過ごせるとだいぶ楽である。
カラッとした適度な気温の地域で過ごせることが体調を整えており、生理的に元気になっているという説もありそうである。

しかしこれは、補助的な要素だと思う。海外と日本の気候に差分がそこまで無い状況を考えてみる。たとえば日本における春と秋は過ごしやすい。
そのときに、海外にいたときと同じくらいパフォーマンスが上がっているか...?
ウーン、ちょっと怪しい。どうも注意散漫になってしまうことが多くて仕方ない。

言語の違い

本命は多分これ。大体英語がある程度通じるところに行くことが多いのだが、たとえば英語だと、かなり耳を傾けないと何を言っているかわからない。普通に過ごしていると、「気になる」ことが少ない。
そのことが影響しているのか、ほとんど周りの人の目を気にしない。勿論、スリを警戒したり、普段と違う意味合いで周囲を気にすることはあるが、警戒というのは能動的なはたらきなので、「気にする」であって「気になる」とは違う。

日本にいると、どうしても周囲の視線だったり、聞こえてきてしまう話に注意が行ってしまう。なんだかそわそわするというか。
例えばこういう記事を外で書いているときに、この画面を見ている人がいたとする。
日本だと、ほぼ100％の人が日本語を読むことができるから、私の書いている内容は理解されてしまう。ちょっと、恥ずかしいなと思ってしまうのだ。公開するまでは、親しい人にしか見てほしくないというナイーブさが、私にはある。
海外であれば、日本語が読める人は殆どいないだろうから、気にならない。見られてもいいや、という気になる。

母国語というのは記憶や感情と密接に結びついているから、日本語にさらされていると嫌でもそういうものが刺激されてしまう。
意図するにしろしないにしろ、周囲の音や目線を過剰に拾ってしまう傾向がある。周りを気にする必要が無い環境だと、自分のやるべきことに向き合うだけでよい。いい意味で孤独になれる。

だから必然、集中力を要することが捗るのだ。もくもくと本を読んだり、考え事をしたり、作業したり、ということに没頭できる。

おわりに

気候条件の違いは補助的な条件としてあり、刺激や緊張の中に置かれているのは前提としてあるだろうが、おそらく言語的な理由が最も大きいと考えた。

というわけで、すごく集中して取り組まなければならないことがあるときは、気候に恵まれており、日本語が聞こえてこない環境へ赴くといいことがある、という結論。

勿論、仕事をする上では政治情勢がそこそこ安定しており、ある程度インターネットが普及していることは欠かせないけれど...。