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The Incubation Platform for Food Business

ひょんなきっかけで4月から左京区の出町柳駅近くで「トワイエ」というカレーバー、正確にはポークビンダルーとクラフトビールが中心のバーをはじめている。4月から。

とはいえ本業(って最近なんだかわからなくなってきたけど)をピボットしてガッツリやってる、というわけではなく週1回、火曜日の夜(18時〜23時)のみという限定営業。なぜならシェアキッチンだから。

お店のことはまたどこかで書くかもしれないけど、今日は約2ヶ月半=10回ほど、シェアキッチンという形態で飲食をやってみて感じたこと、そして思いついたことを備忘録的に書き記してみたい。

シェアキッチンについて

いま利用しているのは「リバーサイドカフェ」というシェアキッチンで、とある不動産管理会社が管理する旧い集合住宅の1階の一部屋をリノベして作られている。皆さんが想像しているよりかなりシャレオツで広い空間に業務用の調理設備とカウンター、ソファ席などが設えてあって居心地のよい空間がある。

このリバーサイドには1日3枠(7時〜、12時〜、18時〜)の7曜日、都合21種類のお店がある。居酒屋やカフェ、ヴィーガン料理教室などその種類は様々で、各店長は管理会社から店長業務の委託を受けて自身の担当する枠でお店を企画運営している。店長は管理会社に対して施設利用料として予め決められた金額を支払うほかは1000円の光熱費を負担のみでお店を運営できる(自費で保険に入ることが条件ではあるが)。つまりピンハネがない。それゆえ、かなりお得な費用負担のみで飲食業(体験)を始めることができる。

シェアキッチンならではの制限(ビールなど在庫できる量が限られる、食材が余ると面倒など)はあるが、自身で店舗を契約して改装して什器、食器を揃えて開店する手間とコスト負担を考えれば格段に時間もリスクも減らすことができる点で、彼らのサービスコンセプト「挑戦する人を増やす」を体現していると言える。

シェアオフィスとの比較

そんなしくみの中でバーの店主をやりながら考えたのは、いわゆる「シェアオフィス」との共通点/相違点について。とりわけネット系ベンチャーを対象としたそれとの比較。

ご存知の通り、昨今のシェアリングエコノミー隆盛にともない東京はもちろん全国、世界各地でシェアオフィスは増え続けている。

シェアオフィスと一口に言っても、リモートワークを目的としたコワーキングスペース(こちらは働き方改革の文脈から再びブームになってる感がある)なんかも含まれることを考えるとその規模や性格は千差万別だと思うが、今回比較対象に浮かんだのは、自分自身にとっても比較的馴染みのある、主に起業前/直後の起業家をターゲットにしたそれ。ややこしいので本稿では「インキュベーションオフィス」と呼ぶことにしたい。

インキュベーションオフィスは、文字通りインキュベート=卵を孵化させることを目的とした「場」と「しくみ」を備えていて、独立系のほか自治体やVC/CVCが運営していることも多い。海外だとシリコンバレーのPnPやSFのRunway、国内だと神戸市のTRIGGER KOBEやCAVが運営する「Startup Base Camp」サムライインキュベートの「SSI」とか。

それぞれに特徴や強みはあるが、たいていは入居したベンチャーに対し様々なタイミング、手段で経営を支援するしくみを持っている。ある時は開発の支援をしたり、ある時は資本政策についてアドバイスしたり、ある時は事業を伸ばす人材や投資家を紹介したり。

いずれにせよとにかく多忙な起業家が本業に集中できるように側面から有形無形に支援する、という機能を持って入居しているベンチャーの事業化および成功確率を上げることを狙っている。その短期的なゴールは、投資(有望なベンチャーを見極めた上で、エンジェル/シードラウンドでの投資を行うことが多い)によるキャピタルゲインであるだろうし、ベンチャーとしても身銭を切ってくれた投資家からの支援は信頼度が高く心強い。その点で両者の思惑は一致していると言えるだろう。

シェアキッチンの先にあるもの

で。今回のシェアキッチンだが、どちらかというと広義のシェアオフィスであってインキュベーションのコンセプトは全くない(管理会社がそれをあえてしていないのかもしれないけれど)。

だからふと思ったのだ。「飲食カテゴリで起業しようとする人を支援するインキュベーションオフィス(キッチン)はありなのか?」と。

なにしろ飲食業は成功率が低いと専らの評判である。参入障壁が低く廃業率が高い(あるデータによると、飲食店・宿泊業の廃業率があらゆる業界に比較して最も高い18.9%)。参入障壁は低いが、とはいえ「テナントの保証金」「設備資金」など、初期費用は結構かかる。集客が安定しない間の運転資金(「人件費」や「材料原価」など)の確保、もし閉店する場合の「原状回復費用」も考えると、ひとくちにお店を出すと言ってもそこそこ予算が必要(工夫次第で減らすことはできるが限界はある)。つまり、失敗しやすい割に再チャレンジしにくいのだ。リクスしかないやん。ほぼ全ての経験者が参入を相談する友人知人に対して「絶対おすすめしない」と回答するのもわかる(実際、私も以前近所の空き物件でビアバー始めかけてワイフにすごい勢いで止められた。ワイフに感謝)。

それでも皆、挑戦するわけだ。夢があるからね。

よくあるのは既にあるお店で「修行」とか「見習い」すること。働きながら下ごしらえを含む調理や接客、経営なんかも学びつつ資金を貯めて。でも、それでも成功率は低いまま。だから成功率上げるにはもっと違うアプローチが必要なんじゃないか。

前置きが長くなった。

ハイリスクな条件を持つ飲食ビジネスで成功率をあげるためにどんなアプローチがありうるか。その問いに対して、事業モデルや顧客体験、運用プロセスに関して仮説検証したり試行錯誤する、いわゆるプロトタイピングをすることができる「インキュベーション・キッチン」というしくみは、ひとつの回答になると思う。

じゃ、それは具体的にどんな特徴があってなにがいいの?というところについては後ほど。

こんだけのことテキストにするだけでこんなに冗長になっちまうのが悪い癖だなあ。もっとシンプルにまとめたい。


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